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創設70周年の国連、21世紀に対応できるか?

ジュネーブのアリアナ公園に設置された彫刻「再生」。国連の新しいスタートの象徴になるだろうか? Keystone

今秋、創設70周年を迎える国際連合(UN)。この機関は、人類の最大の希望として大戦直後に誕生した。しかし果たして21世紀にきちんと対応できるのだろうか?ジュネーブの国連欧州本部で数人のキーパーソンに聞いた。

 国連が1945年に創設されて以来果たしてきた業績は、一覧にするだけでも大変な作業になる 。 潘基文・国連事務総長が最近、その「ショートリスト」を作った。「国連は毎日何百万という人々の 生活の向上に貢献している。それは、子供の予防接種、食糧の配給、難民の保護、平和維持部隊の派遣、環境保護、平和的紛争解決への努力、民主主義的な選挙実施の支援、性差別の撤廃、人権と法治主義の推進などの作業のお陰だ」

 ジュネーブの国連欧州本部では24日、オープンデーが開催される。数千人の来場が見込まれるこの催しは、一般市民が国連の業績を振り返る良い機会になるだろう。ハイライトの一つは、近隣のアリアナ公園に新しく設置された彫刻の除幕式だ。「再生」と名付けられたこの彫刻は、すべての国連加盟国を193個の大きな石で表し、「新しい国連のスタート」を象徴しているかのように見える。

 「創設から70年がたった今、世界の現状により良く対応するためには、組織改革が欠かせない」と、国連でも最大の職員数を抱える欧州本部のマイケル・モラー事務局長は言う。

時代遅れの構造

 第2次世界大戦後に誕生した国連は、人類の未来への最大の希望として迎え入れられた。その当時からの課題が、世界情勢の変化に取り残されないことだ。だが、国連の主要機関である安全保障理事会は、いまだに戦後から脱し切れていない。安保理の常任理事国は、戦勝国の中国、フランス、ロシア、英国、米国が独占したままで、それぞれが拒否権を行使できる。まさにこうした組織の停滞性が、シリアやウクライナの危機に際して国連がうまく対応できていないとの批判を引き起こしている。

 コフィー・アナン前事務総長は最近、「新たに常任理事国の数を増やさなければ、 世界情勢に対する安保理の影響力は次第に低下するだろう」と述べた。しかし、常任理事国は独占的な権力を手放す、ないしはそれを分かち合うことに対し極端に消極的だ。

 ところでスイスは、02年に国連に加盟して以来、安保理の改革を積極的に推し進めてきた。中小の27カ国が参加する「安保理の作業方法改善を求める加盟国グループ(ACT)」 のまとめ役も務める。現在このグループが推進する提案は、 大量残虐行為の防止や終結を目的とした決議では拒否権を発動しないよう常任・非常任理事国に求めるもので、60カ国から支持されている。

 ジュネーブのスイス国連大使、アレクサンダー・ファーゼル氏は、小さな改革は可能だと考える。「安保理の作業方法は改善された 。公開討論の導入がその好例で、理事会の透明性を向上させようという努力がうかがえる。また、(大量残虐行為の防止や終結を目的とした決議では拒否権を発動しないといった提案では)フランスのような常任理事国ですらこれを支持するなど、理解が広がっている」

ニーズの増加

 国連で最大の権力を持つ安保理が1945年代に留まっている一方で、実際のオペレーションにおいて国連は、ニーズに応じて拡大の一途をたどってきた。職員の総数は8万5千人。年間予算は400億ドル(約4兆7700億円)と、20年間で約4倍に膨れ上がった。だが、資金面では、専門機関の間の熾烈(しれつ)な競争が妨げとなり、困難な状況が続いている。

 現在国連は、独自の予算で独自に総会を開く20の専門機関を抱える巨大な組織に成長した。ところが全体を概観・統括する組織が存在しない。世界保健機関(WHO)がエボラ熱流行の兆しをもっと早く把握できなかったのは、この複雑化した構造のためだと批判されている。

 「個人的には、国連の問題は規模が拡大したからではなく、組織が個々に分断されている点にあると思う。スタッフ採用にせよ、支出にせよ、適切に管理するのは至難の業だ。さらに、この巨大な組織を管理する実務面が、加盟国によって押し付けられた国連独自のルールで細部まで規定されており、身動きが取れなくなっている」(モラー事務局長)

 2015年は、「国連システム」が将来機能していくための方向性を決める要の年となるだろう。今年3月には、災害リスク削減のための新規枠組みが合意に至った。9月の総会では、2030年をめどに貧困と飢餓を解決するための開発アジェンダが採択された。12月のパリ会議でも、気候変動に関する新しい合意の締結に期待がかかる。

疑問視される業務遂行能力

 一方、6万人の国連職員を代表する国際職員組合連絡委員会(CCISUA)のイアン・リチャーズ委員長は、こうした新しい目標と取り組む準備が国連にあるか疑問視している。

 「それは、慢性化した組織上の問題があるからだ。例えば、失敗を恐れる空気や職員の採用時年齢の高さ(平均41才)、官僚主義的体制などだ。また、国連総会は、あまりにも多くの政策や予算の細部管理に力を注ぎ、職員の採用に関しては、各国の利害関係が絡み、採用を複雑にしている」と話す。

 「また、組織が縮小する場合は下部職員を解雇し、拡張時には理事や副理事など上部職員から補充するのが専門機関内での慣習だ。加盟国は組織の上部に自国の幹部クラスの人間を入れたがる。欲しいのは経験のある人材で指導に時間がかかる若いスタッフはいらないと言うのが専門機関の言い分だ」

 ところが現実には、国連がうまく機能するためにおびただしい数のインターンや外部コンサルタントなど、若い短期契約労働者が雇われており、組織によってはその割合が全職員中40%にものぼるとリチャーズ委員長は付け加える。

改革

 10年前、国連60周年を記念して開かれた首脳会議で国連組織改革案が採択されたが、内容はかなり譲歩したものだった。 2006年には国連改革のためのハイレベルパネル(賢人会議)が招集され、開発・人道的支援・環境の各分野における目標達成度の低さを批判するレポートが発表された。

 このレポートは、支援現場でのチームワークと効率を推進する目的で「Delivering as One(一つの組織が支援する)」を提案してもいる。つまり、支援のために集まった国連の専門機関をその国の一つの事務局が統合し、計画、資金、リーダーも統合して指揮するというものだ。2007年には8カ国でパイロットケースが始まった。ハイレベルパネルが改革の現状を今見たとしたら、どういう評価を下すだろうか。

 前出のスイスのファーゼル国連大使は、Delivering as One計画が改革に大いに役立ったと感じている。「国連は学びながら変わっていく組織だ。その機能性や仕事のやり方を常に検討・反省し、自らを修正していける組織だ」

 モラー事務局長も、発展途上国における現場の支援で特に大幅な改善が見られたと感じている。「ただし、どの事務局が指揮するかによって、改善の程度にばらつきがある。そのため、さらに広範な改革の必要性がある」

 そして、この国連欧州本部の事務局長は、次のような消極的な結論を述べた。「過去10〜15年で、我々は問題の複雑さに対する理解を深めた。しかし、国連の構造的問題が改革を阻んでいる。もしここが理想的な組織ならば、もっと徹底的な構造改革がすでに行われているはずだ。だが、残念ながら各加盟国に(改革への)政治的意思が欠けているのが現状だ。もちろん経済的な問題もあり、結局早急な改革の実現はむずかしいだろう」

国際交渉の場、ジュネーブ

ジュネーブには世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際赤十字委員会(ICRC)など、33の国際機関が本部を置いている。

ジュネーブ在住の外交官・公務員は総数約2万9千人。250のNGO団体で働く職員は約2千4百人。ジュネーブの国連欧州本部の職員は約9千4百人で、集中度は各地の国連事務所所在地の中で最大。ジュネーブ在住外国人の出身国は173カ国にのぼる。

年間延べ2千7百件の国際会議のためにジュネーブを訪れる人は約20万人で、ニューヨークを上回る。さらに、世界の首脳や政府高官の訪問は公私あわせて年間約3千件。9百社以上の多国籍企業がジュネーブに登録され、7万6千人分の雇用を生み出している。2013年の国際機関の支出総額は、54億5千万スイスフラン(約6800億円)だった。

国際連合憲章が発効した10月24日は、国連デーと呼ばれている。今年の国連デーのモットーは、「強い国連、 より良い世界」だ。

(英語からの翻訳・フュレマン直美 編集・スイスインフォ)

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