危機が起こるたび、そのスイス製の暗号機は「信頼できる」と誤認され多くの国が購入した――スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは、1997~2019年にスイス経済省が発行した輸出許可証を詳細に調べ、こんな結論を導き出した。
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この期間、スイス連邦経済省経済管轄局(SECO)は計4万件の一般・軍需品に輸出許可を出した。NZZ外部リンクによると、うち2600件は「通信の秘密の保護を可能にする製品」だった。輸出先は148カ国、輸出額は5千億フラン(約56兆円)。ただ許可を得た商品が全て輸出されたとは限らない。
これらの輸出品の大半は暗号機だった、とSECOはNZZの取材に答えた。NZZが業界関係者に取材したところ、輸出企業として3社のスイス企業の名が浮かび上がった。そのうちの1社はツークに本社を置くクリプト株式会社。2月中旬、米独のスパイ活動に関与したとして世の中の注目を浴びた企業だ。
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スイスの暗号化企業、CIAのスパイ活動に関与
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クリプト社の技術を買い求めた国々の名をみると、「新しい危機が起こるたびに、盗聴される恐れはないと誤認されていた暗号機の注文が殺到した」(NZZ)ことが分かる。だが実際は、暗号機には不正が仕込まれ、米情報機関はふんぞり返って盗聴することができた。
NZZは調査の対象期間を4つに分けて分析した。
1997~2000年:1999年春のベネズエラのチャベス政権誕生から6カ月後、SECOはクリプト社暗号機1890万フラン相当の輸出を許可した。米国は反チャベス運動の挫折に一役買った。
2001~08年:米国(1440万フラン)とリビア(約1千万フラン)がクリプト社の大口顧客となった。2001年9月11日に米同時多発テロが発生。米国は事件発生の前に暗号機入手に関心を示していたが、リビアからの注文は事件の発生後に急増した。
2009~13年:民主化運動「アラブの春」が勃発。この期間は北アフリカやアラビア半島からの注文が多かった。2011年のバーレーン騒乱が起きた後、SECOはペルシア湾岸諸国向けの暗号機計1950万フランの輸出を許可した。13年には暴動の起きなかったモロッコ(1340万フラン)やヨルダン(1660万フラン)への輸出許可が下された。
2014~19年:直近5年間はシリア戦争やテロ組織「イスラム国」に関連する国に対して最も多くの輸出許可が出された。特に多かったのはサウジアラビア向けの輸出だ。NZZは、スイスの暗号技術の輸出が18年以降に急減したことも突き止めた。
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(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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