スイスの首都ベルンでは6月、武器輸出の規制緩和に反対するデモが行われた
© KEYSTONE / ANTHONY ANEX
今年6月、武器輸出の規制緩和を打ち出した連邦政府に対し、スイス連邦監査事務所はこのほど、武器輸出業者が現行制度下の抜け穴を利用してすでに同じことをしていると指摘した。政府の緩和方針に今後、波風が立ちそうだ。
このコンテンツが公開されたのは、
連邦政府は6月、戦争当事者に使用されないことを立証できれば、内戦の当事国に武器を輸出できるよう武器輸出法を緩和する方針を打ち出した。だが監査事務所は、現在の法的枠組みでも抜け穴を使って同等の行為が可能だと指摘する。
抜け穴の一つは、紛争当事国ではない第三国に一定量の兵器部品を輸出する場合、組み立てた武器の再輸出を禁止する合意を交わす必要がないという条項だ。これは「代替的な輸出手段」と呼ばれ、監査事務所はカナダを経由してカタールに戦車が輸出されたケースや、米国を介してサウジアラビアに運ばれるピストルの部品などの事例を挙げた。
企業はまた、兵器が民間人による使用に限定されていると主張することで、厳しい監視の目をかいくぐることができる。こうしてライフルスコープがイタリア経由でイランに出荷された例がある。
監査事務所は16年の武器輸出状況を報告書にまとめ、これらの抜け穴に関し透明性を高めるよう勧告している。また連邦経済省経済管轄局(SECO)に対し、輸出後の検査ではなく、スイスの兵器製造業者に対する監査を厳しくするよう求めている。SECOは軍需産業を代表する企業やロビイストと距離を置くべきだとも結論付けた。
ただSECOは、報告書が「一方的」で「恣意的」だと批判。政治的な意図や多くの誤解、重要な事実隠ぺいがあると反論した。監査事務所の報告書は法律上の権限を逸脱した可能性があるとも示唆した。
赤十字国際委員会(ICRC)のペーター・マウラー総裁は今月初め、スイスの武器輸出法の緩和を批判。スイスの「人道的側面」に傷がつくだろうと述べた。
おすすめの記事
スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
このコンテンツが公開されたのは、
日本を公式訪問中のスイスのイグナツィオ・カシス外相は22日、2025年大阪・関西万博のスイス・ナショナルデーのオープニングセレモニーに出席し、結束と対話を呼びかけた。
もっと読む スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
おすすめの記事
フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、21日死去したローマ教皇フランシスコに哀悼の意を表した。
もっと読む フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
おすすめの記事
WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
このコンテンツが公開されたのは、
世界経済フォーラム(WEF)は21日、創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が同日付で辞任したと発表した。
もっと読む WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
おすすめの記事
スイス外相、日本と中国を訪問
このコンテンツが公開されたのは、
イグナツィオ・カシス外相は日本と中国を公式訪問する。
もっと読む スイス外相、日本と中国を訪問
おすすめの記事
TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
このコンテンツが公開されたのは、
米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。
もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
おすすめの記事
ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。
もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
おすすめの記事
ハイジのスイス館、150万人以上の来館者見込む 大阪・関西万博
このコンテンツが公開されたのは、
2025年大阪・関西万博のスイス館が、13日の開幕日に開館した。没入感のある展示空間でスイスの多様・卓越性を紹介し、150万人以上の来館者を見込む。
もっと読む ハイジのスイス館、150万人以上の来館者見込む 大阪・関西万博
おすすめの記事
スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、米国の追加関税について、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談した。
もっと読む スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
おすすめの記事
【トランプ関税】スイス経済相が米通商代表と初協議
このコンテンツが公開されたのは、
米国の関税措置をめぐり、スイスのギー・パルムラン経済相は7日、米通商代表のジェミソン・グリア氏とビデオ会議による最初の協議を行った。
もっと読む 【トランプ関税】スイス経済相が米通商代表と初協議
おすすめの記事
スイス、トランプ関税に報復せず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は3日、ドナルド・トランプ政権が同日発表した関税に対し、当面は対抗措置を取らないと表明した。
もっと読む スイス、トランプ関税に報復せず
続きを読む
おすすめの記事
「軍需産業への資金援助を禁止」案、スイスで国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
軍需品の製造企業に一切資金援助しないことを求めたイニシアチブ(国民発議)が、スイスで近く国民投票にかけられることになった。連邦内閣事務局が7月、国民投票実施に必要な署名数を確認したとして、イニシアチブを受理した。
もっと読む 「軍需産業への資金援助を禁止」案、スイスで国民投票へ
おすすめの記事
冷戦時のスイス軍秘密部隊 極秘文書が行方不明に
このコンテンツが公開されたのは、
冷戦時代、旧ソ連の侵攻に備えてスイスが作った軍の秘密部隊「P26」が、再び脚光を浴びている。この部隊について調査した機密文書の行方が分からなくなっているとドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーが報じた。
もっと読む 冷戦時のスイス軍秘密部隊 極秘文書が行方不明に
おすすめの記事
冷戦時のスイス軍秘密部隊P26、政府が機密文書を公開
このコンテンツが公開されたのは、
冷戦時代、旧ソ連の侵攻に備えてスイスが作った軍の秘密部隊「P26」に関する政府の機密文書「コルニュ・レポート(Cornu Report)」が25日、30年の年月を経て公開された。ただ個人名などは伏せられた。
もっと読む 冷戦時のスイス軍秘密部隊P26、政府が機密文書を公開
おすすめの記事
冷戦時のスイス軍秘密部隊P26、行方不明の極秘文書は見つからず
このコンテンツが公開されたのは、
冷戦時のスイス軍秘密部隊「P26」について調査した機密文書の一部が行方不明になっていた問題で、国防省はこの文書の所在を特定できなかったとし、捜索を打ち切った。
もっと読む 冷戦時のスイス軍秘密部隊P26、行方不明の極秘文書は見つからず
おすすめの記事
スイス軍にウーマンパワー
このコンテンツが公開されたのは、
スイス軍が連邦憲法成立以来はじめて、国外で活動したのは1953年のこと。それ以来、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)北緯38度線に兵士を送り停戦の監視をしている。現在は、国連の平和維持活動の一環としてコソボ、ボスニア…
もっと読む スイス軍にウーマンパワー
おすすめの記事
スイス人女性にも兵役義務?
このコンテンツが公開されたのは、
今年、ドゥニ・フロワドヴォー准将が新聞のインタビューで、女性にも兵役義務を課すことに賛成だと話したことが話題になった。また3月にはウエリ・マウラー国防相が、軍隊の現代化に関する連邦議会での討論の中で、女性兵士が増えれば…
もっと読む スイス人女性にも兵役義務?
おすすめの記事
もう家庭に銃を保管したくない
このコンテンツが公開されたのは、
イニシアチブの請願書は9月18日、連邦議会の委員会に提出され、スイスの民兵が兵役期間中、銃器を家庭に保管してきた伝統を両議会でも検討するに至った。 「家庭に銃器持ち込み反対」と題された請願書は、連邦議会の両院の法に関す…
もっと読む もう家庭に銃を保管したくない
おすすめの記事
スイス市民の小型武器所有率は世界で4番目
このコンテンツが公開されたのは、
小型武器の所有率が最も高いのはアメリカで100人当たり、90人。次にイエメン ( 61人 ) 、フィンランド ( 56人) と続き、スイスは4位の46人となった。スイスは武器の総数では世界22位となった。 小型武器とは…
もっと読む スイス市民の小型武器所有率は世界で4番目
おすすめの記事
スイスの銃器所持擁護派、EUの銃規制に反対
このコンテンツが公開されたのは、
欧州議会は今月14日、銃規制案を可決した。スイスは欧州連合(EU)に加盟していないが、シェンゲン協定加盟国としてこの新規制を適用する必要がある。これに対して、スイスの銃器所持擁護のロビー団体が異議を唱えている。
欧州議会が可決した新規則は、武器登録の導入や半自動銃のカードリッジ(薬包)の上限を20発から10発に制限するなど、銃器の所持をより制限する内容となっている。
スイス国内で同規則を適用するには議会の承認が必要となる。スイススポーツ射撃協会(FST-SSV)は、議会がこれを承認した場合、レファレンダムを視野に入れていると話す。
同協会のドラ・アンドレス会長は「新銃規制はテロ攻撃を阻止することはできないし、スイスの現行法は武器の違法取引に十分対応している」と話す。さらに同氏は、「スイスは銃器の所持において、とりわけ猟師、射手、コレクターの間で長い歴史がある」と付け加えた。
右派・国民党のヴェルナー・ザルツマン議員も同じく、新規制の導入に異議を唱えている。
しかし、左派・社会民主党のシャンタル・ガラデ議員は、「射手も警察官も、従来どおり銃器を使用できる」とドイツ語圏のスイス公共ラジオに対して話した。
スイス、適用外となるか?
シモネッタ・ソマルガ司法警察相は昨年3月、EUが計画する銃規制は、軍隊で使う武器を家庭で保管するという、スイスの伝統には影響しないだろうと話していた。
スイスでは1割以上の徴集兵が公務を終えた後、軍隊で使用した銃器を家庭に持ち帰っている。そのため、EUの半自動銃に関する規制案は当時から、スイスで大きな議論を引き起こしていた。
今回の新規制の導入に対する反対派は、銃登録データの統括を求める案件が2011年の国民投票で否決されたことを反対理由の一つに挙げている。
もっと読む スイスの銃器所持擁護派、EUの銃規制に反対
おすすめの記事
核兵器に投資する金融機関リストにスイスの銀行も
このコンテンツが公開されたのは、
スイスとオランダに拠点を置く反核団体がまとめた調査で、銀行、年金基金など300超の金融機関から、昨年は5000億ドル以上が核兵器製造企業に流れ込んだことが分かった。スイスのクレディ・スイスもそのリストに含まれている。
もっと読む 核兵器に投資する金融機関リストにスイスの銀行も
おすすめの記事
スイスの武器輸出が増加 タイに対空防衛システム
このコンテンツが公開されたのは、
昨年のスイスの軍需製品の輸出は対64カ国、4億4660万フラン(約513億5900万円)に上り、輸出額は前年に比べ8%増加した。一方、連邦経済省経済管轄局(SECO)が27日、発表した。
もっと読む スイスの武器輸出が増加 タイに対空防衛システム
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。