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2019年には法律にどんな変更が?

Old man driving a car
鏡よ鏡、あの物体は近いか、それとも遠いのか?高齢ドライバーの健康診断の受診年齢が5歳引き上げられ、75歳以上になった Keystone

スイスでは1月1日付けでさまざまな新法や改正法が発効する。内容は外国人に関するものから、オンラインショッピング、精子提供で生まれた子供に関するものまで多様だ。その一部を紹介する。 

外国人法:スイスに住む外国人が滞在許可証を取得/更新するには、公共の安全・秩序やスイス連邦憲法に定められた価値観の尊重といった「良い行い」の一定基準を満たさなければならなくなる。経済活動への参加と言語能力も考慮される。スイス社会に適応する意志がまったく見られない場合、求められる項目を列挙した社会統合(インテグレーション)合意書に署名することを義務付けられる可能性がある。このような合意に従わなかった場合、滞在許可証の更新に影響が出る恐れがある。例えば、永住許可証(C許可証)を保持していても、社会統合基準を満たさない場合は一時滞在許可証(B許可証)にダウングレードされる場合がある。 

児童保護法:子供と習慣的に接する職業に就く人はすべて、児童虐待の疑いがある場合、関係当局に通報する義務が生じる。これまでは教師やソーシャルワーカーなど公務に就いている人だけが虐待の疑いを当局に知らせる義務があった。改正後は、保育園の職員や音楽教師、スポーツのコーチなど、子供と習慣的に接する人すべてにこの義務が適用されるようになる。 

もう一つ重要な変更点は、医師、弁護士、精神分析医に関するものだ。従来、このような職業の人々は、医師と患者、弁護士と依頼人の間の守秘義務のために通報の義務を免除され、法律に違反する行為が行われた場合にのみ届けを出す規定だったが、今回の改正により、子供の利益のためであれば、職業的守秘義務にかかわらず保護局に通報できるようになる。

Music teacher and pupils
児童虐待が疑われる場合、音楽教師も当局に通報する義務を負うようになる Keystone

運転に関する法律:スイスの高齢ドライバーには医療検査が義務付けられているが、その開始年齢が5年遅くなる。これまでは70歳だったが、今後は75歳以上のドライバーは2年ごとに健康診断を受けなければならない。 

政府は、健康診断が初めて義務付けられた1970年代に比べ、現代の高齢者の健康状態がはるかに良くなっていると主張。しかし反対派は事故のリスクが高まると警告している。 

また、診察する州認定の医師の年齢上限も70歳から75歳に引き上げられる。 

生殖医療法:精子提供によって生まれた子供は、生物学的な父親の身元を知ることがより容易になる外部リンク。ベルンの連邦司法警察省婚姻局には精子提供後80年間、父親のデータが保管されている。これまでは当局へ直接出向かなければ個人情報を入手できなかったが、今後は情報の郵送が可能になり、その必要がなくなる。しかし希望があれば今後も従来の方法で情報が入手できる。 

子供が18歳に達し成人になると、婚姻局に書面で申請すれば、精子提供者の身元と外見のデータを入手することができる。匿名での精子提供は2001年よりスイスでは違法とされている。子供が18歳に達していない場合や、精子提供者の医療検査結果などの別のデータを入手したい場合には、正当な理由があることを証明しなければならない。例えば、子供自身の健康状態を明らかにするために精子提供者の検査結果が必要といったことが理由になりうる。 

付加価値税に関する法:今後は、外国の会社からオンラインで購入した商品に対し、スイスの付加価値税(VAT)が課されることになる。 

売上高が10万フラン(約1120万円)を超える会社はすべて、スイスの顧客に対してスイスの付加価値税を貸す義務が生じる。スイス国内の会社より価格競争力がはるかに高いアマゾンのような外国の多国籍企業から商品を購入する魅力を減らすことが狙いだ。実際、2018年12月26日以降、アマゾン・ドットコムやその他のEU圏外のアマゾンのウェブサイトからの買い物は、スイスに配送できなくなっている。電子書籍やアプリは対象外。 

昼食時の洗濯機使用に関する法律:最後に、法律の変更よりも社会の変化に関する話を。 

従来、昼食時にエネルギー使用量が激増するため、スイスの一部のエネルギー供給会社は正午前後の洗濯機や乾燥機の使用を禁止外部リンクしていた。その例として、スイス北部のソロトゥルン州やアールガウ州のいくつかの町では、午前11時から正午までの間、衣類の洗濯と乾燥をすることができなかった。 

しかし今回の電力供給法の改正外部リンクで、そのような供給網に関わる禁止事項がある場合、顧客の承諾が必要になった(承諾した場合には、エネルギー代が安くなる)。あるエネルギー供給企業の社長の説明によると、近年では消費者の行動が変わり、昼食時に料理をする人が減っているという。

(英語からの翻訳・西田英恵)

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