スイス、セミロックダウンの段階的緩和策を発表
スイス連邦内閣は17日、新型コロナウイルス感染防止に伴うセミロックダウンの段階的緩和策を発表した。3月1日から小売店、美術館、屋外スポーツ施設を再開する。州と協議し、24日に最終決定する。
3月1日に予定されている第一弾緩和は主に以下の通りだ。
屋外での私的な集まりを現行の最大5人から15人に引き上げる。屋内では5人のままとし、4月1日の第二弾緩和で10人に引き上げる見込み。
図書館・公文書館の閲覧エリア、動物園、植物園の屋外エリア・アウトドアパークも再開する。博物館も再オープンする。
小売店の再開に当たっては、売場面積の広さに応じ、10~25平方メートル当たりの顧客数を1人とする。ショッピングセンター内全体の人数も制限する。
屋外スポーツ施設はゴルフ、テニス、サッカー場、陸上競技場、スケートリンクなど。ただし1グループ5人までとし、1.5メートルの対人距離が取れない場合はマスクの着用を義務付ける。屋内でのスポーツは4月の第二弾緩和で解禁する。
16歳未満はこうしたスポーツ・文化活動の人数制限が免除されていたが、3月からこの年齢を18歳未満に引き上げる。
レストラン・カフェは引き続き営業を停止し、4月1日の第二弾緩和ではテラス席のみ解禁する。観客を入れた文化・スポーツイベントは、着席制・マスク着用・人数制限を設けた上で4月1日に解禁する。
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在宅勤務の義務付けは維持する。
また、スイス入国時の制限措置を一部緩和した。12歳未満の子供はPCR検査陰性証明の提出義務から免除される。トラックの運転手など商用で短期滞在する場合は入国フォームに記入する必要がなくなる。また陰性証明にはPCR検査だけでなく、抗原検査の結果も有効とする。
アラン・ベルセ内務相は会見で「私たちはリスクを取るが、全員が協力し、衛生規則を守り続ける限り、許容できると思う」と述べた。
スイス国内の1日当たりの新規感染者数は1千人を超えているが、昨年末から減少傾向にある。
段階的緩和の条件
4月の第二弾緩和に当たっては、政府は▽陽性率が5%を超えていない▽集中治療室のコロナ患者のベッド占有率が25%を下回る▽7日間の再生産数(感染者1人がほかの何人にうつしたかを示す割合)が1未満▽3月24日時点の新規感染者数(直近2週間)が3月1日時点を上回らないーーなどの条件を設けた。
ただこれらの条件を満たせば自動的に緩和に移るのではない。新型コロナウイルスの新種の感染や、供給不足により遅れが生じている政府のワクチン接種計画の進捗状況も考慮し、3月に州と協議し最終決定するという。
経済界などからはロックダウンの緩和を求める声が高まっていた。だが、保健衛生の専門家は、規制緩和が早すぎたために感染の再拡大を呼んだ昨年の失敗を繰り返してはならないと警告していた。
ギー・パルムラン連邦大統領兼経済相は会見で「トンネルの出口に光が見え始めたが、道のりは長い」と述べ、現状を過度に楽観視してはならないとした。
パルムラン氏は、行動制限が若者の精神衛生に大きな負担を与えていたと指摘。スポーツ・文化活動の人数制限免除を18歳以下に引き上げたのは、若者の精神的負担を少しでも減らすためだと述べた。
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また政府の制限措置をめぐり、保守系右派・国民党は保健行政を率いるベルセ氏(左派・社会民主党)を「独裁者だ」と批判していた。パルムラン氏は「(7人の閣僚で構成する)内閣が長い議論を経て決定したこと。この決定は閣僚全体の意見だ」と批判を一蹴した。
財政援助
連邦内閣は、パンデミック(世界的大流行)で打撃を受けた企業への追加の緊急財政援助策として、現行の50億フランから100億フラン(約1兆1千億円)に引き上げる案を発表した。休業時の一部給与を失業保険が補填する短縮操業制度についても、今年分は国が財源を負担する。
100億フランのうち、60億フランは年間売上高が最大500万フランの中小企業に割り当てる。連邦政府が7割(42億フラン)、州が3割を負担する。
30億フランは年間売上高が500万フランを超える大企業に割り当てる。財源は国が全額負担する。
また、特に深刻な影響を受けた州への救済措置として、政府の準備金を2億5千万フラン積み増し10億フランとする。分配については今後協議する。
また失業保険の適用規則も一部変更する。3月1日時点で失業保険手当の受給資格を持つ人に対し、5月まで受給日数を66日間延長する。
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