COP25に託された地球の未来
本日からマドリードで開催される第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)に際し、スイス政府は「パリ協定を効果的に実施するための基盤を築くことは必須」と表明している。2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目標に掲げるスイスだが、NGOはそれだけでは不十分だという。会議の重要項目をまとめた。
第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)にかかる期待は大きいものの、これまでの会議を振り返ってみても、今回の会議が具体的な成果をもたらすかどうかは定かではない。今回は、スペインの首都マドリードで12月2~13日に開催される。当初開催が内定していたブラジルがホスト国を辞退したことを受け、南米のチリで会議が行われることになった。ところが国内で反対派のデモが激化し、再度変更を強いられた。代理の開催国にコスタリカ、ドイツ(ボン)、米国(ニューヨーク)、スイス(ジュネーブ)の名が挙がっていたが、結局、スペインに決まった。開催のわずか1カ月前のことだ。
何故COP25が重要なのか?
COPは、1992年の地球環境サミットで採択された気候変動枠組条約(UNFCCC)の参加国による、温室効果ガス排出防止策などを協議するための年次の会議だ。
第25回の目的は、気候変動対策に関する「パリ協定」の実現に向け、具体的な実施ルールを取り決めることにある。2015年に採択された同協定は、産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑えるため、2020年以降、具体的に温室効果ガスの排出を削減することを義務付ける国際枠組みだ。規則の大半は既に2018年にポーランドのカトヴィツェで開催されたCOP24で採択済みだが、まだいくつかの重要な項目が残っている。
扱われる議題は?
今回マドリードで開催される会議の優先事項には、海外のプロジェクトで達成される温室効果ガス排出削減と、「損失と被害」メカニズムが含まれる。これは気候変動を起因とした貧しい国の経済的損害を、豊かな国がどう負担するかについてだ。
また、将来の目標についても意欲的に議論される。パリ協定の署名国は来年、2030年までに達成すべき温室効果ガス削減目標を改めて示さなければならない。米国は今年11月、パリ協定からの正式な離脱を国連に通告した。
スイスの優先項目は?
スイスは、パリ協定を効果的に実施するための、さらなる規制強化を求めている。特に、パリ協定の要求と効率を損なわないためには、外国で行われた温室効果ガス排出削減が(出資国と支援を受けた国の両方で)二重計上されないよう計算ルールを確立すべきだと訴える。また、外国で行われるプロジェクトが本来の目的に反し、環境と人権に悪影響を与えないよう保障すべきだとしている。
連邦環境省環境局は、会議と並行して、気候に配慮しつつ世界的な投資活動を行うにはどうすべきかを議論するイベントを開催予定だ。スイス連邦環境省のフランツ・ペレス国際局長が率いるスイス代表団には一般人からの代表者も含まれる。また、今回は若き環境活動家である学生のマリー・クレール・グラフさんも初めて会議に参加する。
NGOがスイスに求める内容は?
統括組織アライアンス・スード(Alliance Sud)や世界自然保護基金(WWF)スイスなどの環境団体は、「COP25の参加国は、現実的で、測定可能で、検証可能で、継続的な温室効果ガス排出削減を保証するガイドラインに同意する必要がある」と訴える。双方とも気候変動問題に取り組む環境NGOのネットワーク組織「気候行動ネットワーク(CAN)」の構成メンバーだ。
非政府組織(NGO)は、発展途上国における気候変動政策を支援するためには、2020年まで毎年1000億ドル(約11兆円)の資金を調達する必要があると主張。しかし、CANはこの目標の達成に対し懐疑的だ。CANはまた、スイスは国力に見合う貢献をしていないと批判する。スイス政府は、年間4億5000万~6億ドルを準備する予定。
温暖化を食い止めるために、世界で何が行われているのか
具体的に言えば、ほとんど何も行われていない。各国は気候保護に向け、従来路線を変更すると公言はするものの、CO2やメタンなどの温室効果ガスの濃度は未だに上昇し続けている。2018年には新たに記録が更新され、国連も「温暖化が減速する兆候はない」としている。国際連合環境計画によれば、たとえ気候変動対策の公約が全て守られたとしても、温暖化による気温の上昇は3.2度に達する恐れがあるという。取り返しのつかない事態を避けるためには、今の3倍の努力をしなければ追いつかないと警鐘を鳴らす。
スイスは具体的に何を行っているか?
スイスは他国と同様、2050年以降の温室効果ガスの排出ゼロ外部リンクを目指している(カーボンニュートラル)。これは、スイス国民と企業の活動による二酸化炭素(CO2)、メタンまたは一酸化窒素などの温室効果ガスの排出と吸収がプラスマイナスゼロになることを意味する。
そのため、スイス政府は輸送交通、建設、産業の分野で排出削減に向けた対策を講じている。
またそれ以外の排出量を相殺するために、天然のCO2の吸収源である森林や土壌などの他にも、将来的には大気から温室効果ガスを継続的に除去するテクノロジーの採用も検討されている。
この目標は、現在予定されている二酸化炭素(CO2)排出規制法の全面改正と連動し達成される予定だ。この改正法は2030年までの期間を対象とし、輸送用燃料と航空券の課税について取り決めが行われる。現在、この案件は議会で保留中だ。先ごろのスイス総選挙で緑の党派が大きく躍進したことを受け、議論は新しい方向に発展する可能性もある。
いずれにせよ、これは日ごろから気候保護に関する政治的意思の欠如を非難するスイスの気候保護団体の希望だ。また60の市民団体から成る組合「スイス気候同盟 (Swiss Climate Alliance外部リンク)」は、「地球温暖化による被害は、ある意味で年金基金とスイス国立銀行の責任でもある」とし、これらの機関は財政の流れを変え、化石燃料に対する数十億ドルの投資を止めるべきだと指摘している。
(独語からの翻訳・シュミット一恵)
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