スイス世論調査、自由緑の党への支持上昇
緑の党が歴史的大勝を収めた2019年のスイス連邦議会総選挙から1年後に行われた有権者への世論調査で、同党が支持率を下げた一方、より中道派の自由の緑の党が支持を伸ばした。保守派・国民党は依然、最大政党の座を維持するが、支持基盤は侵食されている。
緑の党は昨年の総選挙で、国民議会(下院)では17議席増と躍進。4番手の議会勢力に躍り出た。それから1年後、調査会社ソトモが有権者を対象に行った世論調査では、その後も政党の力関係はあまり変わっていないという結果が出た。保守系右派・国民党が依然、最も有権者の支持が高く、その後に左派・社会民主党、右派・急進民主党、左派・緑の党が続く。
国民党は昨年の総選挙で大敗を喫し(得票率3.8ポイント減)、今年秋時点の政党支持率も1.5ポイント下がったとはいえ、最大政党の座にいる。緑の党の支持率は1ポイント減とわずかに下げた。一方、自由緑の党は2ポイント上昇した。ソトモの調査報告書では「自由緑の党は、緑の党とは異なり、まだ成長の余地が残っている」と分析する。自由緑の党は他党との票差を埋め、国内6番目の政治勢力になる可能性があるという。
新型コロナウイルスの影響
ソトモはその一方で、新型コロナウイルスの影響で、有権者の関心事が昨年に比べ大幅に変化したと指摘する。回答者の大半(61%)が新型コロナウイルスを国内の最重要課題に挙げた。昨年の総選挙で主要な争点となった気候も2位(34%)でなお関心が高い。その後に経済、失業、賃金など、新型コロナウイルスに直接関連する事項が続く。
ソトモは、有権者の関心が集まっているのはパンデミックに直接・間接的に関連する事項だけだとみる。コロナ危機以前の主要テーマだった欧州連合との2国間関係、移民、年金などは後回しになっているという。
ソトモによれば「2019年の総選挙は、非常に安定した経済状況の中で行われた」。「コロナ危機で現況は大きく変わったが、新たな主要課題が投票傾向を大幅に変えたようには見えない」ともいう。
保守派・国民党のかじ取り
国内6大政党のうち4党の支持者は、新型コロナを最大の課題だと答えた。だが国民党の支持者は移民・外国人が最大の関心事だという。緑の党の支持者の間では、気候を挙げる人がさらに増えている。調査の担当者は「1年前、移民を最も重要な関心事だと答えた国民党支持者は65%だったが、今回は45%に減少した」と言い、おそらくこれが支持基盤の新たな弱体化の理由の1つだという。「国民党の支持層の中で、はっきりとした優先事項があいまいになっているようにみえる」
新型コロナウイルスが有権者の主要な関心事であることは、3つの言語圏で共通するが、フランス語圏では67%と、ドイツ語圏(58%)、イタリア語圏(59%)よりも割合が高い。2番目の関心事は、フランス語圏・ドイツ語圏ではいずれも従来と同様「気候」だったが、イタリア語圏では健康保険料、失業が目立った。
世論調査は、swissinfo.chの親会社スイス公共放送協会(SRG SSR)の委託で、ソトモが10月23日~11月2日、スイスの有権者1万9620人を対象に実施した。誤差の範囲は+/- 1.2%。
(仏語からの翻訳・宇田薫)
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