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なぜ若い女性は投票しないのか?

投票日に集計を行う2人の女性、2004年5月チューリヒにて Keystone

スイス人女性の国政参政権が確立してから40年。しかし選挙権を充分に生かしている若い女性は少数派だという。

スイス人女性が参政権を得た1971年当時は、18歳から29歳までの女性の投票率が38%だったのに対し、今日は全体の3分の1以下の26%に落ち込んでいることが調査で報告された。その理由を探るべく、若い世代の女性に意見を聞いた。

若い女性の投票離れ

 スイスドイツ語圏の日曜新聞「ゾンターグスツァイトゥング ( SonntagsZeitung ) 」が依頼した調査の中で、政治学者ゲオルグ・ルーツ氏は若い女性の投票率低下はスイス総人口の減少と傾向が類似していると指摘している。しかし、若い女性の投票率低下現象はより顕著だという。

 ジューネーブ在住のフィトーレ・デュラク ( 19歳 ) さんは無投票者の部類にあてはまる。

 「投票はしたことがない。なぜ?そんな時間はないし、興味もないから。気に障るのは政治というより、政治家たち」

 政治にうんざりしているフリブール在住のサマンサ ( 21歳 ) さんも同意見。

 「投票する意味があるのかしら?いずれにせよ何も変わらないと思う。投票したとしても、結局政治家はいつも自分たちで好きなように法案を通してしまうから」

投票しないのは興味がないから

 しかし、インタビューに答えるのをためらった人たちは投票に積極的でも消極的でもない。こういった人たちは、政治問題に直接関わることで国民投票に行くきっかけを持つようになる。

 「投票は定期的に行くわけではない。わたしたち国民がどんなことを決議するのかしっかりと理解したときだけ投票しに行くことにしている。そうでなければ投票はしない。投票前は何についてのイニシアチブなのか、わたしにとって今後何が変わるのか正確に理解しておきたい。それでも国民投票の議題は時にとても難解」

 とジュネーブ在住のロクサン・サマニエゴ ( 19歳 ) さんは国民投票に対する明確な姿勢を持つ。

 ほかの人たちは、若い世代の女性は、増え続ける辛辣な政治討論に興味を失っているというルーツ氏が打ち出す理論に賛成する。

 「昨今のスイス政治はとても難解であまり多くの人が興味を抱かなくなっている。特に女性にとっては興味のない議題ばかり。またほかの人たちも、彼ら自身では何も変えられないと思っているので、政治に興味が沸かないのだと思う」

 とIT業界に勤めるベルン在住のニコル ( 20歳 ) さん。

 「最近の政治は外国人に敵対的。政治家は発議内容に対して議論を戦わせているのではなく、政治家同士がただ口論し合っているだけ。女性が投票を敬遠する理由はそこにあると思う」

 また、必ずしも興味を抱いていない議題について、国、州、地方自治体レベルでスイス国民が毎回投票しなければならないということが投票率の低下に繋がっているという意見も上がった。

女性はいつ政治に目覚めるか

 スイスインフォ読者からも投票離れに対する意見が寄せられた。

 「投票率低下は実のところ、いかに女性の権利が進歩していないかを現している。また、女性が間接的に制圧を受け、充分に権利ある市民として扱われていない証だ。それは結局、女性の大志を抑圧することになりかねない」

 とE.Fさんは批判する。

 ドクター・モー氏の意見は全く異なる。

 「若い女性たちがあまり投票しに行かないのは政治に関心がないからではなく、男女平等の権利が得られたと感じているからだ」

 とインターネット上でコメントしている。

 しかしこの意見には反論もある。

 「それはあまりにも単純な理論だ。多くの女性が今日もキャリアを積む上で目に見えない限界を感じ、職場で差別待遇され、仕事と家庭の両立において困難に直面している。それが現実問題なら、遅かれ早かれ多くの女性は政治に目覚めることになるだろう」

参政権の重要性

 ジュネーブ大学の学生、ヘセティ・ガニメーテ ( 27歳 ) さんは、今回の統計調査にショックを受けたという。

 「若い女性の投票率がこんなに落ち込んだとはひどいこと。若い世代の女性は物事を理解するのが遅いのか、情報が溢れすぎているのが問題なのか。なぜこのような結果になったのか理解できない。わたしは10年前にスイス国籍を取得して以来、定期的に国民投票に行っている。これは素晴らしい権利なので常に生かすべき」

 ジュネーブ在住のヴァネッサ ( 23 歳 ) さんも参政権の重要性を語る。

 「わたしはほとんど毎回投票に行っている。政治に参加するのは重要なこと。民主主義の国に住んでいるのだから、投票して結果に影響を与えることは大切。たとえいつも思った通りの結果にならなかったとしても」

女性票の影響

 2月13日、スイスでは銃器入手規制、および家庭における軍用銃器保管や国レベルでの登録・管理についての是非を問う国民投票が行われた。

 「わたしは銃器保管規制が改正されるように投票した。自分の意見が聞き届けられてほしかったから。大抵の国では家庭で銃を保管する権利はないので、この問題に興味を持つことは大切だと思う」

 とベルン在住のベロニカ ( 19 歳 ) さんは積極的だ。

 銃器規制に関する国民投票では女性の投票によって結果が左右されると予想されていた。直前の調査では銃器保有反対派が47%で優勢。8%が「まだ分からない」と回答し、全回答者が明確な意見を持っていたわけではなかった。

 「わたしは時々投票に行く。投票するかどうかは内容による。家庭における銃器保管は私に直接影響する問題ではないと思う」

 とローザンヌ在住のアズマ ( 18 歳 ) さん。

 2008年には小児性愛者に対して厳しい罰則を求める国民投票において、女性の大多数票が決定的な結果をもたらした前例がある。時に、女性が投じる票は結果の明暗を分ける重要な要素となる。

スイスや多くの国において、女性参政権が確立された当初は、地方参政権のみで国政参政権でない場合が多かった。

サウジアラビアでは現在もまだ女性参政権がない。

以下は男女平等の国政参政権が確立された年 ( 当時の国名 ) 。

1838年- ピトケアン諸島
1881年- マン島
1893年- ニュージーランド、 クック諸島
1906 年-フィンランド
1913年- ノルウェー

1915年- デンマーク 、アイスランド
1918年- オーストリア、カナダ、ドイツ、ポーランド、ロシア
1919年- オランダ
1920年- アルバニア、チェコスロバキア、アメリカ
1921年- スウェーデン
1928年- イギリス
1930年- トルコ

1931年- スペイン
1932年- ブラジル
1945年- フランス、日本
1947年- アルゼンチン
1948年- ベルギー、イラク、イスラエル
1949年- シリア
1950年- インド
1956年- エジプト、パキスタン
1963年- イラン、モロッコ
1971年- スイス
1984年- リヒテンシュタイン

( 英語からの翻訳・編集、白崎泰子 )

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