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安倍首相の勝利 スイスメディアはこうみる

参院選で勝利した、自民党の安倍晋三首相 Keystone

21日の参議院選挙では、安倍晋三首相率いる自公連立が余裕の勝利を収めた。スイスのメディアは、アベノミクスが日本国民に支持されたことが一因だと分析。一方で、国粋主義的な安倍氏がこれで勢いづき、アジア諸国との外交関係が悪化する可能性があると危惧する。

アベノミクスの勝利

 自民党が公明党との連立で参院過半数を獲得した理由に、スイスのメディアはアベノミクスの成果を挙げる。スイス通信は「安倍氏は、ここ15年デフレに苦しむ日本経済を、大幅な財政出動と大胆な金融緩和で回復させた。アベノミクスに伴う円安で、輸出産業は持ち直した」と分析。

 ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーも「3本の矢を掲げるアベノミクスが明らかな勝利の一因」とみる。

 同じくドイツ語圏の日刊紙NZZで語ったある政治専門家は、次のように説明する。「経済問題が原発問題よりも注目されたのは、国民がもはや政治家を信頼していないことの表れだ。有権者は、少なくとも経済成長を実現できそうな人を選んだ。それが、現在アベノミクスを進める安倍氏だった」

 一方、自民党に対立できるような強い野党勢力がなかったことも、今回の選挙結果の一因であると、フランス語圏の日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブは分析する。「強い政府を望んでいた日本人は、決断ができ、国を守ってくれる人を選んだと思っている。しかし、反安倍派の人たちには、自分たちの要望を代弁してくれる政治家はもはやいない。野党はいわば煙と消えてしまったのだ」

継続的な回復のためには

 安倍氏の経済政策には期待が寄せられているが、ターゲス・アンツァイガー紙は6月に発表された第3の矢の具体策が専門家や市場から不評だったことを指摘する。

 一方スイス通信は、「特に福祉および農業分野で構造改革を行うことが、安倍内閣の喫緊の課題だ。ロビイング団体の反対を押し切れば、継続的な回復も可能だ」と分析する。

 NZZ紙も、構造改革は容易ではないとみる。「構造改革の反対者は、参院選までは声を抑えていた。今回自民党が勝利したことで、消費税や環太平洋経済連携協定(TPP)などの議論がようやく始まる」

「富国強兵」への懸念

 今回の選挙結果を報じたスイスのメディアはどれも、安倍氏が国粋主義者であることに注目し、日本の今後の行方に懸念を示している。

 ニュースのトップに参院選結果を報じたドイツ語圏のスイス国営ラジオは、「安倍氏は、欧州ではその経済政策で知られている。しかし、中国占領の指揮を執り、A級戦犯容疑者だった祖父(岸信介)を持つ安倍氏は、国粋主義的な環境で育った政治家だ」と説明し、来月15日に靖国神社を参拝することになれば、すでに緊迫している日中関係がさらに悪化すると危惧する。

 同様にターゲス・アンツァイガー紙も今後の日中関係が危ぶまれると報道する。「安倍氏の政策は、日本が近代的な強国となった明治時代の政策『富国強兵』を目指している」と解説。安倍氏は「(戦争放棄と戦力の不保持をうたった)憲法9条をなくし、言論の自由や人権を制限しようともくろんでいる」と伝えた。

 同紙はまた、「日中関係の悪化を防げるのは、自民党内の現実主義者だろう」とも指摘。NZZ紙も「自民党は伝統的にさまざまな派閥からできているため、今後は、安倍氏への対抗勢力は党内から出てくるだろう」と予測する。

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