スイスの視点を10言語で

光化学スモッグ警報時、一部車の走行禁止 ジュネーブ

交通
光化学スモッグ警報が出た日は、環境性能の悪い車は通行不能となる Salvatore Di Nolfi / Keystone

大気汚染とそれに伴う健康被害を減らすため、ジュネーブ州政府は国内で初めて、光化学スモッグ警報発令時に環境性能の悪い車両の市内走行を禁止する措置を承認した。

2020年1月15日に施行する。国内、国外のナンバープレートの車両すべてが対象。ドイツとフランスでも類似の措置を取っているところがある。

具体的には?

ジュネーブ市内中心部を走行する車両は、環境性能、つまり汚染の可能性を示すステッカーを掲示しなければならない。ステッカーは6段階に分けられ、最もエコでないものはグレーで、電気自動車や水素自動車はグリーンだ。フランスの認証システム「Crit’Air外部リンク」を取り入れた。

ジュネーブ市内で光化学スモッグ警報が出ると、グレーのステッカーの車両は午前6時~午後10時の間、市内中心部の走行が禁止される。警報が続く場合、次の段階のステッカーの車に禁止範囲が拡大される。

ちず
対象となるエリア Canton Geneva

警報発令はメディアでも放送され、市内にサインが設置される。これを無視し、市内中心部に乗り入れたドライバーは、500フラン(約5万5千円)の罰金が科せられる可能性がある。ステッカーの料金は1枚5フラン。来月からガソリンスタンド、州の自動車局などで購入できる。

障害者用車両、パトカー、消防車、外交官車両、タクシー、バンは規制の対象外となる。

郊​​外から来る車両も対象?

ジュネーブ州以外の地域から来るすべての車も対象になる。業務で使用する車両には2年間の移行期間内に規制に準拠し、州が公表した外部リンクステッカーを掲示しなければならない。その他の自家用車は、2020年1月15日までにステッカーを表示しなければならない。罰金が適用されるのは来年4月1日から。

ステッカー
ステッカー Canton Geneva

1年のうち何日禁止されそう?

過去の気象統計によると、警報が発令される可能性が高いのは7~8月の計2~10日にとどまると当局はみている。光化学スモッグがひどい日は公共交通機関を無料とし、周辺高速道路の制限速度を時速80キロメートルに引き下げる。ジュネーブ州議会のアントニオ・ホジャ―議長は 「経済的自由と健康な空気を吸う権利との間の妥協案を採択した」と述べた。

ジュネーブの光化学スモッグの状況は他の都市と比較してどう?

Iスイスでは、大気汚染が原因で年間4千人以上が早死にしているという統計がある。ジュネーブは人口密度が国内の他都市よりはるかに高い外部リンクため、そうした意味でも注目に値する。しかし、世界各国の大気汚染を調べた世界保健機関の調査外部リンクでは、ジュネーブを含むスイスの都市の空気は他国よりも比較的きれいだ。

反対はあるのか?

ジュネーブは、国内で初めてこのようなステッカーシステムを導入した州であり、連邦環境・運輸省外部リンクからも承認を得たとしている。ドリス・ロイハルト前運輸相は2018年、コンプライアンスのために、そのようなシステムは「連邦レベルでのみ」考えられると述べていた。

スイス・ツーリングクラブ(TCS)のジュネーブ支部は、この新システムに異議を申し立てるという。同支部のフランソワ・メンブレ支部長はジュネーブ州の日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブ紙外部リンクの取材に「これらの(地方)政府の決定は覆される可能性がある。州裁判所の意見外部リンクを自信を持って待っているところだ」と述べた。

連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の交通の専門家マティアス・フィンガーさんはスイスの公共ラジオ外部リンク(SRF)に対し、ジュネーブ州の措置は「その場しのぎ」などと批判。公共交通機関の整備拡張の方がはるかに重要だと訴えた。

(英語からの翻訳・宇田薫)

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部