スイス連邦警察は14日、ベルンの連邦議事堂付近で爆発物の痕跡を発見し、付近にいた男性を逮捕した。警報を受けて議事堂内にいた人々は緊急避難したが、避難計画の甘さに批判が出ている。
このコンテンツが公開されたのは、
逮捕されたのはヴァレー(ヴァリス)州出身の男性(27歳)。ベルン警察外部リンクによると、不審な動きを見て警備員が呼び止めたところ、男性は防弾チョッキと銃のホルスターを身に着けていた。その後の身元確認中に行った簡易検査で爆発物の陽性反応が出た。
議事堂の向かいにあるブンデスプラッツ(連邦広場)に男性の車が停められていたことも分かった。
これらを受けて午後2時ごろにベルン警察に通報され、男性は連行された。
ベルン警察は、「当時入手できていた情報に基づくと、ブンデスプラッツの車内に爆発物があり、車両が危険をもたらす可能性を排除できなかった。そのためすぐに大規模な警備体制が取られた」と述べた。
広場と周辺の通りは封鎖され、連邦議事堂など周辺の建物にいた人々は緊急避難した。
ベルン警察によると、ロボットやドローンによる検査の結果、車に危険はないことが分かった。午後7時頃に緊急警報は解除された。
男性は現在拘留され、医学的調査を受けている。連邦検察庁の指示を受け、ベルン州、ヴァレー州警察と連邦警察が共同で刑事捜査を開始した。
男性の動機について、警察はロイターへのコメントを拒否した。無料紙20min.外部リンクは男性が精神的に錯乱していると報じた。母親によると、男性は数年前に兵役を終え、軍隊に残りたかったが病気のために辞めざるをえなかったという。「昇進するためにベルンに行ったのではないか」と同紙に語った。
避難計画の見直しを求める声も
騒動を受け、アンドレア・カローニ上院議員は連邦議事堂の避難計画を見直すよう訴えている。同氏や他の国会議員たちが建物から避難する時、自分が「攻撃するのに理想的な状況」にあると感じたという。
カローニ氏はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)で「私自身、避難手順を理解していなかったことは認めざるを得ない。他の議員たちも同じだった」と語った。
避難する段階になっても「ドアからは1人ずつしか出られず、とてものろかった」。全員が屋外に集められた時も何の防護もなく、「珍妙」だったと振り返った。
「そこにいた人全員を攻撃できる理想的なシナリオだったといえる」
スイスは治安が良いことで知られ、閣僚が警護なしで公共交通機関を利用することさえできる。
だが一部の閣僚は、パンデミック中のロックダウン以降に脅迫を受けることが増えたと話している。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
おすすめの記事
市民の憩いの場 ベルン連邦議事堂前広場
このコンテンツが公開されたのは、
ここでは農家が農作物を売り、子どもたちは噴水で遊び、政治キャンペーンが行われる。他にもコンサート、デモ行進、アイススケート場など、いろいろな用途で使われている。 この議事堂前の空間は、あえて作られたものだ。広場として解放…
もっと読む 市民の憩いの場 ベルン連邦議事堂前広場
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
おすすめの記事
スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの医療機関団体は22日、外来患者向けの新料金体系を承認したと発表した。エリザベット・ボーム・シュナイダー内務相は積年の議論に決着がついたことを歓迎した。
もっと読む スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
続きを読む
おすすめの記事
「連邦議事堂を爆破する。震え上がるがいい!」
このコンテンツが公開されたのは、
テロとは一見無縁なスイスでも、過去にアナーキスト(無政府主義者)によるテロ事件が数件発生している。19世紀末から20世紀初頭にかけてスイスで起きた様々なテロを振り返る。
もっと読む 「連邦議事堂を爆破する。震え上がるがいい!」
おすすめの記事
大統領にボディガードはいらない!ここはスイス
このコンテンツが公開されたのは、
1人で電車を使い移動するブルカルテール・スイス大統領の写真がツイッターで話題になった。海外では驚きの声が広がっている。しかし、ボディガードをつけないスイスの政治家はブルカルテール氏が初めてではない。 スイスでは、閣僚が子…
もっと読む 大統領にボディガードはいらない!ここはスイス
おすすめの記事
チューリヒに煙る赤いテロリズム
このコンテンツが公開されたのは、
警察署前での発砲――そして4人の男たちはこっそり逃亡した。だが若い警察官のベックは、そのうちの1人に見覚えがあった。1907年の犯罪事件の背景にいたのは、アナーキストのグループだった。
もっと読む チューリヒに煙る赤いテロリズム
おすすめの記事
スイスの国境警備、違法越境者の監視にドローンを使用
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのティチーノ州とイタリアの国境を違法に越える難民を発見するため、スイス空軍のドローンがこれまでに最多で年間80回使われてきた。 スイスは2016年に入って7カ月間で、ティチーノ州に逃れてきた8千人以上の難民をイタリ…
もっと読む スイスの国境警備、違法越境者の監視にドローンを使用
おすすめの記事
テロ取り締まりに警察の権限拡大は必要?スイスで6月国民投票
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは6月13日、既に議会で可決された改正テロ対策法の是非を巡り国民投票が行われる。反テロ法とも呼ばれる同法は国境を越えて議論を呼んでいる。賛成派は国民保護を強化できると期待し、反対派は人権侵害につながると主張する。
もっと読む テロ取り締まりに警察の権限拡大は必要?スイスで6月国民投票
おすすめの記事
新型コロナ スイス政府のコミュニケーション戦略は成功したか
このコンテンツが公開されたのは、
街の広場に掲示された、感染予防対策を訴える赤とピンクのポスター。夜のニュースに出ずっぱりの大臣たちー。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に際し、連邦政府は自身のコミュニケーション戦略に骨を折ってきた。政府の効果的な情報伝達は、感染の抑制に寄与したのだろうか。
もっと読む 新型コロナ スイス政府のコミュニケーション戦略は成功したか
おすすめの記事
スイスで現金輸送車強盗が多発
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部では現金輸送車に対する襲撃・強盗事件が相次いでいる。2006年以降で10件超起きていたが、今年だけで3件発生した。背景には何があるのか?
もっと読む スイスで現金輸送車強盗が多発
おすすめの記事
スイスのテロ対策法、活動家の脅威になるのはなぜか?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの改正テロ対策法が厳しく批判されている。テロリズムの定義が広すぎて一部の政治活動家を危険にさらす可能性があると指摘する専門家もいる。
もっと読む スイスのテロ対策法、活動家の脅威になるのはなぜか?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。