スイス、国連安保理の拒否権行使を精査する決議を歓迎
スイスは、国連安全保障理事会で26日に採択された拒否権行使に関する決議を歓迎し、多国間主義を強化するための一歩だと評価した。
リヒテンシュタインが提案したこの決議はスイスや日本を含む83カ国が共同提案し、総意で採択された。この決議によって、ロシア、中国、米国、英国、フランスの5カ国の安保理常任理事国が拒否権を行使する場合、加盟国193カ国が出席する総会で、その理由を説明しなければならなくなった。
今回の決議は、ウクライナへの侵攻を非難し、モスクワの軍撤退を要求する2月25日の国連安保理決議に対し、ロシアが拒否権を行使したことを受けて行われた。
ニューヨークに駐在するスイスのパスカル・ベリスヴィール国連大使は決議採択後、総会で「この決議は、常任理事国による拒否権行使のアカウンタビリティー(説明責任)と透明性を高め、拒否権をより行使しにくくするものだ」と述べた。
また、ベリスヴィール氏は、スイスは他の加盟国とともに20年近く「より透明で効果的な安保理を目指しており、拒否権の行使に責任を持たせなるべく行使しないようにすることはその重要な取り組みの1つだ」と語った。
「特に大量虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪の場合、拒否権の行使を放棄するよう常任理事国を奨励する取り組みを支持している」
リヒテンシュタインは、安保理で拒否権が発動されるたびに総会の開催を義務づけることが目的だと述べた。
リヒテンシュタインの国連政治調整官マット・エドブルック氏はswissinfo.chに対し、決議を提案した理由を「リヒテンシュタインは、この決議が多国間主義の維持に貢献すると考えているからだ」と説明した。
「安保理は常任理事国間の政治的分裂が非常に深く、国際の平和と安全に対する脅威に対して効果的な行動をとることができないことに懸念を抱いている」
歴史的な拒否権
国連の最高機関である安保理は15カ国で構成され、その決議に対し拒否権を持つのは常任理事国5カ国だけ。これは第二次世界大戦後に与えられた権限だ。拒否権行使は近年、シリアやミャンマー、今回のウクライナでの残虐行為に対する国連の行動を妨げてきた。
AFP通信によると、1946年以降、ロシアは143回、米国は86回、英国は30回、中国とフランスはそれぞれ18回拒否権を行使している。
中立国のスイスは、6月に行われる安保理の非常任理事国に初めて立候補している。ベリスヴィール氏は「安保理の候補国として、スイスは対話と紛争の平和的解決に全面的に取り組んでいく」と表明した。
また、共同提案国である米国のリンダ・トマスグリーンフィールド国連大使は、「ロシアは、過去20年にわたり拒否権を乱用してきた恥ずべきパターン」と非難した。英国は、この決議により「拒否権の行使について、国連加盟国全体が声を上げるようになった」と述べた。
非営利組織NGO「国際危機グループ」のアナリストであるリチャード・ゴーワン氏はツイッター外部リンクで、総会の決議について「ロシアも中国も総意を乱さなかったのは興味深い」とコメント。
「ロシアは、拒否権の行使を国連安全保障理事会でのP3(常任理事国3カ国、米英仏)からの圧力を受けて発動せざるを得ないものと位置付けることで、多くの総会の加盟国を味方につけられると考えているようだ」と投稿した。
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