スイスの視点を10言語で

ワクチン効かない変異株の出現「避けられない」 スイス研究者

Vaccination
スイスの人口の半分強が新型コロナウイルスのワクチンを2回接種済みだ Keystone / Christian Merz

スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の研究者は、新型コロナウイルスがさらに変異し、感染力が強くワクチンも効かない変異株が出現すると警告する。

バーゼルにあるETHZ生物システム科学工学部のサイ・レディ外部リンク准教授(免疫学)は大衆紙ブリック紙日曜版外部リンクに「ワクチンに頼れなくなる新しい変異株が出てくる可能性が非常に高い」と語った。そうした変異株は間違いなくいずれスイスにも入り込むとの見方を示した。

「そのため今後数年間は新しい変異株に対応し続けるため、複数のワクチンを準備しなければならない」

レディ氏は南アフリカで最初に発見されたベータ株やブラジルのガンマ株は突然変異により抗体を部分的に回避できると指摘。一方、インドのデルタ株は伝染力がはるかに高いものの、そうした突然変異は生じていない。

だがそれぞれの特徴が組み合わさることは「避けられない」と指摘。「ベータ株やガンマ株の伝染力が高くなったり、デルタ株が突然変異を起こしたりすれば、パンデミック(世界的流行)は新たな局面を迎える。これは来年の大きな問題になるだろう。COVID-22は現在の状況よりさらに深刻になりうる」と述べた。

おすすめの記事
Porträt

おすすめの記事

「感染拡大を抑えれば、ウイルスの変異は防げる」

このコンテンツが公開されたのは、 ウイルスの変異株は本当に怖い存在なのか?ワクチンの効果は?スイス・ベルンの社会・予防医学研究所でゲノム疫学を研究するエマ・ホドクロフト氏に話を聞いた。

もっと読む 「感染拡大を抑えれば、ウイルスの変異は防げる」

感染者の増加

スイスでは6月末以降、新規感染者が増加している。入院患者も増えているが、死亡者は低水準を保っている。ワクチン接種率は人口の5割を超えたばかりだ。

感染が増えたのは主にデルタ株で、ワクチンを接種していない10~29歳の若年層を中心に広がっている。連邦科学タスクフォースを率いるタンヤ・シュタッドラー氏は先週、スイス公共放送(SRF)とのインタビューで「非常に難しい状況にある」と述べた。

前出のレディ氏は、コロナの流行がこの秋から冬にかけて昨秋並みの深刻さになるとの予測を示した。第2波が襲来した昨秋は、1日の感染者数が一時1万人を超えた。

同氏は、「ワクチン接種率が格段に上がらない限り、厳しい制限措置を設けることでしか最悪の事態は防げない」と言う。最新の研究によると、デルタ株はウイルス量が非常に多いため、ワクチン未接種の人がウイルスを保有すると、たくさんの人に感染させる「スーパースプレッダー」になる可能性があることが分かったという。

「12歳未満の子供はワクチンを接種できないため、スーパースプレッダーになる可能性が高い集団だといえる」

またデルタ株にワクチンが効かないケースがあるのは、ウイルス量の多さが背景にあると指摘。「これには抗体を多く持つことで対抗しなければならない。まさに3回目のワクチンが効果的だ」と述べた。

おすすめの記事
ワクチン

おすすめの記事

スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スイス中銀

おすすめの記事

スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が3日発表した2024年度決算確報は、807億フラン(約13.5兆円)の黒字だった。速報時点の見込み通り、連邦政府・州に30億フランを配当する。

もっと読む スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算
スイス中銀のマルティン・シュレーゲル総裁

おすすめの記事

スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のマルティン・シュレーゲル総裁はスイス紙のインタビューで、中銀の準備金にビットコインを追加する国民投票案に反対する考えを示した。暗号資産(仮想通貨)は資産として多くの問題を抱えていると指摘した。

もっと読む スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対
ドナルド・トランプ米大統領

おすすめの記事

スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は3日の国連人権理事会(HRC、本部・ジュネーブ)で、ドナルド・トランプ米大統領が連邦・州レベルの死刑制度を強化する大統領令に署名したことを「深く懸念している」と表明した。

もっと読む スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で
株価ボード

おすすめの記事

スイス株式相場、初めて1万3000の大台に

このコンテンツが公開されたのは、 スイス株式市場で24日、代表指標のSMIが一時1万3000の大台を超え、史上最高値を記録した。前日のドイツ連邦議会選挙で保守派が勝利したことを受け、安心感が広がった。

もっと読む スイス株式相場、初めて1万3000の大台に
ゼンティス山の山岳ケーブルカーとスイス国旗

おすすめの記事

ゼンティス山の山岳ケーブルカー、改修工事へ

このコンテンツが公開されたのは、 東スイスの有名観光地ゼンティス山の山岳ケーブルカー「Säntisbahn」運営会社は24日、強風に対する安定性向上を目的にケーブルカー施設の全面改修工事に着手すると発表した。

もっと読む ゼンティス山の山岳ケーブルカー、改修工事へ
牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部