欧州連合(EU)は、スイスの重要な貿易相手の一つ。ディディエ・ブルカルテール外相によると、2019年ごろを目途に予定されている英国のEU離脱に対し、スイスの態勢は十分整っているという。
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ブルカルテール外相は国内メディアのインタビューの中で、昨年6月にスイス政府が対英関係の調整計画を承認したことに言及。調整の過度の遅滞は避けたい意向で、この英EU離脱によりオプションの幅が広がったと話す。
ドイツ語圏の日刊新聞ターゲス・アンツァイガーとブントの共同インタビューでは、「さまざまな分野で関係を深めたい。すべてがEU経由でなくなっても、それはそれで(スイスにとって)好機ともなる」と発言。「英国とは良好な、あるいはより密接な関係を築きたい。だが、英国と組んでEUに対抗することはない」
外相は不確かな要素がまだいくつかあることを認めた上で、スイス政府はまもなく、英国とどのように交渉を始めるかについて討議を開始すると告知した。
また、ドイツ語圏大手新聞NZZの1月18日付の紙上では、「できるだけ早く法的安全を得ることが目標だ」と述べている。
これらのコメントは、英国がEU単一市場を脱退するという18日のテリーザ・メイ英首相の表明を受けたもの。英国は昨年6月、国民投票でEU離脱を決定した。
ブルカルテール外相はまた、現在ダボスで開催されている世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に出席した際、スイス公共放送(SRF)のインタビューを受け、次のように話した。「少なくとも英国政府の意図は分かった。これは英国とスイスの関係において重要なことだ」
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スイスと欧州連合(EU)の特別な駆け引き
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スイスはEUに加盟せず、120を超える貿易協定をEUと結んでいる。しかし、14年にEU加盟国の国民を対象とした移民規制の再導入が国民投票で決定したことで、対EU関係は目下、行き詰まっている。
さらに、右派や保守派の反EU派も、EUが重んじている原則「人の移動の自由」に関する協定を無効にしようと案を練っているところだ。
(英語からの翻訳・小山千早)
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スイスのブルカルテール外相、辞任を表明
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スイスのディディエ・ブルカルテール外相が14日、10月31日をもって連邦内閣閣僚を辞任すると発表した。欧州連合(EU)との交渉が行き詰まっていたことが原因ではないかとメディアで騒がれていたが、今回の辞任は関係ないとした。
ブルカルテール氏が政治界に入って約30年。その最後の8年間は閣僚を務めた。「新たな章の幕開けの時が来た」。「辞任後の人生についてはまだわからないが、公の場に出ることはほとんどなくなると思う」と記者会見で話した。
ここ数年間、政治が私生活に占める割合は大きくなっていたという。「(政治は)魅力的だ。だがそれもあと少しで終わり」と話すブルカルテール氏に後悔はない。辞任の決意をしたのは11日。その理由について同氏は、「新しいことを始めたい」と説明する。
ここ最近、EUとの制度的枠組み協定の交渉が行き詰まっており、ブルカルテール氏に強い重圧がかかっていた。しかし、この件と今回の辞任は関係ないと同氏は話す。関連付けるとすれば、16日に予定している閣僚会議前に辞任を発表したことだと言う。閣僚会議ではヨーロッパ政策について話し合われる予定で、そこでの議論と辞任を関連付けたくなかったと説明する。一方、今回の辞任により、この先のヨーロッパ政策に関する内閣の議論に弾みがつくだろうと同氏は加えた。
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英国のEU離脱が国民投票で可決されたことを受け、スイスとEUとの交渉に支障が出る可能性も示唆されていたが、シュナイダー・アマン氏は「EUと早期の解決を目指す」としている。 スイスでは2014年の国民投票で、移民の受け…
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組織からの離脱は何かと物議を醸すものだ。今、欧州連合(EU)離脱の是非を問う英国の国民投票が、現代の民主制度に求められる重要な側面を浮き彫りにしている。一つは法律面、もう一つは政治的枠組みだ。ドーバー海峡からクリミア、そしてスイスのジュラ地域に至るまでの事例を整理してみた。
英国民がEU離脱か残留かを決断することは、少なくともある点で史上初の出来事となるかもしれない。もし離脱となれば、2009年に修正が加わったEU基本条約の発効以来、加盟国の離脱に関する条項が初めて適用されるケースとなる。このリスボン条約の第50条には、「加盟国は憲法上の要請に従いEUを脱退することが可能である」とある。
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昨日の国民投票の結果24日朝、英国の欧州連合(EU)からの離脱が決定した。この歴史的な決定を受け、スイスでもフラン高が進み、スイス国立銀行の市場介入や関係者・企業向けに政府がヘルプラインを設置するなど、即座の対応も取られた。長期的には、これまでスイスがEUとの間で進めてきた「人の移動の自由」に関する二国間協定をめぐる交渉が、当面はEUの優先事項でなくなるという影響も出てくる。
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