スイスの視点を10言語で

スイス上院、父親の2週間の育休導入案を可決 下院でも審議へ

父親
Keystone / Hans Klaus Techt

スイス連邦上院議会(全州議会)は20日、父親に2週間の育児休業を認める案を賛成多数で可決した。審議は今後下院に回される。子育て政策後進国のスイスがようやく父親の育休実現に向け、重い腰を上げた格好だ。

スイスには父親の育児休業を保障する法律がない。このため、労組などが4週間(休日を除く20日間)の有給の育児休業を導入するイニシアチブ(国民発議)を提起した。これに対し全州議会の社会保障・健康委員会は、4週間ではなく、産後6カ月間で計2週間(休日を除く10日間)の育休を付与する対案を提出していた。全州議会ではこのイニシアチブと、委員会の対案の是非が問われた。

投票では、4週間の育休は反対が上回った。2週間の案は賛成26票、反対16票だった。

4週間の育休に賛成票を投じたのは左派議員だけだった。議員らは、2週間では父親が育児に十分参加できないと訴えていた。

対する右派は、4週間も2週間も「行き過ぎ」としていずれも反対。育休を導入した場合のコスト負担が中小企業には厳しすぎると訴えた。

連邦内閣もコスト負担を理由に、父親の育休導入に反対している。内閣は2018年、育児休業の導入はこれまで通り、雇用主、あるいは労使の責任で判断されるべきだとする見解外部リンクを出した。内閣は2週間の案についても反対していた。

議論は下院へ

父親の育休が実現した場合、取得するには出産からさかのぼって9カ月間、雇用保険に加入している必要がある。また被雇用者であるか、何らかの職業活動を行っていなければならない。

スイスでは男性の育児休業の権利を保障する法律が存在しない。代わりに民間では、雇用主が家庭の事情による従業員の休暇取得を認めており、父親は子供の出産に関し1日か2日の「育休」を申請できる。女性の法定育児休業も14週間と短いため、スイスは欧州の中でも子育て政策後進国になっている。

>>スイスは「欧州の中で家族に最も優しくない国」ユニセフ調査

父親に4週間の育児休業を認めるイニシアチブは、労働組合トラバーユ・スイスなどが2017年に提起。国民投票に必要な10万人分の署名を集めた。

おすすめの記事

最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

おすすめの記事

スイス鉄道、国外へ乗り入れせず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)取締役会長のモニカ・リバー会長は、自社列車で国外に乗り入れないとする同社の決定を擁護した。

もっと読む スイス鉄道、国外へ乗り入れせず
スイス事故防止協議会(BFU)によると、シートベルトの着用により、過去10年間の国内交通事故で負傷事故5700件、約650件の死亡事故を未然に防いだ

おすすめの記事

命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは、30年前から車の後部座席のシートベルト着用が義務付けられている。スイス事故防止協議会(BFU)と連邦統計局の最新データによって、この安全対策の有効性が裏付けられた。

もっと読む 命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年
握手を交わすスイスのアムヘルト大統領と岸田首相

おすすめの記事

アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望

このコンテンツが公開されたのは、 訪日中のヴィオラ・アムヘルト大統領兼国防相は7日、官邸で岸田文雄首相と会談し、日本・スイス間の自由貿易協定(FTA)改定というスイスの要望を改めて表明した。

もっと読む アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望
UNRWAの前でたむろす子どもたち

おすすめの記事

UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇

このコンテンツが公開されたのは、 国連は5日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員9人が昨年10月7日のイスラム過激派ハマスによるイスラエル襲撃に「関与していた可能性がある」との内部調査を発表した。

もっと読む UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇
診察を受ける赤ちゃん

おすすめの記事

スイスで小児科医が不足

このコンテンツが公開されたのは、 スイス小児科医協会は医師が足りず、特に地方部で子どもが十分な治療を受けられなくなる可能性があると警告する。背景には柔軟な働き方を求める世代の増加や役所・企業の「官僚主義化」があると批判する。

もっと読む スイスで小児科医が不足
注射を打たれる男性

おすすめの記事

コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは現在、新型コロナウイルス感染症が再び流行している。それ自体はさほど深刻ではないものの、ワクチンを受けたくても薬局や診療所に在庫がない事態が発生。背景には7月初めの制度変更がある。

もっと読む コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に
座り込む女性の横顔

おすすめの記事

スイスで人身取引被害が増加

このコンテンツが公開されたのは、 「人身取引と闘うプラットフォーム(Plateforme Traite)」は2023年、スイスで197件の人身取引(人身売買)事案を記録した。前年比で11%増加した。

もっと読む スイスで人身取引被害が増加
耳を抑える子どもと打ち上げ花火

おすすめの記事

「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス人の半数が、打ち上げ花火は8月1日の建国記念日に欠かせないと考えていることが最新の調査で分かった。しかし、回答者の大多数は個人での花火打ち上げに反対している。

もっと読む 「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部