スイスでは健康な成人男性は皆、兵役義務がある。兵役が「オフ」の時でも武器を自宅に保管することが認められており、そうする人が大半だ
Keystone / Martin Ruetschi
スイスの男性の銃による自殺率は、他の欧州諸国に比べてかなり高い。ある報告書によると、兵役義務で銃器を容易に保有できることが影響している。
このコンテンツが公開されたのは、
報告書「Suicide in Switzerland: why gun ownership can be deadly外部リンク(仮訳:スイスの自殺―なぜ銃の所持が命取りになるのか)」は、スイスの医学誌「スイス・メディカル・ウィークリー」(6日付)に掲載されたもの。オランダのフローニンゲン大学の研究者が、米国や欧州における銃の暴力に関する研究を元にスイスの実態を分析した。
それによると、スイスでは男性の自殺で銃器によるものが全体の3分の1(33.6%)に上ったのに対し、他の欧州諸国では9.7%だった。年齢層は主に20~35歳だ。
報告書は、スイスでは男性が銃を簡単に入手・保有できることが一因だと指摘。「欧州諸国の多くでは、そのような銃器へのアクセスが厳しく制限されているが、スイスは異なる」とした。
スイスでは、健康な成人男性の全てに兵役義務がある。支給品の軍用ライフルは自宅に保管することが認められており、大半がこのオプションを選択する。退役後の保持も認められている。ただ弾薬は持ち帰り禁止で、軍の武器庫に保管される。
今回の報告書では、「弾薬なしに、どうやって軍の銃器で自殺できるのか」という疑問を明らかにした。
「このタイプの弾薬は銃器店で簡単に購入できる上、兵士が兵役期間中に持ち帰ることが多い。さらに、少なくとも2009年11月までに、それよりも前に支給された弾薬箱6万ケース(各50発入り)が返却されていないようだ」
また、2003/04年のスイス軍改革で徴兵数がほぼ半減した際、軍支給銃器が推定2割減少したことにも言及した。
同報告書は「改革前後の自殺率を比較したところ、男性の自殺率は8%減少した(女性はこの限りではない)。他の自殺手段への切り替えも確認されなかった。支給銃器を自宅ではなく兵舎で保管するよう義務付ければ、男性の自殺率はさらに減少することが予想される」と結論づけた。
英語からの翻訳:シュミット一恵
おすすめの記事
世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業
このコンテンツが公開されたのは、
スイス中部ベルナーオーバーラント地方のシュテッヘルベルクとミューレンの間に、世界一急勾配のケーブルカーが開業した。
もっと読む 世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業
おすすめの記事
2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。
もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
おすすめの記事
医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
このコンテンツが公開されたのは、
大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。
もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
おすすめの記事
スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。
もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
おすすめの記事
世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。
もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
おすすめの記事
スイスのドライバー、2割が飲酒運転
このコンテンツが公開されたのは、
欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。
もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
おすすめの記事
狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
このコンテンツが公開されたのは、
先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。
もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
おすすめの記事
自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
このコンテンツが公開されたのは、
今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。
もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
おすすめの記事
スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。
もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
おすすめの記事
スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。
もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査
続きを読む
おすすめの記事
武器は自宅に保管する スイスの兵士
このコンテンツが公開されたのは、
一方、事故にもつながることもあり、武器を自宅に保管することに対する疑問の声も上がっている。基本的には自宅に保管する制度は変らないが、退役者については所有する条件が厳しくなった。 スイスを訪れる外国人にとって、スイス兵がラ…
もっと読む 武器は自宅に保管する スイスの兵士
おすすめの記事
日本人がスイスに来て驚くこと
このコンテンツが公開されたのは、
雄大なアルプスに囲まれたハイジの国、スイス。旅行して、住んでみて、びっくりしたことは?
もっと読む 日本人がスイスに来て驚くこと
おすすめの記事
スイス軍に関する疑問に答えます
このコンテンツが公開されたのは、
読者から多く寄せられるスイス軍に関する質問に、軍広報が答える。
もっと読む スイス軍に関する疑問に答えます
おすすめの記事
スイスで女性兵士の入隊が倍増
このコンテンツが公開されたのは、
女性への兵役義務化を検討するスイスだが、自ら兵役を志願する女性は年々増えている。この2年で新たに入隊した女性は2倍になった。
もっと読む スイスで女性兵士の入隊が倍増
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。