The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

スイス上院、父親の2週間の育休導入案を可決 下院でも審議へ

父親
Keystone / Hans Klaus Techt

スイス連邦上院議会(全州議会)は20日、父親に2週間の育児休業を認める案を賛成多数で可決した。審議は今後下院に回される。子育て政策後進国のスイスがようやく父親の育休実現に向け、重い腰を上げた格好だ。

スイスには父親の育児休業を保障する法律がない。このため、労組などが4週間(休日を除く20日間)の有給の育児休業を導入するイニシアチブ(国民発議)を提起した。これに対し全州議会の社会保障・健康委員会は、4週間ではなく、産後6カ月間で計2週間(休日を除く10日間)の育休を付与する対案を提出していた。全州議会ではこのイニシアチブと、委員会の対案の是非が問われた。

投票では、4週間の育休は反対が上回った。2週間の案は賛成26票、反対16票だった。

4週間の育休に賛成票を投じたのは左派議員だけだった。議員らは、2週間では父親が育児に十分参加できないと訴えていた。

対する右派は、4週間も2週間も「行き過ぎ」としていずれも反対。育休を導入した場合のコスト負担が中小企業には厳しすぎると訴えた。

連邦内閣もコスト負担を理由に、父親の育休導入に反対している。内閣は2018年、育児休業の導入はこれまで通り、雇用主、あるいは労使の責任で判断されるべきだとする見解外部リンクを出した。内閣は2週間の案についても反対していた。

議論は下院へ

父親の育休が実現した場合、取得するには出産からさかのぼって9カ月間、雇用保険に加入している必要がある。また被雇用者であるか、何らかの職業活動を行っていなければならない。

スイスでは男性の育児休業の権利を保障する法律が存在しない。代わりに民間では、雇用主が家庭の事情による従業員の休暇取得を認めており、父親は子供の出産に関し1日か2日の「育休」を申請できる。女性の法定育児休業も14週間と短いため、スイスは欧州の中でも子育て政策後進国になっている。

>>スイスは「欧州の中で家族に最も優しくない国」ユニセフ調査

父親に4週間の育児休業を認めるイニシアチブは、労働組合トラバーユ・スイスなどが2017年に提起。国民投票に必要な10万人分の署名を集めた。

おすすめの記事

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スイス公共放送協会

おすすめの記事

スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。

もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
財布

おすすめの記事

スイスでは現金のチップが主流

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。

もっと読む スイスでは現金のチップが主流
プラタナス

おすすめの記事

プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。

もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部