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連邦議会、スイス軍を10万人規模に縮小

連邦議会は、政府が提案するスイス軍の大幅縮小は行きすぎだと見ている Keystone

9月12日から開かれている連邦議会(国会)で15日、軍事費を年間50億フラン(約4400億円)、軍要員を10万人とするスイス軍再編成案が全州議会と国民議会の上下両院で可決された。

政府はかねてから軍事費を44億フラン(約3840億円)に、軍要員を現在の約19万人から8万人へ縮小する大幅軍縮案を提案していたが、それが両院で否決される形となった。

 連邦議会はさらに、新しい戦闘機の購入も視野に入れており、軍縮を進めたい政府との意見の違いが明らかになった。

 全州議会と国民議会の両院の決定では、スイス軍の予算は現在の41億フラン(約3600億円)から50億フラン(約4400億円)に拡大され、予備員を含む軍要員は現在の約19万人から10万人に削減される。

 スイス政府が先延ばしにしていた戦闘機の購入に関してウエリ・マウラー国防相は、軍支出を抑えることで3億フラン(約260億円)が捻出できれば購入できると見ている。一方、全州議会は戦闘機購入に特別財源を確保する案を支持。

 軍の編成をめぐって、これまで各党の意見は真っ向から対立していた。中道派や右派政党は大幅な軍縮には反対しており、政府案の軍要員8万人ではスイスは十分に防衛できないと主張。中道右派の急進民主党(FDP/PLR)のヴァルター・ミュラー氏はスイス通信(SDA/ATS)に対し、「(政府案では)軍が警察部隊に成り下がってしまう」と危惧を表した。

 それに対し、左派政党は、現在スイスの安全が脅かされる状況にはないとし、政府案よりも縮小された軍隊を支持。社会民主党(SP/PS)は6万人規模、緑の党(Grüne/Les Verts)は3万人規模の軍隊再編成を訴えていた。

スイス軍の任務を問う各紙

 連邦議会のこの決定に対し、各紙の反応は冷ややかだ。ドイツ語圏の日刊紙「ターゲス・アンツァイガー(Tages Anzeiger)」は、連邦議会の決定を「無責任」だとし、「軍の将来的な役割を深く議論することもなく、決められてしまった」と批判。

 同様にフランス語圏の日刊紙「ル・タン(Le temps)」も、この決定は将来的なビジョンが欠けていると指摘し、マウラー国防相はテロなどさまざまな安全保障問題に関し、まずは具体的な対策を示すべきだと主張した。

 ジュネーブの日刊紙「トリビューン・ド・ジュネーブ(Tribune de Genève)」も同意見だ。「軍が行うべき明確な任務もなく、具体的な敵も明らかになっていない現段階で、この10万人規模の軍隊に一体何ができるのか」

 ドイツ語圏の日刊紙「ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)」も他紙と同様、財政を引き締めなければいけないこの時期に多額の予算を軍備に充てることへ懸念を寄せている。

スイス軍は職業として軍隊に勤める人と、徴兵制度のため期間限定で軍に入る人から成り立っている。

軍の任務は、外からの攻撃に対し国を守ること、民間機関の支援および国外での平和促進の三つ。

中立国家として、スイスはいかなる防衛同盟にも加盟していない。だが、訓練を他国と共同で行うことがある。

スイス軍は平和維持活動にも従事しており、現在コソボなどに部隊が派遣されている。

1989年には軍廃止を求める国民発議(イニシアチブ)が発動されたが、国民投票により結果的に否決された。ただ、賛成票が35%以上あり、世間の注目を浴びた投票だった。

同様の国民発議が2001年に再び発動されたが、賛成票は22%と減少。

2003年、軍再編に関する憲法改正法案が国民投票で可決され、軍は20万人規模となった。

1990年ではスイス軍は62万5000人規模、国内総生産(GDP)の1.7%が軍事予算に充てられていた。

冷戦が終結したことを受け、軍は縮小方向に。1995年では40万人規模、予算は国内総生産の1.5%に削減された。

2004年の軍再編で、軍要員はさらに20万人(予備員8万人を含む)に減り、予算は国内総生産の0.8%となった。

今回の軍再編では、軍要員は10万人、年間予算は50億フラン(約4400億円)になる見通し。

(一部情報提供、デール・ベヒテル、フェデリコ・ブラガニーニ)

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