ミナレット建設反対イニシアチブ
7月8日、イスラム教徒のモスクに付属するミナレット ( 塔 ) の建設に反対するイニシアチブを支持する署名が、国民投票に問うために必要な件数を上回る11万5000件集まり、連邦政府に提出された。
一方政府は、イニシアチブに対し異例の早さで反対表明を行った。イニシアチブは国民党とスイス民主党が中心となって「宗教および政治権力と支配要求のシンボルであるミナレット」の建設の禁止を要求している。
社会のイスラム化
イニシアチブを発足したグループは「われわれの社会のイスラム化」を阻止することが目的であるとことを理由として挙げている。ミナレットは宗教的象徴ではなく、政治的権力の要求であると国民党 ( SVP/UDC ) の国民議会議員ジャスミン・フッター氏は言う。同党のウーリッヒ・シューラー氏も宗教の自由は尊重するが、イスラム教徒はミナレットがないモスクでも十分宗教的活動はできると主張し
「たとえば、モスクが禁止されれば宗教の自由が侵されたと言えるだろう」
との意見だ。
政府は反対
政府はこのイニシアチブに対し、何度か反対意見を表明してきた。署名が政府に届いたこの日も、有権者に対しても連邦議会の場でも必ず反対するようにと勧告すると発表した。一方、イニシアチブ発足グループは、イニシアチブは政党や政治関連機関が関わっているということは一切なく、個々の個人が署名を集めて発足したものであると説明し、イニシアチブの主旨はミナレット建設に反対するものであり、宗教の自由を奪うものではないと強調している。
政府がイニシアチブ発足の早期で議会を通し意見表明を行ったのは異例のことだ。これは、国際的な圧力に政府がさらされていることが背景にある。
反イスラムの動き
今年3月、ダッカで開催されたイスラム会議 ( OIC ) では、反イスラムの動きが目立ってきたという議論がされた。この場でスイスのミナレット建設禁止を求めるイニシアチブの署名運動が挙げられ、こうした動きは「不安」であるとも言及された。さらに、スイスのイニシアチブは反イスラム的漫画や反イスラム経典的なショートアニメなどと同等であるといわれた。
1月中旬にはカルミ・レ外相がOICのエクメレディン・イフサンオウル事務局長とマドリードで会見し、スイス政府はイニシアチブと支持しないと確約した。それはすでにこの時点で、イニシアチブは欧州安保協力機構 ( OSCE ) や国連 ( UN ) から非難されていたからだ。
人権に反する
イニシアチブが実際に国民投票で問われるかどうかは不確定だ。
「イニシアチブにははっきりと、いかなる場所でも、いかなる大きさでも、どういった機能を持つものであってもミナレットの建設を禁止するとあり、宗教の自由を大きく侵害するものだ」
とチューリヒ大学の人権専門学者ダニエル・トューラー氏は語る。
イニシアチブを要求する署名が政府に届けられた後、国民議会と全州議会はこのイニシアチブの有効性を議論することになる。議会では人権とスイス憲法に違反しないかどうかが観点となる。
swissinfo、外電
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