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パンデミック条約締結と資金調達力強化が必要 WHO総会が閉幕

WHO director general Tedros Adhanom Ghebreyesus
ジュネーブで開催された世界保健総会で、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、パンデミック条約は 「時宜にかなったアイデア」と述べた Keystone / Martial Trezzini

世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)は31日、感染症のパンデミック(世界的大流行)への備えを強化するための国際条約を検討することで合意し、閉会した。ただジュネーブ大学保健分野の専門家アントワーヌ・フラオー氏は、WHOが予算改革を断行し、将来の感染症対策に適切なリソースを確保することも急務だと指摘する。

194加盟国の代表者が出席し、1週間に渡って行われたWHAの最終日、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、WHOは新型コロナウイルス感染症への対応を現在のレベルで維持するという「深刻な課題」に直面しており、持続可能で柔軟な資金調達が必要だと話した。

加盟国は11月末に会合を開き、新たな感染症への対応に向け、WHOや各国の体制を強化する「パンデミック条約」について議論することで合意した外部リンク。テドロス氏は、同条約は 「時宜にかなったアイデア」と表現した。

ジュネーブ大学グローバルヘルス研究所のアントワヌ・フラオー所長は、swissinfo.chとのインタビューで、このような条約が締結されれば、加盟国はようやく「核や化学物質のように、健康への脅威を、それ自体脅威として考えるようになる」と語った。

この条約のカギとなるポイントの1つは、WHOが新たに発生した病気を追跡するため調査員を迅速に派遣し、その調査結果を遅滞なく公表する権限を与えることだ。

swissinfo.ch: 今年の世界保健総会では何が期待されていたのでしょうか?その期待に応える結果となったのでしょうか。

アントワヌ・フラオー :パンデミックへの期待、WHOのガバナンスへの期待がありました。そして、パンデミック以外の問題、例えば糖尿病などの非感染性疾患にも期待が寄せられました。また、WHOは新型コロナウイルス感染症のパンデミック以外にも責務を負っていますが、そのWHOの通常業務に関する決議事項もありました。

アジェンダはかなり満杯で、重要性が非常に高いものでした。特に、ガバナンスの観点は重要でした。危機管理で見られた欠点を加盟国がWHOに押し付けるのではないかとの恐れがあったかもしれません。今回、WHOの内部改革は回避された印象を受けました。改革について言及されたのはわずかで、むしろWHAの決議の中で最も政治的な部分であるガバナンスの部分については、リベリアとニュージーランドの首相が議長を務める独立パネルが概要を説明したり、対処したり、提案したりしたことに焦点が当てられていました。

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swissinfo.ch: 疾病をより適切に封じ込めるため、WHOを強化する「パンデミック条約」に関する議論を11月に行うという決定についてはどう思いますか?

フラオー:核や化学軍縮条約の枠組みの中で、核や化学施設の査察が可能になる権限と同様のものがWHOに与えられることになります。これは、核や化学物質の脅威と同様に、健康への脅威をそれ自体が脅威として考慮されることを意味します。

これは非常に大きな前進ですが、一部の国はすぐに進展させることに非常に消極的だと思います。交渉はかなり緊迫することが予想されます。

私たちは皆、これら初期の事実調査団の失敗、あるいはWHOの初期ミッションでさえ、構成や日程、ミッションの範囲などについて長い交渉を行った末に非常に遅れて中国に派遣され、失敗に終わったことを見てきました。もしWHOが委任された権限を持ち、特に深刻な健康危機の際にそれを行使できれば、このような事態すべてを避けられるはずです。これが最初の点です。

私が思うに、重要な打開策につながらなかった2つ目の点は、WHOの予算です。WHOの予算、いわゆる加盟国の「分担金」は、少なくとも2倍必要です。パンデミックや、大きな社会的・経済的危機に見舞われている多くの国が、今日、拠出金を増やしたくないのは事実です。現在のWHOの総予算は、ジュネーブ大学病院(HUG)の予算に近いものです。194の加盟国に分配し、なおかつそれを高所得国に限定しても、WHOの資金調達を倍増させることは、大きな財政負担にはなりません。

WHOは現在、自発的な寄付、つまり国家からの補完的な寄付金に大きく依存しており、また非国家組織からの寄付にも依存しています。慈善団体はある意味でWHOの優先事項のアジェンダを設定していますが、それはWHO加盟国の役割であるべきです。そして、そのためには適切な資金が必要です。少なくとも予算は承認されていますが、今のところその改革は行われていません。これらはおそらくガバナンス改革とともにスタートする予算改革の始まりなのでしょう。このパンデミック条約は、WHOの資金調達システムを抜本的に見直すきっかけになるかもしれません。

swissinfo.ch: パンデミック条約が合意された場合、WHOの資金調達をさらに見直す必要があるのでしょうか?

フラオー:そうですね、交渉が必要だと思います。よりバランスのとれた予算、より独立した予算、より独立した組織の必要性に対する圧力、これらすべてを明確にする必要があります。今年のWHAでは、完全な形ではありませんでしたが、それでも事務局長は閉会のスピーチでそのことに言及できました。そして、その多少修正された予算案はかなり迅速に、遅くとも来年の総会までには提出されるはずです。

良いことは、パンデミック条約が次の年次総会に延期されたのではないことです。その間の時期に延期されたことで、来年5月の世界保健総会の頃には条約ができ、すべての国が署名できる状態になるかもしれません。

Prof. Antoine Flahault
ジュネーブ大学グローバル・ヘルス研究所のアントワヌ・フラオー所長 zvg

swissinfo.ch: 画期的とまではいかなくても、ポジティブな進展ですね。

フラオー: そうですね。今の国際保健規則(IHR)は、それほど拘束力がなく、要求も高くなかったので、議論されるまでに何年もかかりました。今回のパンデミックに比べればまだ小さな危機であった重症急性呼吸器症候群(SARS)危機から2年後の2005年に署名されました。この規則はすでに数年前から検討されており、加盟国はいくつかの点で合意できませんでした。このように国連の動きは決して早くはありませんが、緊急性は十分にあります。なぜなら、各国がこのパンデミックによる被害を認識し始めており、終息にはまだ長い時間がかかるからです。そして、多国間組織であるWHOに拡大された査察と調整の権限を与える条約を結ばなければ、極めて脆弱な状態が続くことになります。

もう1つ重要だと思ったことがあります。それは、世界各地にまたがる医療品の製造をWHOの支援の下にも置くという概念です。もちろん、製造そのものではなく、拠点の配置を調整することなどです。そうすればWHOの各地域で、より迅速かつ効率的にワクチンを製造できるようになるのです。

(編集:Dale Bechtel、インプット:上原亜紀子) 

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