電子投票実現までの道のりはまだ長い
Keystone / Christian Beutler
スイス連邦政府は27日、州レベルで試験運用していた電子投票システムについて、全国的に導入することは当面見合わせると発表した。電子投票システムに技術的欠陥が見つかったことや、多くの政党が導入に難色を示したことが理由という。
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国内では2004年からこれまで15州が300件以上の電子投票を試験的に実施していた。2017年4月、連邦内閣は内閣事務局に対し、電子投票を通常の投票方法に追加することを見据えた法改正に向け、準備を進めるよう要請した。
当初は今年10月の連邦議会総選挙で、全26州のうち少なくとも3分の2の自治体で電子投票を行う計画だった。
しかし、州・政党に意見を募ったところ、過半数の州が電子投票の全面的導入に賛成したが、大半の政党は時期が早すぎる、または根本から反対の意思を示した。
続けるか否かは州次第
こうした反対を受け、連邦内閣は法改正を当面見送る方針を決めた。しかし、投票所での投票や郵便投票に加えて電子投票を行うかどうかは、今後も州の裁量にゆだねるとした。
全面導入の見送りには、ジュネーブ州が昨年11月、コストが賄えないとして電子投票システムの廃止を決めたことが響いた。ジュネーブと同様のシステムはアールガウ州、ベルン州、ルツェルン州も過去に導入していた。連邦レベルでは現在、このシステムは使用していない。
その後、唯一残ったのがスイス郵便のシステムだったが、2019年2月にソースコードを公開しハッキングテストを実施したところ、ソースコードに深刻な欠陥が見つかり、システムを停止した。
試験運用は続ける
連邦内閣は、全面的導入は当面見送るものの、試験運用は続けるとした。連邦内閣は試験運用を安定させるため、内閣事務局に対し2020年末までに各州と連携して試験運用の新たな方針を作るよう要請した。
今年10月の総選挙で電子投票を行うか否かは8月に決定するとした。
障害は多い
電子投票の全面的導入をめぐっては昨年3月、超党派で作るIT業界出身の議員らが、電子投票の実施を5年間凍結するイニシアチブ(国民発議)を出した。5年後、電子投票が少なくとも通常の投票方法と同等の安全性が確認されれば、凍結を解除できるという内容だ。
在外スイス人協会「民主的権利の否定」
在外スイス人協会(OSA)は今回の政府決定に対し「在外スイス人の民主的権利を否定することになる」と批判した。同協会によると、現在国外に住むスイス人は76万人に上る。同協会は昨年11月、2021年までにすべての在外スイス人が電子投票を選択できるよう求める請願書を提出している。
ku
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