スイス国民投票、「ネットフリックス法」賛成が失速 世論調査
ネットフリックスやアマゾンプライムなど国外の動画配信サービスにスイスの映画産業への出資を義務付ける「映画文化・映画制作法改正案」(通称・ネットフリックス法)は、国民投票を目前に賛成が伸び悩み、結果が読めなくなっている。
今月15日のスイス国民投票を前に行われた最新の世論調査では、ネットフリックス法への賛成が56%と、前回調査から3ポイント減った。反対が同9ポイント多い41%に増え、差は12ポイントに縮まった。
欧州対外国境管理協力機関(Frontex)への負担金増額に関する法改正案、臓器移植法改正案についても同日に投票が行われる。ともに賛成派が過半数で、安定した支持を得ている。
同調査は、スイス公共放送協会(SRG SSR)から委託を受け世論調査機関gfs.bern外部リンクが実施した。
ネットフリックス法は、スイスに参入する国際的な動画配信プラットフォームに対し、スイス国内で得た収益の4%をスイスの映画やシリーズ制作に出資するように義務付ける。この法改正で、スイスの映画産業の年間予算は1200万フラン増えると見込まれている。増収分は、スイスの独立系制作会社やスイスが参加する国際共同制作映画、ドキュメンタリー、ドラマシリーズに充てる。
gfs.bernの政治学者、ルーカス・ゴルダー共同所長は、「反対が優勢になりつつあるが、議論はそれほど盛り上がっていない」と話す。賛成派は56%からさらに減り、結果はいずれにせよ僅差になるとみる。「今回の世論調査では、はっきりとした兆候は見られなかった。最終的にどちらが優勢になるかはまだ分からない」
同氏は、ネットフリックス法を巡る議論はどこか抽象的でインパクトを欠くため、反対派・賛成派ともに有権者の関心を集めることができていないとも指摘した。
この国民投票は、連邦議会で可決された改正映画文化・映画制作法に対し、超党派の若手政治家らが反対署名を集めてレファレンダムが成立した。レファレンダムは議会の決定を有権者が覆す手段だ。
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ゴルダー氏によると、仏語圏の回答者は国による国内メディア支援に賛成する傾向が強く、独語圏では自由市場経済を支持する声が優勢となっている。
臓器移植法改正案は賛成派優勢
明確に反対の意思表示をした人を除き全ての人を潜在的ドナー(臓器提供者)とみなす臓器提供イニシアチブをめぐっては、同案を取り込んだ連邦内閣の対案が支持を伸ばしている。
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イニシアチブとは?
同対案に反対してレファレンダムを起こした国民党らは、有権者の支持を得られていない。
ゴルダー氏は政府の対案が支持を広げた背景として、対案が「明示的同意」の定義を拡大することで、急進的なイニシアチブを抑え込むことに成功した点を挙げる。対案は、明確な意思表示がない場合は、故人の意思に沿う形で親族が判断できるとしている。
国境警備負担金増額案も可決の公算
欧州対外国境管理協力機関(Frontex)への負担金を増やす法改正も、可決される公算が大きい。
ゴルダー氏は、有権者全体の過半数に加え、26州全てで賛成が反対を上回る「ストレート勝ち」になる可能性は高く、それ以外の投票結果は「サプライズになる」と話す。
賛成と反対の差は4週間前に行われた前回調査より広がっている。国民党支持層が賛成に回ったことが大きい。
政府・議会の負担金増額案に対しレファレンダムを起こした左派政党は、一枚岩になれず支持を失った。ゴルダー氏は、犯罪・不法入国を取り締まるFrontexは力量不足が指摘されるものの、おおむね役に立っているとの認識が有権者の間で定着したと指摘する。
ただ有権者の関心はロシアによるウクライナ侵攻に向かい、15日の国民投票に向けたキャンペーン活動は影が薄い。3案件とも「戦争の存在は議論の盛り上げ役にならなかった」(ゴルダー氏)。
gfs.bernは、政府の環境政策やコロナ対策に対して議論が白熱した昨年の反動で、今回の投票率は平均よりやや低くなるとみている。
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今回の世論調査は2回行われる全国調査の第2回目。スイスの全ての言語圏、及び外国在住のスイス人から6315人を対象に行われた。
世論調査結果は、固定電話及び携帯電話の利用者を対象に実施した電話による聞き取り調査と、オンライン回答に基づいている。実施期間は4月20日~27日。
誤差は2.8%。
同調査は、SWI swissinfo.chの親会社であるスイス公共放送協会(SRG SSR)の委託で世論調査機関gfs.bernが実施した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子、大野瑠衣子)
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