スイスでは24日、年金制度改革案「老齢年金2020」などの是非を問う国民投票が行われる。改革案の中でも議論の中心になっているのが、女性の定年年齢を現行の64歳から65歳に引き上げる案だ。欧州各国の女性の定年年齢を比べると、スイスは女性が男性より早く年金を受け取れる数少ない国だということが分かる。
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スイスは女性の権利や男女平等の分野で遅れを取って来た。女性の参政権が国全体で認められたのは1971年。その頃は欧州のどの国にも、一部の国ではそれより10年も前にこの権利が存在していた。
また、国民投票で女性の産休が保障されたのも2005年で、欧州では最も遅い。女性の収入も男性より平均18%少ない。
一方、女性の年金受給開始年齢は女性が64歳、男性が65歳と法律で決まっているため、女性の方が少し条件が良い。平均寿命も女性が85歳、男性が81歳と女性の方が長生きだ。
欧州連合(EU)に加盟する28カ国の中で、男女で定年年齢が違うのは8カ国のみ。差が最も大きいのはオーストリア(女性60歳、男性65歳)だ。
しかし、この8カ国(ルーマニアを除く)はすでに、定年年齢を一律化する法改正を済ませている。早いところで数年、遅くとも2040年までに一律化する予定だ。
スイスの64歳という女性の定年年齢は、今のところ欧州諸国の中では平均的な数字といえる。EUの13カ国は64歳よりも高く、そのほかの国は60~63歳だからだ。ただこの枠組みは今後数年でがらりと変わる可能性がある。
高齢化社会と昨今の経済財政危機によって、多くの国は年金財源確保のために抜本的な改革を強いられた。そのためほぼすべてのEU諸国が、男女の定年年齢を65歳~67歳に引き上げることを決めた(フランス、ギリシャ、チェコ、ルーマニアは含まれない)。
大半のEU諸国が年金制度の「一律化」を図る中で、世界を見渡すとまだ大きな違いがある。国の政策や経済、社会事情だけでなく、国民の平均寿命が大きく起因しているためだ。ただ、世界的にも女性―および男性―の定年年齢を引き上げる傾向がある。
スイス国内では、連邦政府と議会の過半数が女性の定年年齢引き上げに賛成している。
目的は社会保障財源の確保だ。男女の定年年齢を一律65歳にすることで、国の年金制度の第一の柱、老齢・遺族年金(AHV)は年間13億フラン(約1495億円)の財源を節約できる。
老齢年金2020はとりわけ政治的左派のグループや、小規模の労働組合が反発している。女性はいまだ職場で差別されており、定年年齢の一律化は間違っているという主張だ。一方、改革案の推進派は、例えば今後新たに年金をもらう人には月額70フランを増額するなど、一連の緩和策をすでに講じていると反論する。可決されれば22年ぶりとなる年金改革案は、世論調査の結果を見る限りまだ議論の余地は多い。
あなたは女性の定年年齢を男性と同じ65歳に引き上げる改革案をどう思いますか?ご意見をお寄せください。
(独語からの翻訳・宇田薫)
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公的年金の財政基盤の強化を目的にした同法案は、今年後半に行われる国民投票で有権者からの最終判断を受ける。
年金制度改革関連法案が国民投票で可決された場合、女性の定年年齢は現在の64歳から男性と同じ65歳に引き上げられる。また、老齢年金(日本の国民年金に相当)では、給料からの差し引き額が微増され、年金支給額が月70フラン(約7900円)増額される。
一方、企業年金ではいわゆる年金転換算定率が6.8%から6%に引き下げられ、年金支給額が減額される。
この法案の目的は、公的年金である老齢・遺族年金制度の財政基盤を安定させることだ。この制度はスイスの社会保障における3本の柱の一つを成している。
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