スイスがドイツやデンマーク、スペインによるスイス製戦車・弾薬のウクライナへの再輸出を拒否したことは、繰り返し批判されている
Keystone / Oleg Petrasyuk
スイス政府は15日、ロシアの個人資産の没収は、スイスの憲法と一般的な法秩序に違反するとの見解を示した。
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専門家グループによる報告を受け、政府は声明外部リンクで、法的に正当な出所の個人資産を補償なしに収用することは、スイスの法律では認められていないと述べた。「凍結された個人資産の没収は、スイスの憲法と一般的な法秩序に反し、スイスの国際公約に違反している」と指摘した。「他の国でも同様に、憲法上の権利・保障がある」ことも付け加えた。
一方で「資産没収に関する議論とは別に、ウクライナへの支援は継続する」と強調した。
ロシア中央銀行の外貨準備やその他国有資産の没収案については、引き続き国際的な議論に参加していくと述べた。
連邦経済管轄庁(SECO)は昨年12月、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁としてこれまでに75億フラン(約1兆600億円)を凍結したと発表した。
ウクライナへの賠償金に凍結資産を充てる案については、米国やカナダ、欧州連合(EU)で議論が進み、スイス議会からも要望が高まっているのを受けて、司法省に設置した作業部会で検討していた。
EU制裁に再び追随
スイスの銀行業界も没収には反対している。スイス銀行協会は先月、「今のところ、没収するための法的根拠はない」と述べた。
スイスはEUに加盟していないが、石油価格の上限制などウクライナ戦争を受けたEUによる制裁の多くを踏襲している。
1月末にもEUの追加制裁に対応。新たに200人の個人資産を凍結し、航空機やドローンのエンジンなど航空宇宙産業の対ロ禁輸など新しい規制を発表した。
だがドイツがゲパルト戦車用のスイス製弾薬をウクライナに再輸出するのを拒否したスイス政府に対して、繰り返し批判が起きている。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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