スイスの視点を10言語で

スイス大使、国連の人種差別批判に反論

ジュネーブの国連人権理事会
ジュネーブの国連人権理事会 Keystone / Salvatore Di Nolfi

国連人権理事会のスイス大使ユルク・ラウバー氏は3日、スイスに構造的な人権差別があると批判した国連の報告書には「誤解がある」と反論した。

国連の作業部会は今年1月、スイス国内でのアフリカ系の人々に対する人種差別の実態について現地調査を実施した。報告書外部リンクは、スイスのアフリカ系住民が直面するさまざまな問題59項目を列挙した。「数十年にわたり警察による残虐行為があり、不祥事が免責されてきた可能性」も指摘された。

また、スイスが植民地主義やアフリカの奴隷貿易と無縁ではないことに対して「認識が不十分だ」と批判。スイスの現在の豊かさは、とりわけ過去の奴隷制度に関連した銀行や産業の利益によるものだとの認識を示した。

これに対しラウバー氏は人権理事会の会合で、人種差別との戦いは急務だが、国連が指摘した構造的人種差別についてはより詳細な調査が必要だと述べた。

また同調査には「思い込み」や「誤解」が含まれ、「(スイスの)状況を反映していない」と指摘。「1つまたは少数の個別の事例をもとに導かれた結論が多いように思われる」とし、報告書のベースとなったスイス当局との話し合いが不十分だったのは遺憾だとした。

作業部会長を務めたキャサリン・ナマクラ氏は、1月の報告書の結論を繰り返し、スイスの警察や司法に対する姿勢について「非常に懸念している」と述べた。

ラウバー氏によると、連邦内務省人種差別対策窓口(FRB/SLR)外部リンクは今後数週間のうちにスイスの現状について独自の報告書を発表する予定。

英語からの翻訳:シュミット一恵

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スイスのマッターホルン

おすすめの記事

マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの名峰マッターホルンで16 日、登山者が下山中に800m下の氷河に滑落し死亡した。同じ山では14日にも、別の登山者2人が滑落死した。

もっと読む マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ

おすすめの記事

スイス鉄道、国外へ乗り入れせず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)取締役会長のモニカ・リバー会長は、自社列車で国外に乗り入れないとする同社の決定を擁護した。

もっと読む スイス鉄道、国外へ乗り入れせず
スイス事故防止協議会(BFU)によると、シートベルトの着用により、過去10年間の国内交通事故で負傷事故5700件、約650件の死亡事故を未然に防いだ

おすすめの記事

命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは、30年前から車の後部座席のシートベルト着用が義務付けられている。スイス事故防止協議会(BFU)と連邦統計局の最新データによって、この安全対策の有効性が裏付けられた。

もっと読む 命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年
握手を交わすスイスのアムヘルト大統領と岸田首相

おすすめの記事

アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望

このコンテンツが公開されたのは、 訪日中のヴィオラ・アムヘルト大統領兼国防相は7日、官邸で岸田文雄首相と会談し、日本・スイス間の自由貿易協定(FTA)改定というスイスの要望を改めて表明した。

もっと読む アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望
UNRWAの前でたむろす子どもたち

おすすめの記事

UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇

このコンテンツが公開されたのは、 国連は5日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員9人が昨年10月7日のイスラム過激派ハマスによるイスラエル襲撃に「関与していた可能性がある」との内部調査を発表した。

もっと読む UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇
診察を受ける赤ちゃん

おすすめの記事

スイスで小児科医が不足

このコンテンツが公開されたのは、 スイス小児科医協会は医師が足りず、特に地方部で子どもが十分な治療を受けられなくなる可能性があると警告する。背景には柔軟な働き方を求める世代の増加や役所・企業の「官僚主義化」があると批判する。

もっと読む スイスで小児科医が不足
注射を打たれる男性

おすすめの記事

コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは現在、新型コロナウイルス感染症が再び流行している。それ自体はさほど深刻ではないものの、ワクチンを受けたくても薬局や診療所に在庫がない事態が発生。背景には7月初めの制度変更がある。

もっと読む コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に
座り込む女性の横顔

おすすめの記事

スイスで人身取引被害が増加

このコンテンツが公開されたのは、 「人身取引と闘うプラットフォーム(Plateforme Traite)」は2023年、スイスで197件の人身取引(人身売買)事案を記録した。前年比で11%増加した。

もっと読む スイスで人身取引被害が増加

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部