安倍晋三元首相訃報にスイス大統領が弔意 歴代閣僚と交流も
奈良市で8日午前、安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中に男に銃で撃たれ死去した。歴代最長政権を率いた日本で最も有力な政治家の1人の突然の訃報に、スイス国内も驚きに包まれた。
安倍氏は搬送先の病院で死亡が確認された。67歳だった。
安倍氏は2006〜07年、12年〜20年の2度首相を務めた。2度目の在任中には国の防衛力の強化を目指すとともに、大胆な金融緩和を軸の1つに据えた経済政策「アベノミクス」で国内経済の活性化を図った。
「深い悲しみ」
訃報を受け、イグナツィオ・カシス大統領はツイッターに「安倍晋三元首相の訃報に深く悲しんでいる」と投稿。今回の犯行に憤りを感じるとし、「ご家族や親しい人々、そして日本の皆さんにお悔やみを申し上げる」と述べた。
Tragic news from #Japan外部リンク: I am deeply saddened by the death of former Prime Minister Shinzo Abe after he was shot today. I strongly condemn this terrible assassination. My sincere condolences to his family and loved ones and the Japanese people.
— Ignazio Cassis (@ignaziocassis) July 8, 2022外部リンク
ドイツ語圏の日刊紙NZZは東京の特派員の記事を掲載外部リンク。「安倍氏は自衛隊の予算倍増を訴えただけではなく、中国による侵略の際には米国と共に台湾を防衛することを支持する、と明言していた」と保守派としての政治姿勢に触れ、「日本の右派は、安倍氏の死によって対中強行路線の擁護者を失った」と報じた。
また安倍氏が日本の戦力保有を禁じた憲法9条改正に力を注いでいたことに言及。現在安倍氏に代わる地位と影響力を持つ政治家はいないと指摘し、「これによって憲法改正の新たな試みにブレーキがかかる可能性がある」と論じた。
ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー外部リンクは安倍氏肝入りの政策だったアベノミクスに言及。利益の不平等を招いた一面はあるとしながらも「安倍首相のもとで、世界第3位の経済大国が長い成長局面を迎えたことは事実だ」と伝えた。
スイスとの関わり
安倍氏は2019年1月、スイス・ダボスで行われた世界経済フォーラム(WEF)の年次会議(ダボス会議)で講演。デジタル化・データが今後経済成長のエンジンになっていくとし、国境を越えたデータ流通のルール策定が必要だと訴えた。
安倍氏は会議前、チューリヒからダボスに向かう電車の中で、車窓から見える雪景色をツイートした。
ダボス会議に出席するため、早朝にチューリヒ中央駅を出発しました。車窓の外は一面の雪景色です。 pic.twitter.com/6sdY8xKHwg外部リンク
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) January 23, 2019外部リンク
2014年には、日本の首相として初めて同会議のオープニングセッションで基調講演。WEF創設者のクラウス・シュワブ会長とも対談した。
スイスとの首脳会談
スイスからも複数の閣僚が過去に訪日し、安倍首相と首脳会談を行っている。
19年6月、福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせ、ウエリ・マウラー大統領が訪日。安倍首相との首脳会談では、09年に発効した自由貿易協定(FTA)外部リンクの更新にスイスが関心を寄せていることを改めて強調した。
18年4月には、アラン・ベルセ大統領が訪日。安倍氏との首脳会談で、スイス国立科学財団と日本側との連携を強化する宣言に署名した。
日本・スイス国交樹立150周年にあたる2014年には、ディディエ・ブルカルテール大統領が訪日。両国間の国際航空運送の自由化を図る「オープンスカイ協定」を結んだ。
「トランプ氏と友好関係にあった数少ない首脳の1人」
安倍氏が2度目の辞意を表明した2020年8月には、スイス国内メディアも大きく報じた。
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英語からの翻訳・宇田薫
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