スイスで2020年を合法的に乗り切るヒント
スイスでは1月1日、さまざまな新法や改正法が施行された。よりスピーディーなインターネット(や婚姻手続き)からゴムボートの操縦者に対する飲酒規制まで、11の変更点を紹介する。
旧紙幣
旧紙幣をため込んでいる人に朗報だ。流通停止から20年だった旧紙幣の交換期限が撤廃された。旧千フラン札などの旧紙幣を持っている人は、スイス国立銀行(SNB)でいつでも新紙幣と交換することができるようになった。この決定は1976年に発行された第6次紙幣以降の旧紙幣に適用される。
結婚
こちらも結婚を急いでいる人には朗報。スイスでは婚姻手続きは戸籍役場を通じて行う。今回の法改正で、婚姻手続きを進める許可を受け取ってから結婚式を挙げるまでに設けられていた10日間の待機期間が無くなり、地元の役場から許可を得たカップルはすぐに挙式できるようになった。ただし、戸籍役場への許可申請は依然として必要だ。
二酸化炭素(CO2)排出量
スイスで登録された新車の平均CO2排出量外部リンクは、1kmあたり95gを超えてはならない。改正前は1kmあたり130gだった。この平均値を超える車を輸入した人には罰金が科される。
罰金
今後、違反切符の交付は交通違反に限られない。公共の場での喫煙、大麻の購入、自転車走行中の通話、武器の不適切な運搬などの違反に対し、最高300フラン(約3万3600円)の罰金が科される可能性がある。
時効
健康被害の補償請求権に関する時効はこれまで10年だった。しかし、アスベストで健康被害を受けた人などにとって10年では短すぎるとの指摘を受けて、いくつかの健康被害に関する時効が20年に延長された。
インターネット
スイスの通信最大手スイスコム―大株主は連邦政府―が提供する基本的なインターネットサービスの法定最低速度が、1秒あたり3メガビット(Mbps)から10 Mbpsに引き上げられた。また、アップロードの最低速度も0.3 Mbps から1 Mbpsに変更された。
健康
医師、研究所、病院、医療機関は今後、診断された「がん」に関するあらゆるデータを州の登録センターか小児がん登録センター外部リンクに報告しなければならない。新法は登録に掛かる費用の負担とデータの保管を全ての州に義務付けた。患者に関する守秘義務は保証される。
年金
昨年5月の国民投票で、法人税改革と年金の追加財源確保を合体させたいわゆるスイス版「税と社会保障の一体改革」が可決された。国庫負担と雇用者(法人)・被雇用者の年金保険料を引き上げることで、毎年20億フラン(約2240億円)の追加財源が老齢・遺族年金制度(AHV)に入ることになる。結果として、年金保険料率は0.3%上がる。
ニワトリのひな
オスのニワトリのひなを生きたまま細断して殺処分することが禁止された。スイスでこのような慣行はすでに行われていない一方で、毎年約300万羽のオスのひなが、商業的な理由から飼育価値がないとみなされ、二酸化炭素ガスで殺処分されている。
ゴムボート
6年前に導入されたゴムボートの操縦者に対する飲酒規制が撤廃された。撤廃前の制限値は車の運転者と同じで、血液100ミリリットルあたりのアルコール濃度が50ミリグラム。しかし、規制が困難であることと「これらのゴムボートはエンジン付きのボートと比べて危険性が低い」ことを当局が認め、今回の決定に至った。ただし、ゴムボートの操縦が適切な人によって行わなければならないことに変わりはない。
植物
果物、野菜、植物、葉、そして欧州連合域外の特定種の木から作られた製品を輸入するには、植物検疫証明書の提示を伴う許可が必要だ。外国の珍味をスイスに持ち帰って楽しみたいと思う旅行者は注意しなければならない。植物検疫証明書が無い場合、規制の対象となる商品は没収・処分されかねない。けれども、パイナップル、ココナッツ、デーツ(ナツメヤシの果実)、強烈な香りのするドリアンの持ち込みは心配無用。これらの果物は、植物相に有害な病害虫の侵入の制限を目的とする新植物防疫法外部リンクの規制対象外だ。
(英語からの翻訳・江藤真理)
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