スイスの2019年大統領を務めるウエリ・マウラー(68)は一体どんな人物なのか?
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元会計士のマウラー氏は16年から財務相を務めていた。2019年、7人の閣僚が1年ずつ輪番で担う大統領職の当番となった。
大統領職は象徴的な意味合いが強い。今年はマウラー氏が「同輩中の首席」であることを意味し、閣議の議長を務める。閣僚の意見が割れたときには最終決定権を持つ。
マウラー氏は反欧州連合(反EU)と反移民を掲げるスイス国民党(SVP)の党員。1978年にチューリヒ州ヒンヴィルの町参事会議員に選出されたのが政治キャリアの始まりだ。
その5年後、チューリヒ州議会議員に躍進。91年には国民議会(下院)に当選し国政に進出した。
ブロッハー氏の右腕
マウラー氏は1996年から12年に渡って国民党の党首に座し、その間に党はスイスの第1党に上りつめた。ただその立役者は国民党のドン、クリストフ・ブロッハー氏とされている。マウラー氏はブロッハー氏の「手下」としてテレビなどに登場することが多かった。
09年に閣僚に選出されたため党首の座を降り、国防相に就いた。国防相としての最大の敗北は、14年に新しい戦闘機の購入計画が国民投票で否決されたことだろう。
財務相に転じてからの方が、マウラー氏に対する政治評論家からの評価は高い。連邦決算で巨額の黒字が出ると、財政の逼迫を誇張していると批判されるものの、財政を健全にコントロールしていることには一定の評判がある。
金融業界の潮流変化もしっかり掴んでいる。フィンテックやブロックチェーン、仮想通貨といった新興勢力を呼び込むための規制改革にも前向きだ。
マウラー氏の2018年のクリスマスカードでも、デジタル化がどのように最優先課題に上がって来たかを伝えようとしている。赤い背景に1サンチーム(100分の1フラン)硬貨が描かれ、QRコードを読み込むと財務相としてのメッセージが表示される。
彼の閣僚としての行動に、国民党の方針が影響を及ぼしているのかどうかはわからない。閣僚は党から距離を置くことが義務付けられており、内閣は全員一致が求められるからだ。だがマウラー氏を含め4人が右派政党の所属で、残り3人が左派の社会民主党である今の内閣は間違いなく右に寄っているといえる。
マウラー氏がいつまで閣僚に留まるかは不明だ。本人が辞任宣言しない限り、閣僚を選出する議会が現職を再任しないことは極めて異例なためだ。
昨年12月に閣僚再任を受けて行ったスピーチで、マウラー氏は「政治は楽しくなければいけないし、楽しまなければならない」と力説した。そして軍の自転車部隊を率いた国防相時代から、自転車通勤を今も続けていることを明らかにした。
2018年12月5日、スイス連邦議会はウエリ・マウラー氏を輪番制の大統領に任じることを決めた。大統領職は7人の閣僚が順番に担当する慣習だが、それでも上下両院から正式に指名されることが必要だ。マウラー氏が得た209票中201票という指名票は、1989年のジャン・パスカル・ドラミュラ氏以来の高得点だ。
今年の年始スピーチで、マウラー氏はオフィスにある二つのものを手に、古いものと新しいものの架け橋が必要だと語った。一つは執務室に置かれた木彫りの牛で、スイスの起源と価値を象徴する伝統工芸品だ。もう一つはスマートフォンで、社会の急速な変化を象徴する。便利だが、ともすれば現実の世界や人間関係との繋がりが分断されかねない。マウラー氏は「だからこそ過去と未来を結びつけることが重要だ」と話した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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