スイスは全人口に十分な量の新型コロナ感染症ワクチンを確保するという
Oxford University
スイス連邦政府は20日、スイスの全人口860万人に十分な数の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを確保するため、3億フラン(約330億円)の財政出動を行うと発表した。
このコンテンツが公開されたのは、
アラン・ベルセ内相は20日の会見で「目標ははっきりしている。スイスの全人口が、安全で効果的なワクチンにできる限り早くアクセスできるようにする」と述べた。また、あらゆる国がワクチンを公平に入手できるようにするべきだと強調した。
国防省が、ワクチン確保に向け製造業者との契約交渉を行う。全人口に十分な数を確保するには3億フラン(約330億円)が必要という。財源は既存のコロナウイルス対策費から拠出する。
政府がこのような措置を発表したのは、ワクチンが実際に承認・製造された際、激しい獲得競争が起こるのではないかという懸念があるためだ。
スイス国内の抗体保有率は他の国と同様、依然として低い。連邦政府は声明で「ワクチンに対する世界的な需要はそれに応じて高くなるだろう」と述べた。
第1号のワクチンが承認された際、もし需要に生産が追い付かないということになれば、米国など一部の国が必要量の囲い込みに入るのではないかという懸念が高まっている。一部報道では、ワクチンの原料をスイス企業ロンザで生産しても、開発するのは米企業モデルナ、そして供給先も米国になるーという。
ベルセ内相は、連邦政府は現在、ロンザなどの各ワクチンメーカーと連絡を取っているとコメント。ただスイス国内外で進行中の同種プロジェクトは100件以上あり、最終的にどれが成功するか、現時点では明言できないと述べた。
ベルセ内相は「お金の問題ではない」と強調した。
ベルセ氏は、ワクチン製造の全過程を単一の国で行っているところはなく、複数国にまたがって製造されていると説明。政府の声明によると、各国は試作品ではなく完成品に関心を示しているため、交渉は容易ではない。
連邦保健庁のダニエル・コッホ氏は会見で、政府がワクチン確保に動くのは今回が初めてではないと強調した。コッホ氏は「これは世界の共通原則だ。可能な限り、ワクチン製造業者と交渉する」と述べた。
コッホ氏は、各国との契約を通じて、製造済みワクチンを1カ国が独占することのないようにしている、と述べた。さらに公正なアクセスを確保するため、世界保健機関(WHO)と協働すると語った。
コッホ氏は「この手法は、別のパンデミック(世界的大流行)のワクチンでうまく機能した。今回も同様だろう」と語った。
おすすめの記事
スイス、PFASの規制強化を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。
もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール 韓国高校生男子が優勝、安海さんが3位
このコンテンツが公開されたのは、
ローザンヌ国際バレエコンクールの最終選考が8日に行われ、韓国のパク・ユンジェさんが優勝。群馬出身の安海真之介さんが3位で入賞した。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール 韓国高校生男子が優勝、安海さんが3位
おすすめの記事
スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
このコンテンツが公開されたのは、
世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。
もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
おすすめの記事
スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。
もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
おすすめの記事
スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。
もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
おすすめの記事
スイスに感染症情報解析センター発足
このコンテンツが公開されたのは、
感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。
もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
続きを読む
おすすめの記事
スイス検事総長が史上初の弾劾に?FIFA汚職で
このコンテンツが公開されたのは、
国際サッカー連盟(FIFA)の汚職捜査をめぐり、連邦議会は20日、スイス連邦検事総長のミヒャエル・ラウバー氏の公聴会を開くことを決めた。議会司法委員会の決定次第では、初の高官の弾劾となる可能性が出てきた。
もっと読む スイス検事総長が史上初の弾劾に?FIFA汚職で
おすすめの記事
コロナデモは正当化されるのか?
このコンテンツが公開されたのは、
今のところ、公共スペースで5人を超える集まりは禁止されており、政治的なデモも対象だ。だが5月に入り、3週末連続で自由の制限に抗議するデモが、少人数ながら大きな声を上げた。 彼らは一体何を求めているのか? 一つには、人々の…
もっと読む コロナデモは正当化されるのか?
おすすめの記事
スイス自慢の職業訓練制度にもコロナ危機
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナ危機はスイスの職業訓練制度にも影響を与えている。若者の約3分の2が受ける職業訓練にも影響が出ている。
もっと読む スイス自慢の職業訓練制度にもコロナ危機
おすすめの記事
コロナ危機 スイスの連邦制に試練
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、連邦政府は連日のように記者会見を開き、各州も頻繁に情報を発信している。それぞれの発言内容からは、スイスの政治システムの内情や、連邦と地方(または州)のパワーバランスが垣間見られる。 連…
もっと読む コロナ危機 スイスの連邦制に試練
おすすめの記事
ロックダウンで女性の感染者が増えたのはなぜ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスではロックダウン(都市封鎖)やソーシャルディスタンシング(社会的距離) ルールを講じて以来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の女性割合が増えている。その理由を探った。
もっと読む ロックダウンで女性の感染者が増えたのはなぜ?
おすすめの記事
新型コロナ規制 日本人はスイスに入国できる?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは新型コロナウイルスに伴う国境制限を緩和し、6月15日からEU/EFTA加盟国・英国からの入国が自由にできるようになった。7月20日からは日本からの旅行者も入国できるようになった。
もっと読む 新型コロナ規制 日本人はスイスに入国できる?
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
ワクチン開発はできるだけ迅速に、必要に応じてゆっくりと
このコンテンツが公開されたのは、
「秋にはワクチンができる?それは何かの誤解にちがいない。今秋に期待できるのは、第II相試験(フェーズII)の開始だ」と医薬品を認可・監督する政府機関スイスメディック外部リンクの広報担当ルーカス・ヤッギ氏は言う。 新薬の場…
もっと読む ワクチン開発はできるだけ迅速に、必要に応じてゆっくりと
おすすめの記事
COVID-19の「免疫パスポート」導入に賛否
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する免疫力を証明する「デジタルヘルスパスポート」の開発が、スイスのテクノロジー企業と医療研究者らによって進められている。だが感染歴があれば本当に免疫が付くのか、まだ科学的には証明されていない。免疫の有無に応じて人々を区別すれば、スイスや同じ選択肢を検討中の国々で、深刻な倫理上の問題が生じる恐れもある。
もっと読む COVID-19の「免疫パスポート」導入に賛否
おすすめの記事
スイス保健庁「集団免疫には程遠い」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは新型コロナウイルスによる新規感染者数、死亡者数が減少傾向にある。ただ集団免疫の獲得には程遠い。
もっと読む スイス保健庁「集団免疫には程遠い」
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。