スイスの視点を10言語で

医療保険料、14年ぶりに減額

Man in hospital bed
スイスは国内総生産(GDP)の12%を医療に費やす Keystone / Alessandro Della Valle

スイス連邦保健庁が28日発表した2022年の医療保険料は前年比0.2%低い315.30フラン(約3万8千円)となった。減少は14年ぶり。

スイスの基礎医療保険は強制加入だが、公的保険はなく、全国民がいずれかの民間保険に入る。各保険会社は翌年適用する保険料について、10月末までに被保険者に通知する必要がある。被保険者は11月末までなら保険を解約・変更できる。

22年の保険料外部リンクは全国平均で月315.30フラン。金額は州ごとに異なり、増減は2.1%の減少から1.4%増加までばらつきがある。

全国平均が減少するのは08年以来。過去10年間は平均して年2.4%増加していた。

アラン・ベルセ内務相は28日の記者会見で「医療保険料の減少はスイス国民にとって非常に良いニュースだ」と述べた。

準備金を取り崩し

保険料引き下げの背景の1つには、医療保険会社がこれまで積み立ててきた準備金を取り崩していることがある。

保健庁は28日発表した声明で「連邦閣僚が保険会社に準備金の取り崩しを奨励するために導入した措置は効果があったことが分かった」と強調した。

今年6月に発効した改正法で、保険会社が自主的に準備金を取り崩しやすくなったという。

「準備金が超過しないように保険料をできるだけ厳密に算出しやすくなった」とも説明した。

保健庁は22年に向けて、準備金を自主的に3億8千万フラン減らすことを承認した。推定124億フランに積みあがっている準備金総額に比べると微々たる額だ。

保健庁によると、「連邦閣僚は、今後数年は保険会社のソルベンシー(財務健全性)を傷つけることなく準備金の取り崩しを継続できると考えている。また、それが必要だとも考えている」。

膨らむ医療費

医療保険業界団体「サンテスイス(santésuisse)」は保険料の減額を評価する一方、保険料の高騰を抑えるためには医療費を削減する必要があると警告した。

スイスの高額な医療費は大きな課題になっている。人口動態の変化や技術の進歩により、今後も医療費の増加が必至だ。

スイスの医療制度は全般的に優れていることで知られているが、世界で最も高額な制度の1つでもある。スイスは国内総生産(GDP)の約12%を医療費に費やしている。

おすすめの記事
財布の写真

おすすめの記事

スイスの医療保険制度、貧困の一因か?

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの医療保険制度は、世界で最も優れたものの一つとして知られている。だが、 医療問題が多くの国で議論される現代において、スイスの同制度は低所得層にも高所得者にも適したものなのだろうか?

もっと読む スイスの医療保険制度、貧困の一因か?


最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部