スイスの視点を10言語で

ILO総会開幕 職場のセクハラ、男女の賃金格差是正が焦点

アラン・ベルセ内務相
ILO総会で開会の演説を行ったスイスのアラン・ベルセ内務相 © Keystone / Laurent Gillieron

国際労働機関外部リンク(ILO、本部ジュネーブ)の年次総会が10日、スイス・ジュネーブで始まった。スイスのアラン・ベルセ連邦内務相は開会演説で、加盟国が男女の賃金格差是正に向け更なる努力を講じるよう呼び掛けた。総会では職場でのセクハラや暴力を禁止する初めての国際条約が制定される見通しだ。

14日には、全国各地で男女の賃金格差是正を求める大規模なストライキが行われる予定。

ベルセ内務相は、労働組合と使用者、政府の3者代表が労働の国際基準を決めるILOの構造に触れ「仕事の将来のためには、強力な多国間主義に代わるものはない」と述べた。

ベルセ氏はまた、デジタル時代における働き方の変化にも言及し「各国間の公正な競争を確保するためには、共通の基準がこれまで以上に必要だ」と述べた。総会では、デジタル時代の仕事のあり方を規定した「100周年宣言」が採択される見通し。

ベルセ氏はさらに、女性に「公平で適正な賃金」を保証する必要性を強調。ILOやUN Women外部リンクなどで作る「平等賃金のための国際連合体外部リンク(EPIC)」への参加を呼び掛けた。

スイス連邦議会は昨年、100人以上の従業員を持つ企業に対し、賃金の報告を義務付ける改正男女平等法を可決。最新の統計によると、スイスの男女間の賃金格差はここ最近、横ばいだ。2012年は男性の賃金が女性よりも19.5%高かったのに対し、2016年は19.6%だった。

1919年創立のILOは、国連の中で最も古い特別機関。これまで労働基準に関する190本以上の条約と200本以上の勧告を採択した。

ブラックリスト

おすすめの記事
タイ・バンコク市内の建築現場で待機するカンボジア人建設作業員

おすすめの記事

ILO創立100周年記念総会 仕事をとりまく未来に必要なものとは

このコンテンツが公開されたのは、 未来の仕事像とは―?スイス・ジュネーブに本部を置く国際労働機関(ILO)は、創立100周年を記念する今年の年次総会で、職場での暴力やハラスメントから労働者を守るための条約の採択を目指す。

もっと読む ILO創立100周年記念総会 仕事をとりまく未来に必要なものとは

一方、ILOは5月、特定の労働条約に違反したとしてスイスをILOのブラックリストに加えた。 ILOは、労働組合で活動する被雇用者の権利が十分に保護されていないという。

法律や団体協約に適合した合法的な労働組合活動に参加し、それを理由に解雇されることはスイスの法律で禁じられている。しかしILOは、不当解雇の慰謝料が賃金の最大6カ月分とする措置が不十分だと指摘する。現在ブラックリストには約40カ国が載っているが、総会期間中に25カ国に減る見通し。

ILOは、上級管理職の男女間賃金格差を調べた調査外部リンクで、スイスはジェンダーギャップが最も大きい国の1つと位置付けた。欧州、中央アジアで女性管理職の方が男性管理職より賃金が低いのはイタリア、カザフスタン、イスラエルだけだった。

おすすめの記事
タイ・バンコク市内の建築現場で待機するカンボジア人建設作業員

おすすめの記事

ILO創立100周年記念総会 仕事をとりまく未来に必要なものとは

このコンテンツが公開されたのは、 未来の仕事像とは―?スイス・ジュネーブに本部を置く国際労働機関(ILO)は、創立100周年を記念する今年の年次総会で、職場での暴力やハラスメントから労働者を守るための条約の採択を目指す。

もっと読む ILO創立100周年記念総会 仕事をとりまく未来に必要なものとは


人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

ジョン・レノンとオノ・ヨーコさん

おすすめの記事

ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定

このコンテンツが公開されたのは、 ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。

もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
スイス証券取引所を運営するSIX本社

おすすめの記事

スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。

もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
野菜

おすすめの記事

2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。

もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
研究所の外観

おすすめの記事

CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える

このコンテンツが公開されたのは、 今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。

もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
クラスの風景

おすすめの記事

女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。

もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
雪山で写真を撮る観光客

おすすめの記事

11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。

もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
巨大な豆腐を切る人

おすすめの記事

スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。

もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
草原のツルの群れ

おすすめの記事

スイスを縦断するツルが過去最多

このコンテンツが公開されたのは、 スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。

もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
手

おすすめの記事

「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。

もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部