スイス新型コロナ臨時議会、決まったことは?
スイス連邦臨時議会は、政府が新型コロナウイルス対策のため講じた総額570億フラン(約6兆円)の緊急融資を承認した。特に補償対象から漏れていたセクターのため、数百万フランが追加された。
スイス連邦議会が今週、再開した。新型コロナウイルスの流行により、春期議会を途中で打ち切ったが、その後臨時議会の開会を決定。4日からベルン市内のコンベンションセンターで政府の緊急措置を協議した。コンベンションセンターで議会が開かれたのは、連邦議事堂の広さがソーシャルディスタンシング(社会的距離)を取るのに十分でなかったからだ。
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連邦議会は、この例外的な状況下で政府が講じた緊急融資支援とパンデミック対策を検証した。感染症法に基づく「異常な事態」を宣言することで、行政府は議会の正式決定を挟まずに、次々に緊急措置を講じることが可能になった。議会はそれらの決定を、特に権力の乱用はなかったとみなしたようだ。議会が行政府と並行して緊急権を行使したり、政府の危機管理対策に大きな変更を強制したりする必要はなかったのだから。
国民議会(下院)のイザベル・モレ議長とシモネッタ・ソマルーガ連邦大統領は開会にあたり、こう呼びかけた。スイスが危機から脱し、より強くなるためには、行政府と立法府の建設的な対話が必要だ、と。このため、パンデミック対策について各閣僚にさまざまな質問は飛んだものの、議論は穏やかに進み、最終的には合意に達した。
1億7千万フラン
連邦議会は、提出された570億フラン(約6兆2千億円)の緊急融資措置を賛成多数で可決した。議論が白熱したのは、航空部門への約20億フランの融資措置についてだ。緑の党や左派政党は、航空会社に融資をするなら気候対策目標を達成させるべきだと主張した。ただ過半数の議員は、拘束力のない勧告を選んだ。
議員たちは、危機の影響を受けながらも「忘れられた存在」になっていたセクターをサポートするため、緊急融資に1億7000万フランを増額することを決めた。保育に6500万フラン、メディアに6500万フラン、観光には4000万フランを盛り込んだ。議会はまた、政府の助言に反し、新型コロナウイルスの感染者追跡アプリの使用には、法的根拠が必要だとする動議を可決した。
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しかし、議会の介入はそれだけではない。両院の議長、財務省の代表団、議会は数週間前から議論を続け、臨時議会開会前に多くの決定に影響を与えることができた。政府が、コロナウイルスの影響を直接的、間接的に受けているにかかわらず、全ての個人事業主を経済補償の対象に含めたこともその一例だ。
議会はまた、パンデミック(世界的大流行)に直面する途上国支援に向け、国際人道援助予算の増額を政府に要求した。政府はこれを受け先週、人道支援に4億フランを財政拠出すると発表した。この予算は赤十字国際委員会への無利子融資、国際通貨基金(IMF)の低所得国向け緊急融資制度に充てられる。
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議会委員会は今後も連邦内閣の決定に目を光らせ、ベルンのコンベンションセンターで予定されている6月の議会に向け作業を続ける。議会は新型コロナウイルスに関連する様々な事柄を協議することになるが、パンデミック到来でいったんは中止した議会を通常のプログラムに戻そうとしている。CO2法改正、多国籍企業の責任を追及するイニシアチブ(国民発議)、税制上の結婚差別をなくすイニシアチブなど、主要な案件は議論が止まっている。
(仏語からの翻訳・宇田薫)
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