スイス国民議会(下院)の安全保障委員会が、国内東部の倉庫に使用されずに保管されているドイツ製戦車96両のうち25両を退役処分とし、ドイツのメーカーに再売却するよう勧告した。
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28日夕に投票が行われ、賛成17、反対7、棄権1で可決された。同委員会のマーヤ・リニカー氏は、スイスはこれにより、ウクライナに初めて間接的な軍事支援を行うことになると述べた。ただ上院・下院の同意が必要になる。
リニカー氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に対し、これらの戦車はスイスにとって不要な装備だと述べ、「我が国もこうした形で貢献することが可能だ」と語った。
委員会は声明で「ロシアのウクライナ侵攻で、欧州の安全保障状況がさらに悪化した」ことを認識しているとした。
パンツァー87レオパルト25両は輸出の前提条件となる退役処分にする。一方、委員会は戦車をメーカーに再販する場合にのみ可能とするという条件を設け、これについても賛成10、反対9、棄権6で承認された。
ドイツ政府はこれにより、ウクライナ支援で生じた自国の軍隊の設備不足分を補填できる。
委員会の過半数は、これらの戦車の退役とその後の売却が、スイスにおける部隊の装備、訓練、予備部品の備蓄に関して不利益をもたらすものではないと強調した。
反対したのは右派・国民党だ。同党のダビッド・ズベルビュラー氏は「スイスには最新の防衛戦略がない」とし「軍隊が今後どのようなものになるか分からない。戦車を海外に売り払うべきではない」と訴えた。
スイスは中立法と個別の武器禁輸措置により、ウクライナに直接武器を送ることを禁じていいる。スイスにはこれまで、以前購入したスイス製の軍需品や軍備をウクライナに再輸出することを認めるよう求める申請がドイツ、スペイン、デンマークから出されたが、連邦政府はいずれも却下した。
しかし、欧州諸国からの国際的圧力や、ロシアがウクライナへの攻撃を強めている現状を受け、スイス国民と政治家の間で武器の再輸出に対する意見が大きく分かれている。
英語からの翻訳・宇田薫
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