スイス南部ヴァレー(ヴァリス)州は10日の住民投票で、アルプスへの巨大太陽光発電所の建設手続きを迅速化する州法案を反対票53.94%で否決した。投票率は35.72%だった。
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州議会は2月、迅速化を盛り込んだ州法案を賛成多数で可決した。これに対し、左派政党や国民党支部、環境団体らが有権者の署名を集め、住民投票に持ち込んだ。
州法案は大規模太陽光発電所に対する建設許可手続きの第一責任部局を州参事会(州の内閣)と定める内容だった。通常、建築区域外への建設許可は州の建設委員会が担うが、州政府がこれに代わる。第三者から異議申し立てがあれば手続きを延期しなければならなかったが、延期効果を停止できるようにした。これらの変更により、手続きの迅速化を図った。
国家プロジェクトにも影響
アルプスの景観を壊しかねない大規模プロジェクトを巡る住民投票は、全国的にも注目を集めた。連邦政府が昨年9月に打ち出した「ソーラー・エクスプレス外部リンク」プロジェクトに対して初めて民意が示される機会となったためだ。
ソーラー・エクスプレスは冬季の電力不足に備えるため、連邦議会が可決済みの太陽光発電計画を前倒しする内容だ。2025年末までの移行期間に太陽光発電施設の建設を加速するため、連邦政府が巨額の補助金を支出する。
補助金を受給するには、2025年末までに計画全体(年間2テラワット時または50万世帯分)の1割以上の電力量または10ギガワット時(GWh)を供給する必要がある。また自然保護区内には建設せず、耐用年数が過ぎれば解体しなければならない。条件を満たせば連邦政府が投資総額の最大6割を負担する。
これまでにヴァレー州で8件、全国では40~50件が申請している。晴天の多いスイス南西部は特に多くのプロジェクトが提案されている。
原発回帰論も復活?
住民投票での否決を受け、ドイツ語圏の日刊紙NZZは「エネルギー政策のゴールドラッシュは当面沈静化する」と分析した。「人口が多く、より進歩的であると考えられているヴァレー州は今、ソーラー・エクスプレスの足を引っ張っている」
NZZはまた、これにより原子力発電所の新設が再び選択肢に浮上する可能性を指摘した。日刊紙ターゲス・アンツァイガーも同意見だが、「たとえスイスが今原発の新設を決定しても、運転開始には20年かかる」と指摘し、「たとえ遅れてもソーラー・エクスプレスの実行を続けなければならない」と強調した。
英語からの翻訳・編集:ムートゥ朋子
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