外国人嫌いの政党に元外国人続々入党
イスラム教寺院の尖塔ミナレット禁止や外国人犯罪者の海外追放の提案など、外国人嫌いの傾向が強いといわれる右派国民党に移民の第2世代などが続々入党する現象が起きている。
「アレクサンダー」、「シャヒド」など明らかに外国人と分かる名前が国民党のリストに連なる。「統計的数字はないが、元外国人の入党は急増している」と同党のシルビア・ベアー氏は言う。
党が大切にする価値に賛同
「20 年間にわたりスイス国内の党大会に出席しているが、明らかに外国人と分かる若者の出席がここ数年増えている。すでに党員であったり党の意見に賛同したりと参加の理由はさまざまだが、とにかくこの現象は新しい」
とベアー氏は続ける。
副党首イヴァン・ペラン氏もベアー氏に同意し、この現象はドイツ語圏の方がフランス語圏よりさらに顕著だと付け足しながら
「移民の第2世代の国民党( SVP/UDC )入党を促すために何か特別なことをやったわけではない。彼らの方から党に接近してきた。ほかの党と我が党との違いや、我が党が大切にする価値に彼らが賛同した結果だ」
と分析する。
国民党は党が提出したイニシアチブ「外国人犯罪者の海外追放」を積極的に支持しているが、それについて例えば養子縁組でスイスに来たインド人、シャンキー・ヴィーザー氏はブログにこう書いている。
「すべての外国人犯罪者は海外に追放されるべきだ。こうした犯罪者に対しもっと厳格な法律をわれわれは必要としている」
「ほかのスイス人と同様、元外国出身のスイス人は、スイスの法規や受け継がれてきたスイスの価値がこれからも存続されることを望んでいる。この価値のために外国からスイスに移住してきた人もいるからだ」
とフリブール州の国民党支部「ラック ( Lac ) 」の会長、ダニエル・シャー氏は話す。同支部には、人口600人の小村ガルミッツ ( Garumiz ) の行政を担当する元インド人シャヒッド・コウダリー議員もメンバーだ。
社会民主党のエリート主義
社会の少数派やその諸現象を専門とする社会学者、クルト・イムホフ氏は、 ( 国民党という ) 右派ポピュリスムの人気に関し
「社会党は愛国精神という主題に対して多くの努力を行う必要がある。スイスの伝統に価値を置く移民第2世代の若者が、なぜ国民党に魅かれるかという理由は、まさに国民党がこの愛国精神をうまく使っているからだ」
と解説する。
一方チューリヒ大学の社会学者ウルス・モイリ氏は
「国民党が使う言葉やそのダイナミズム、さらにあまり複雑ではない宣伝方法は政治に興味を持つ移民の若者に受ける。ところがこうした層の若者を従来惹きつけてきた社会民主党 ( SP/PS ) が、あまりに厳格でエリート主義に陥っていることが問題だ」
と話す。
新興階級と同義の右派政党
モイリ氏によれば、旧ユーゴなど東欧出身の若者は伝統的価値や右派の権威主義的な口調などに、より惹かれやすいという。ところがチューリヒ 州の国民党議員アレクサンダー・ナウモビッチ氏はこの意見に対し
「まったくばかげた分析だ。わたしはもし両親がスイスに移民として来た時代に、祖国で政党に参加するとしたら、それは間違いなく社会民主党だった」
と反論する。
また社会民主党党員で政治学者、さらにモリッツ・ロイエンベルガー環境相の相談役を務めたネナド・ストヤノビッチ氏も
「移民の第2世代は、右派、左派に関係なく自由に政党を選んでいる。それは出身国の政治的環境とは関係のない選択だ」
とムーリ氏の意見に反対する。
いずれにせよ、イムホフ氏は
「まずはイタリアから次いでスペイン、ポルトガルなどヨーロッパ南部からスイスに来た移民たちが持っていた労働者としての ( 社会主義的 ) な主義主張は、今の若者には通用しない。彼らはむしろ新興階級と同義の右派政党に入党することを選ぶからだ」
と結論する。
ニコル・デラ・ピエトラ 、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、里信邦子 )
国民党( SVP/UDC )はここ数年の傾向として、スイスに帰化した若い外国人からの賛同が増していると発表した。また外国人の投票権を認める市町村でも、国民党の意見に賛同して投票する若い外国人が増加しているという。
2010年3月7日のチューリヒ市議会選挙には、旧ユーゴのセルビア出身のスイス人アレキサンダー・ナウモビッチ氏が国民党員として立候補した。
40代のエコノミストであるナウモビッチ氏は結局当選しなかったが、国民党出身で前司法相のクリトフ・ブロッハー氏の退陣後に入党し、今後も政治活動に従事すると話した。
「ブロッハー氏は民主主義に反する態度だった」と評するステファン・モンタベール氏もブロッハー氏の退陣後に国民党に入った。モンタベール氏は、元フランス人でスイスに1年前に帰化した。
ヴォー州ルナン ( Renens )の国民党の会長を務めるモンタベール氏は、2011年にはルナンの議会議員に立候補する予定だ。それまでは党のメンバーを増やす活動を積極的に行っていくという。
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