スイスで大規模な反原発デモ
スイスでこの25年間で最大規模の反原発デモが5月22日、アールガウ州のベツナウ原発 ( Beznau ) 周辺で行われた。およそ2万人の市民が参加し、穏やかに原発停止を訴えた。
環境保護を訴える政治団体など約150組が反原発デモを支持。デモを主催したレオ・シェーラー氏は、今回のデモを高く評価し、「こんなにたくさんの人が集まるとは予想していなかった」と話した。
また、2万人という数は、反原発に賛同する人のほんの一握りに過ぎないとし、国民の多くが反原発を支持していることが今回のデモで明らかになったと語った。
若者から高齢者までデモに参加
デモ参加者には大勢の若者や家族連れが見られた。なかには、朝の特別列車やバスに乗ってスイス国内外からやってきた年配の反原発支持者の姿もあった。
参加者の多くは、「未来は再生可能エネルギー」や「原発はいらない」などと書かれた横断幕を掲げてデモ行進をした。政党の社会民主党 ( SP/PS ) や緑の党 ( GPS/Les Verts ) は横断幕を配布したり、原発停止を国民投票にかけるのに必要な署名集めに励んだ。
デモ参加者はスイス政府に宛てた書簡のなかで、原子力エネルギーからの脱却を要求。今後の原発建設の禁止や再生可能エネルギーの促進、またスイスで最も古いミューレベルク原発 ( Mühleberg ) とベツナウ原発を電力供給網から外すことなどを訴えた。
政治家や文化人が演説
社会民主党副党首のセデリック・ヴェルムート氏は、福島原発事故は今後数十年間「ほかに比べようのない人類の悲劇」であり続けるだろうと述べ、「 ( フクシマは ) 人類史上最大の惨禍の一つであり、 ( 今後そのようなことが起こらないように ) 政治的決断が下されるべきだ」と訴えた。
緑の党のゲリ・ミュラー国民議会議員はベツナウ原発を「古くてボロボロな発電所」と批判。演説者のなかには、反原発支持者として有名なエンターテイナーのフランツ・ホーラー氏の姿もあった。スイス通信 ( SDA ) によると、ホーラー氏は今回の大規模デモに感動。「反原発の波がすぐに弱まらないことを期待する」と述べた。
デモ主催者を警察が称賛
アールガウ州警察長官のシュテファン・ラインハルト氏は、今回のデモを肯定的に評価。デモ行進は実に穏やかに行われたとし、デモ主催者を称讃した。デモには多くの警察官が配置された。
スイス連邦鉄道 ( SBB/CFF ) の発表によれば、1万3000人余りのデモ参加者が電車を利用。警察はヘリコプターを投入してデモ行進を監視した。
連邦内閣の決断は25日に
スイス政府は今週の水曜日25日に、スイスの今後のエネルギー供給について協議し、三つの選択肢から一つを選び、連邦議会にかける。こうした決定に今回のデモは影響を与えると言われている。
選択肢の一つ目は、現在稼働中の原発を計画を繰り上げて停止し、新しい原発に建て替えるというもの。二つ目は、廃炉が計画されている期日まで原発の稼働を続け、その後は新しい原発は建てないという案。三つ目は、計画を繰り上げて原発を停止し、原子力エネルギーから完全脱却を図るという案だ。
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