12日、シンガポールで北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ米大統領による史上初の米朝会談が開かれた。スイスのメディアも会談を注意深く見守った。
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スイス公共放送(SRF)は「勝者は金氏」と題した社説で、金氏について「笑顔で握手を交わし、(トランプ氏の)肩をぽんとたたいたー。金氏は世界で最も権力のある人物に怖気づいてはいなかった」と報じた。
トランプ氏と金氏は会談後、共同声明を発表。米国が北朝鮮に対して「安全の保証を提供」する代わりに、北朝鮮が「完全な非核化に対する揺るがない約束」を再確認することで合意した。ただ具体的な道筋については言及がなかった。
SRFは「共同声明の署名の際、トランプ氏がジャーナリストの質問に答えると、金氏はいささか圧倒されたようだった。北朝鮮の指導者としてこれまで非社会主義国以外に出向いたことはなく、この会談が彼にとって新しい出来事だったからだ」と報じた。
ただ「トランプ氏が主にメディア対応をしたが、金氏にとっては会談は成功だった。テレビが金氏を世界で最も権力を持つ人物と対等の立場で流したのだ。これだけで金氏と金政権にとっては大きな収穫だった」などと伝えた。
「最善の結果を期待」
ドイツ語圏の日刊紙NZZも同様の論調を展開。「シンガポールでの首脳会談は、特に金正恩氏にとっては大成功だった」と評価したうえで「完璧に振り付けがなされたショーが終わり、今後は米朝間の信頼関係を築くという大変な作業が待っている」と報じた。
数カ月前はお互いを侮辱しあっていたトランプ氏と金氏が笑顔で握手を交わすー。この様子を世界中が驚きと安堵、不安を抱いて見守った。
NZZは「トランプ氏と金氏は、シンガポールでのショーにメリットをそれぞれ見出した。トランプ氏は、相手が望むなら金氏のような相手とでも交渉する姿勢があることを示した。金氏は彼の国が長年求めていたものを成し遂げた」と報じた。
ブーメラン
NZZは、会談が金氏に非常に有利だったとし、それが「極めて重要なポイント」だったと分析。「(会談が)うまく行かなかったとすれば、敗者はトランプ氏だ。攻撃的な外交政策だけでなく、政権の存続をかけた数々の人権被害によって国際的な制裁を受けている国の指導者と良好な関係にあることを、トランプ氏は笑顔で強調したのだから」と振り返った。
NZZはまた「北朝鮮が(何の責務も果たさずに)再び経済援助を享受するようなことがあれば、シンガポールの首脳会談は、ブーメランとなってトランプ氏の顔に直撃するだろう」と伝えている。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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