スイスの左派陣営は、米国のステルス戦闘機F35Aを購入するというスイス政府の計画を白紙に戻すべく、国民投票に必要な有権者の署名を集めることに成功した。
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米ロッキード・マーチン社のF35戦闘機 36 機を購入する政府の計画に反対するイニシアチブ(国民発議)「ストップF35」を組織した政治集団は16日、連邦内閣事務局に12万筆を超える有権者の署名を提出した。イニシアチブの提起に必要な署名は10万筆。
スイス議会は2019年、戦闘機を買い替えるための予算60億フラン(約8千億円)を 承認し、翌年の国民投票でも可決された。だがその後、反対派がF35の購入に的を絞って再度の国民投票に向け署名を集め始めた。
スイス政府は各国の戦闘機を比較検討した末に、F35Aのコストパフォーマンスが最も優れていたと説明した。他に米ボーイングのスーパーホーネット、仏ダッソーのラファール、米エアバスのユーロファイタータイフーンが最終候補に挙がっていた。
だが「ストップ35」は米国の戦闘機は高額すぎて、スイスの防空ニーズには見合わないと主張している。米国やカナダ、ノルウェーで実施された調査が示した通り、購入費が低くても運用コストが大きくなると訴える。
より高価に?
左派の社会民主党、緑の党、市民団体「軍隊なきスイスを目指す会」(GSoA)は、国民投票は来年 3 月 12 日までに実施される可能性があると述べている。
政府は当初、このイニシアチブの結果が出てからロッキード社と契約を締結する予定だった。だが5月、ウクライナでの戦争や他国で武装強化が相次ぐのを受け、23年3月の契約期限前に署名する方針に転じ、左派からの批判を買った。
フィンランドやドイツ、カナダなど他国も戦闘機の購入に順番待ちしているため、スイス政府は契約が再交渉・延期になれば米国が提示した価格・納期は保証されなくなることを懸念している。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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