スイスの視点を10言語で

スイスメディア、セミロックダウン段階的緩和に賛否分かれる

ベルセ
24日の会見に出席したギー・パルムラン連邦大統領(右)とアラン・ベルセ内相 Keystone / Peter Klaunzer

連邦内閣が24日発表した、新型コロナウイルスに伴うセミロックダウンの段階的緩和計画。国内メディアの評価は分かれた。

独語圏の日刊紙NZZは、レストラン・カフェのテラス席再開を第一弾緩和(3月1日)に含めなかった政府の判断について「危険なミスを犯した」と批判した外部リンク

政府はレストラン・カフェのテラス席再開を4月1日の第2弾緩和で行う案を策定し、州に意見を求めた。外食産業や一部の州はより早期の再開を求めたが、意見聴取の段階でそうした州は過半数を割った。ただし第二弾緩和の実施を3月22日に前倒しした。

おすすめの記事
ダンス

おすすめの記事

スイス、1日からロックダウンを段階的緩和

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦内閣は24日、新型コロナウイルスに伴うセミロックダウンの段階的緩和計画を正式に決定し、発表した。3月1日に小売店、美術館、屋外スポーツ施設を再開する。

もっと読む スイス、1日からロックダウンを段階的緩和

NZZは「外食産業の屋外エリア再開を認めていれば、内閣は大きなリスクを負うことなく、心理的に重要なシグナルを国民に示すことができただろう。その頑固さはあきれるほどだ」と批判。テラス席開放よりも優先すべき事項はあるとした一方で、セミロックダウンによる国民の不満といら立ちが募る現状では、そうしたマイナーな側面も大きな役割を果たすと述べた。

NZZはまた「屋外の感染率はほかの場所に比べ明らかに低い」と指摘。「天気が良ければ人はどちらにせよ外で集う。その時に対人距離を確保できるテーブルがあった方が賢明ではないのか」と論じた。

一方、別の独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは政府が「気骨(きこつ)を示した」と前向きに評価した外部リンク

同紙は「制限の対象となっている人たちにとっては非常に厳しいものだが、政府の決定は残念ながら正しい」とコメント。新型コロナウイルス変異株が今後どう広がるか見通しが不透明なことや、国内のワクチン接種がまだ初期段階であることを理由に挙げた。

さらに、連邦内閣7人のうち4人が早期緩和を求める政党出身者であるにもかかわらず、内閣の判断はそれとは異なるものだったことも驚きだったとした。同紙はこの4人が「ある意味極めてポピュリスト的な緩和要求に左右されなかった」と評価した。

おすすめの記事

スイス公共放送(SRF、独語)外部リンクは、政府は単に「あらゆる選択肢を生かしておく方針」とした。日刊紙ブントは政府の判断に好意的な見方外部リンクで、外食産業の事業者全員が「一部再開を急ぐことが商業的に実のあるものだと考えているわけではない」と説明。昨年夏、第二波の到来で国内が混乱した経験を踏まえ「多くの人は大きなリスクを冒して第三波を招きたくないと考えている」とした。

国のワクチン計画とシーケンシング

イタリア語圏の日刊紙コリエレ・デル・ティチーノは社説で「政府は細い綱の上を前進した。その姿は落下防止ネットのない綱の上を、また転びはしないかとおびえながら渡る空中ブランコのアーティストのよう。もし実際にそうなって新しい制限措置が出たとしたら、そこから立ち直るのは私たちにとっても非常に骨の折れることだ」と述べた。また、ワクチン接種を受けた市民が少数にとどまり、再開が現実のものになるのは免疫がより広範囲に広がった時だとした。

仏語圏の日刊紙ル・タンは社説外部リンクで、より感染力の高い変異株の遺伝子情報を解析・解読するシーケンシングが、現時点での感染防止策に不可欠だと指摘。スイスにはそれに適した検査室や十分な処理能力が整っているとし、「実現に必要なのは政治の意志だ」と訴えた。

おすすめの記事
ワクチン

おすすめの記事

スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

世界の読者と意見交換

ニュース

スウォッチのロゴ

おすすめの記事

スウォッチ1~6月期売上高14.3%減 中国の需要低迷が重荷に

このコンテンツが公開されたのは、 スウォッチが15日発表した1~6月の純売上高は34億5000万フラン(約6070億円)と、前年同期比で14.3%減った。中国の高級品需要の落ち込みが、スイス時計業界全体の重荷になっている。

もっと読む スウォッチ1~6月期売上高14.3%減 中国の需要低迷が重荷に
マイクに向かって演説をする女性

おすすめの記事

トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」

このコンテンツが公開されたのは、 ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。

もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
洪水の被害を受けた地域

おすすめの記事

ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。

もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
スイスは対ロシア制裁リストを拡大した

おすすめの記事

スイスが対ロシア制裁リストを拡大

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは対ロシア制裁リストを拡大した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受け、欧州連合(EU)が決定した変更を採用した。

もっと読む スイスが対ロシア制裁リストを拡大
人工知能(AI)による雇用喪失への懸念はスイスが最も低かった

おすすめの記事

AIによる失業懸念、スイスは最低

このコンテンツが公開されたのは、 人工知能(AI)は日々の仕事に影響を与えている。スイスでは、多くの人たちが仕事を含めAIを使っているが、この新しいテクノロジーのせいで仕事を失うと心配している人は比較的少ないことが最新の調査で分かった。

もっと読む AIによる失業懸念、スイスは最低
核兵器禁止を訴える団体

おすすめの記事

核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの市民団体「核兵器禁止を求める同盟」は、国連核兵器禁止条約への加盟を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。必要な署名が集まれば国民投票が実施される。

もっと読む 核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
スイスの伝統衣装を着た女性

おすすめの記事

スイス民族衣装祭りに観光客10万人

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・チューリヒで6月28~29日、連邦民族衣装祭りが14年ぶりに開催され、延べ約10万人の観客が訪れた。

もっと読む スイス民族衣装祭りに観光客10万人
UBSとクレディ・スイスのロゴが入った窓ガラス

おすすめの記事

クレディ・スイスのスイス法人が消失

このコンテンツが公開されたのは、 スイス二大銀行だったUBSとクレディ・スイスの現地法人の合併が1日、完了した。今後スイス国内でも「クレディ・スイス」の看板撤去が進むことになる。

もっと読む クレディ・スイスのスイス法人が消失
マルティン・シュレーゲル氏

おすすめの記事

連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命

このコンテンツが公開されたのは、 連邦内閣はスイス国立銀行(SNB、中銀)の新総裁に予想通りマルティン・シュレーゲル副総裁を任命した。ペトラ・チュディン氏が新たな理事会メンバーとなる。

もっと読む 連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部