フランス北東部の病院で新型コロナウイルス感染症患者が急増し、地元当局がスイスにSOSを出した。現在、スイスの病院ではフランス側の患者約50人を受け入れている。
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国境を越えた「連帯(Solidarity)」が、特にパンデミックの状況下では価値があることを証明した。スイス国境の仏グラン・テスト地域圏、フランシュ・コンテ地域圏で病院の受け入れ態勢がひっ迫し、スイスの複数の州がフランスの患者受け入れに同意した。フランスから50人の患者がスイスに移送された。ドイツとルクセンブルクもフランスの患者を受け入れている。
すべては、ある地方議会の議長が起こした訴えから始まった。3月21日、アッパー・ライン地方部会のブリジット・クリンケルト議長がスイス・ドイツとの友好関係を頼りに、バーゼル・シュタット準州、バーゼル・ラント準州、ジュラ州政府、フランス首相に対し、国境を越えた連帯を求めるメッセージを出した。
誰もがそれは素晴らしいアイデアだと思った。スイスの州は即日、受け入れに同意した。3月22日にスイス政府は協定を承認。受け入れ先の病院が移送の手続きを始めた。クリンケルト氏は 「協力はとても自然に始まった」と振り返る。「私たちの友好関係と国境を越えた連帯が作用し始めた」
補償なし
この最初のイニシアチブは定着すると共に、広がりをみせた。グラン・テスト地域の保健機関はジュネーブとチューリヒのフランス領事館の助けを借り、他のスイスの州に助けを求めた。ザンクト・ガレン州やトゥールガウ州など、仏アルザス圏と直接協力関係のない地域も連帯に加わった。
スイスには、イタリアからの患者受け入れ要請は来ていない。ティチーノ州と連邦外務省はswissinfo.chに対し、国内の病院で治療を受けているイタリアの患者はいないと回答した。ロンバルディア州の危機管理部門の責任者ギウリオ・ガレラ氏は、患者の受け入れ要請はスイスよりも国内の他地域を優先してきたと述べた。
しかし、数人のイタリア人患者が最近、ドイツに移送された。イタリアは、欧州では新型コロナウイルスの影響を最も受けた国の一つで、1万2000人以上の死亡者が出た。
国外からの患者の受け入れ要請は今後、スイス連邦保健庁に集約される。スイスのフランス大使館とスイス連邦外務省によると、両国政府の間で具体的な合意はなく、補償についても交渉していない。
外務省は「スイスは近隣諸国と常時連絡を取り合い新型コロナウイルス対策を調整し、特定の問題に対する迅速な解決策を探っている」という。「協調的なアプローチのおかげで、スイスはさまざまなことを実現できた。特に越境労働者への国境開放は、わが国の一部地域の病院にとって非常に重要だ」
ヌーシャテル州の大規模病院ヌーシャテル・ホスピタル・ネットワーク外部リンクは、集中治療室で働く看護師の60%が越境労働者だという。ジュラ州の病院では、医療・看護スタッフの30%がフランスに住む。スイスの保健セクターでは、3万人以上の労働者がフランスから来ている。フレデリック・ジュルネ駐スイス・フランス大使は「越境労働者のための措置が3月19日に導入された」とし「そのちょうど7日後、アルザス地方の緊急事態に伴う患者の受け入れ計画が発動した」
双方向の連帯
良好な協力関係は双方に有益だ。スイスは有資格労働者を得られ、フランスは緊急時のインフラという恩恵を得た。国境を越えた医療協力に関する枠組み協定は、両国の間で合意済みで昨年10月1日に発効している。協定では、治療費は患者の出身国が負担しなければらならないと明記する。
スイスの病院でもベッド不足に陥ったらどうするのか?パンデミックの間、州は連邦政府に病院のベッド数の稼働状況を定期的に通知しなければならない。保健庁はこれらの数値を元に、国外からの患者受け入れ能力を見極める。それから州と協議し、受け入れが可能かどうか判断する。
スイスで行われているこの取り組みが国際的に通用するかは未知数だ。ジュラ州の病院は「現時点では、集中治療室のキャパシティを評価できる国のプラットフォームがない。すべて病院同士の連絡に頼っている」と話す。
パンデミックがスイスでさらに悪化した場合、医療崩壊が起きるかもしれない。そうしたら、スイスもまた隣国への受け入れ要請ができる。ジュルネ氏は「このパンデミックにおいて、新型コロナウイルス感染症と戦うには欧州の連帯が不可欠だ」と話した。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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