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「殺人ロボット」への対応は?

殺人ロボット
LAWS(自律型致死兵器システム)の一例。通称「殺人ロボット」 darpa.mil

「殺人ロボット」と呼ばれる自律型致死兵器システム(LAWS)に関する国際会議がジュネーブの国連欧州本部で開かれている。軍縮推進団体などLAWSの反対派は、自律型兵器の今後を協議するこの会議を「慎重だが楽観的に」注視する。

 9日から、120カ国超の国連加盟国がパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)の専門家会議に集まり、反対派が「殺人ロボット」とけなすLAWSの今後について協議している。

 2014年以降、特定通常兵器使用禁止制限条約外部リンク(CCW)の枠組みで、外交官、軍縮の専門家、市民団体が人道、法律、管理、技術などの面からLAWSの課題を話し合ってきた。今回はその6回目の会合となる。

 昨年の報告書外部リンクでは、ほとんどの加盟国が殺人ロボットへの懸念が高まる現状について対策を講じるべきだという認識で一致。LAWSの開発・発展の度合いに合わせて国際法を適応させていくべきだと口を揃える。だが具体的な方法については意見が異なり、「殺人ロボット」の明確な定義や、殺人兵器システムに対する「人間による制御」をどうするかについては、合意がまだない。

 複数の加盟国がLAWSの購入、開発はしないと明言し、22カ国は実戦配備される前に禁止する案を支持している。しかし、LAWS反対派は、米国、中国、イスラエル、韓国、ロシア、英国が軍用ドローンや人間の関与を減らした自律型兵器システムの開発、利用を進めていると訴える。

スイスの姿勢

スイスは事前の禁止措置については懐疑的だ。一方で実情を踏まえて、必要に応じて規制を設け、国際法を侵害するおそれのあるLAWSの利用を阻止する案には賛同する。昨年、スイスは「自律型兵器システムにおけるコンプライアンス面からのアプローチ外部リンク」と題した報告書を提出。この報告書で、改めて国際法の重要性に触れた。

スイスのサブリナ・ダラフィオ国連軍縮大使は、スイス公共放送(SRF)に「人命に関わる重大な決断を機械に託すのか否か、私たちが決めなければならない」と語った。どこまでの自律を許すのか、その線引きについても共通の合意が必要だとして、「許容できるとするなら、絶対に巻き添え被害や民間人への被害を生まない兵器などだろう」と述べた。

一方、シャンタル・ガレー外部リンク(社会民主党)、ビート・フラッハ外部リンク(自由緑の党)両国民議会議員は昨年、国際法によるLAWS禁止への働きかけを政府に求める動議をそれぞれ提出したが、連邦内閣はいずれも反対を表明した。ディディエ・ブルカルテール外相(当時)は議会に対し、禁止措置を講じる前に、CCWの枠組みで「全ての課題がはっきりするはずだ」と述べた。

 

「正しい方向」

 9日の会議を前に、LAWS反対派は、殺人ロボットについての協議が正しい方向へ進んでいるとの見方を示した。

 兵器開発に反対する非政府組織(NGO)「Article36外部リンク」スイス支部のマヤ・ブレーム氏は「技術屋の議論から確実に脱し、政治的な議論に向かっている」と指摘する。

 国際的な反LAWS連合「Campaign To Stop Killer Robots外部リンク(殺人ロボット阻止キャンペーン)」のコーディネーターで米ヒューマン・ライツ・ウォッチのマリー・ウェアラム氏は、活動家たちは殺人ロボットに関するプロセスを「慎重だが楽観的に」見ていると述べた。キャンペーンに所属する団体の中には、自身のロビー活動によってクラスター爆弾や地雷を禁じる国際的な取り組みを実現させたグループもある。

 ウェアラム氏は「私たちのキャンペーンの観点から見ると、戦場で機械が人命を奪うことを許すことは、越えてはならないモラルの境界線を大幅に逸脱する。多くの国々が同じ懸念を共有していると思う」と話す。

 今週の会議では、LAWSに関する何らかの公式決定が出る予定はない。8月の会合も同様だ。今年は一つの提案を提起し、11月21~23日の会合で承認することを目指しているという。

 一方、LAWS反対派は、きちんとした政治的意志と組織的な取り組みによって、交渉次第では2019年末までに殺人マシーンの開発、製造、利用を禁じる国際条約の締結が可能だと話す。

リーダーシップは? 

 時は刻々と過ぎていく。ウェアラム氏らは、CCWが頓挫した場合に備えて他の外交手段も模索するべきだと指摘する。ウェアラム氏は「今年のCCWの枠組みの外部で、このプロセスは話題に上らなかった。政府の足取りが遅れれば遅れるほど、反対派からの圧力は強まる」と警告する。

 しかし、そのプロセスにはリーダー的国家の存在が必要となりそうだ。例えば1997年の対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)におけるカナダ、2008年のクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)のノルウェーなどだ。

 ウェアラム氏は「今回、リーダーシップを取るのは誰なのか。なぜスイスは行動を起こさないのか」といぶかる。スイスにはこの問題に取り組んでいる連邦議会議員がおり、またスイスが国際人道法外部リンクの妥当性について問題提起するなど熱心に外交努力を続けていると強調。「原則に沿ったやり方で国際問題を解決しようとする上で、スイスは良いプレーヤーになれると思う。多国間協調主義の下で複数の国を率いる場合、国のサイズは関係ない」

(英語からの翻訳・宇田薫)

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