「緑の波」に乗る有権者 スイス議会はやや左派寄りへ
スイスでは20日、4年に1度の連邦議会総選挙が行われる。緑の党が議席を増やし、議会はやや左寄りの構成になるとみられている。
総選挙は国民議会(下院)の200議席と全州議会(上院)の46議席を争う。今年は立候補者数が4652人と過去最高なだけではなく、女性立候補者数も1875人と記録を更新した。うち73人は在外スイス人で、国外から立候補した。
これまでの世論調査では一貫して、左派の緑の党および中道派の小党・自由緑の党が勢力を伸ばす見通しとなった。
右派の国民党は2~3パーセント分の議席を他党に明け渡すことになりそうだが、それでも最大勢力を維持する見込みだ。国民党は前回の2015年総選挙で得票率の29.4%を獲得した。
最新の世論調査による予想得票率では、緑の党とキリスト教民主党は横並び(10~11%)で、左派の社会民主党(約18%)と中道右派の急進民主党(約16%)はトップの国民党を追うかたちとなっている。
ただ、全体的なパワーバランスに大きな変化はみられないだろう。議会を左右まんべんなく4大政党がほぼ独占する構成は昔から変わらない。スイスの内閣を構成する連邦閣僚7人は総選挙後に選ばれるが、同ポストは慣例的に、4大政党から割り当てられる。
上院と下院の合同議会は12月11日に開かれ、今後4年間の閣僚を務める7人が選出される。原則として現職の閣僚が承認される。
低調な選挙戦
スイスのキャンペーン運動が白熱することはあまりない。それでも今回の総選戦は盛り上がりに欠けたと言える。前回総選挙では国民党が反EU と厳しい外国人政策を訴え世間の話題を独占したが、今回はそうした有権者をあおるような選挙キャンペーンを繰り広げることができなかったことも原因の1つだろう。
代わりに、年間を通じて気候変動のようなグローバル問題が存在感を強めた。全国で多数の街頭抗議が行われ、都市部の若い世代が政治に関心を向けた。
また、6月に行われた大規模な女性ストライキも影響し、上下両議会の女性議員数が増えそうだ。スイスの政治で過小評価されている女性の立場を改善する良い機会になる、との声が多い。
現議席の女性比率は下院が33%、上院が13%。
今回の総選挙は環境問題という若者に関心の高いテーマが争点となり、女性有権者を巻き込んだ選挙運動が活発になったことで、若者・女性の投票率が上がりそうだ。全体の投票率は40年ぶりに5割を上回るとの見方が出ている。
デジタルキャンペーンの重要性が謳われる今日だが、スイスではポスター掲示、戸別訪問(スイスでは合法)、電話による選挙活動も未だ選挙活動の有効手段として重視されている。
決選投票
総選挙の最終結果がわかるのは、スイス時間20日深夜の予定。
上院は投票総数の過半数を当選ラインとしているため、準州を含む26州中、候補者の得票率が50%に達しない州では11月に決選選挙が行われる。
キリスト教民主党と急進民主党の2党はこれまでずっと、上院で多数派を形成している。スイスの議会制度では両議会は同等の権限を持っている。
●およそ530万人の有権者が2019年10月20日の総選挙で投票できる。
●2015年に実施された前回の総選挙とは異なり電子投票はできない。政府はセキュリティー上の問題から導入を当面見送った。
●在外スイス人として登録しているスイス人も国民議会(下院)に立候補できる。一部の州では全州議会(上院)への立候補もできる。
●上下院合わせた246議席のうち、上院の3議席は既に割り当てが決まっている。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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