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外国人の不動産購入に対する規制の撤廃要求が再燃

EU国籍のない外国人の不動産購入には厳しい制限がある Keystone

3月11日、別荘の建設を制限する法案「無制限の別荘建設に終わりを」が可決された。この結果、外国人の不動産購入に対する規制撤廃を求める声が高まり始めた。

この規制撤廃をめぐり、政党間で激しい議論が繰り広げられている。なぜなら、環境保護を目的としたこの法案をどう明文化するべきか、専門家の間でまだ意見が分かれており、解釈の余地があるためだ。

再検討の時期が到来

 3月11日の国民投票で、別荘を各市町村の全住宅戸数の2割以下に制限する法案「無制限の別荘建設に終わりを」が小差で可決され、山岳部と観光業界に激震が走った。これを受け、外国人の不動産購入に対する規制撤廃要求が再燃している。

 スイス国外に居住する外国人による別荘の購入は、法律によって年間1500戸に制限されている。また購入には特別の許可が必要なほか複数の条件が課されているうえ、購入可能な別荘は州政府が休暇用リゾート地と指定した場所にある物件のみ。さらに州と地方自治体も、別荘の売買は現時点で外国人が所有している物件のみに制限するなど独自の規制を設けている。

 4年前に政府はこれらの規制の撤廃を提案したが、議会はこれを否決した。そのため政治家、特に中道右派と観光開発の促進や過疎化の阻止を望む山岳部を代表する政治家は、再検討の時期が来たと呼びかけ規制を撤廃すべきだと主張している。

 しかし不動産市場を保護しないまま外国資本を呼び込むのはリスクが高いと専門家が指摘していることから、左右両派に強硬な反対派が存在する。

 「規制撤廃は、チューリヒやジュネーブのような都市や、ルツェルンやツークのような小さいが国際的にも知られた町の不動産価格の上昇を招く可能性がある」とシンクタンクのアヴニール・スイス(Avenir Suisse)の不動産専門家ダニエル・ミュラー・イェンチュ氏は分析する。

 「移民の増加と低金利によって不動産価格が上昇したところにまたそうした要因が加わることになるためだ」

 また、今回の法案可決を受け、有名な観光地の不動産価格も上昇する可能性があるとミュラー・イェンチュ氏は付け加えた。

税金による貢献

 規制撤廃案以外にも、不動産の売買取引に高率の税を課して、税収を公共インフラの建設プロジェクトのために使うという提案もある。

 社会民主党(SP/PS)の国会議員ジャクリーヌ・バドラン氏は、不動産購入の条件として最低5年間の居住を義務付けることを提案した。

 この提案は外国人排斥に当たるとの声が挙がったが、バドラン氏は国籍にかかわらず、購入希望者全員に同じ規制を適用すべきだと批判を退けた。「目的は、不動産価格の上昇、特に都市部の高騰を防止することだ」

 地域開発計画を専門とするエコノミストのハンス・キスリング氏もまた「都市の(不動産価格の上昇を抑える)ためには、外国人の不動産購入に対する規制を維持することが重要だ」と主張する。

 キスリング氏は、チューリヒの日刊紙「ターゲス・アンツァイガー(Tages-Anzeiger)」に対し、「規制撤廃によって、世界中の不動産市場の好機を狙う外国人投資家がスイスに押し掛ける恐れがある」と語った。

直ちに適用

 別荘建設制限法案の明文化、法律の適用範囲をめぐり推進派と反対派が議論を戦わせている一方、ドリス・ロイタルト環境相は政府の立場を再度メディアに表明した。「望むと望まざるとにかかわらず、この法案は(国民投票の可決をもって)直ちに適用される」

 別荘建設の申請が、国民投票が行われた3月11日までに提出された場合には、今回の規制は適用されないとロイタルト環境相は述べた。だが、申請が3月11日から具体的な法制化プロセスが終了する12月31日までの間に提出される場合は制限の対象とするよう全国各地へ呼びかけた。

 さらに「難しいケースは、裁判所が決定することになる」と述べた。

 全住宅戸数の2割以上の別荘がすでに存在する地方自治体には、2013年から建設許可が下りなくなる。

 連邦、州、地方自治体当局と別荘制限法案推進委員会で構成される作業部会は、連邦議会が最終決定をするまでの移行期間に適用されるガイドラインを作成するよう委託された。作業は今年の秋までに終わる予定だ。

現状維持

 連邦司法警察省(EJPD/DFJP)によると、3月11日の国民投票の結果は、外国人の不動産所有権にすぐさま影響が出るわけではない。

 現行の規制に従えば、外国人の不動産購入は現在も可能だ。現在、年間最高1500戸の購入申請が許可されている。

 統計によると、過去数年間に制限戸数の7割以上を占める申請があり、中には上限数に達した地方自治体もあった。2010年の申請は、ヴァレー/ヴァリス州、ヴォー州、ティチーノ州の別荘建設が大半を占めた。

 「原則として規制の対象になるのは、スイス国外に住む外国人と居住許可証のない外国人だ。しかし欧州連合(EU)および欧州自由貿易連合(EFTA)の加盟国の国民は後者の中には入らない」と広報担当官のイングリッド・リザー氏は説明する。

 購入する不動産を別荘として使用するか、または住居として使用するかは法的に意味はない。「民法に従えば、重要なのは購入者がどこで一番多く時間を過ごすかという点だけだ」

スイスの不動産の購入を希望する外国人(個人および法人)は、まずその不動産のある州に購入許可を申請しなければならない。外国人の購入許可件数は厳しく制限されている。

欧州連合(EU)、欧州自由貿易連合(EFTA)の加盟国の国民、C滞在許可証を持つスイス国内の居住者は、この件に関しては「外国人」とみなされない。

外国人が不動産の売買および賃貸借以外のビジネスを目的として不動産を購入する場合は規制の対象外となる。外国人が居住のために不動産を購入する場合、その不動産を本拠地として居住しなくてはならない。

スイスの不動産市場が外国からの不動産登記でゆがめられないよう、1961年に外国人による不動産の購入制限が施行された。

この規制は1983年に法制化され、後に外国人に対してより厳しい内容の法律に改正された。政府は2008年に撤廃案を議会に提出したが否決された。

(英語からの翻訳・編集、笠原浩美)

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