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ギャンブル・ビジネスの命運どう出るか?スイスの新賭博法とは

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新しい賭博法の未来は「運任せ」ではなく、来月10日に行われる国民投票に委ねられている Keystone

スイスで来月10日、国民投票が行われ、新賭博法について民意が問われる。一風変わったこの案件では、賛成派、反対派の熾烈な戦いが繰り広げられている。賛成派は「新法が公益を潤し、ギャンブル依存症の対策強化になる」と主張し、反対派は「新法がインターネットの検閲行為を助長し、スイス・カジノの孤立を招く」と警鐘を鳴らす。

AライセンスのカジノとBライセンスのカジノの所在地
AライセンスカジノとBライセンスカジノの所在地 swissinfo.ch

 ルーレット、ブラックジャック、ポーカー。新しい賭博法(BGS)外部リンクが施行されれば、スイスのカジノはオンライン賭博の運営もできるようになる。この法律は昨年9月にスイス連邦議会で可決された。

 但し、インターネット上の「仮想」カジノであっても、実際のカジノと同じく一定の条件を満たさなければ運営できない。政府の許可がないギャンブルサイトは、全て接続遮断(サイトブロッキング)される仕組みだ。

 大規模な宝くじやスポーツ賭博の運営権利を持つ賭博協会などは、新賭博法が導入されれば新しいタイプの宝くじやスポーツ賭博を企画できるようになる。例えば場外馬券売り場や、スポーツの試合中にリアルタイムで賭博をすることも可能になる。

 その他にも、宝くじやスポーツ賭博で当てた賞金は、新しく100万フラン(約 1億1500万円)まで非課税になる(現在は1000フランまで)。また、カジノ外で行われる小規模のポーカー大会には自動的に許可が下りるようになる。

儲けは公益に

 新賭博法導入の主な趣旨は、国がギャンブル市場を調整・管理すると同時に、運営側が常に最新のギャンブルを提供できるよう国が保証することだ。

 2012年に可決された賭博に関する憲法改正により、収益は、老齢・遺族年金(AHV)、障害者年金(IV)、文化事業、社会福祉、スポーツ振興、共益施設に充てると決められている。

カジノのようす
・スイスのカジノは総所得(支払った賞金を差し引いた収入)の4~8割を税金として納めている。Aライセンスのカジノ(グラン・カジノ)は税金の全額を老齢・遺族年金(AHV)と障害者年金(IV)に、Bライセンスのカジノは税金の6割をAHVとIVに、4割をカジノが所在する州に納める ・2016年にカジノ21軒が支払った税金は合計3憶2330万フラン(約352億円)。うち2億7590万フランをAHV/IVに、4730万フランを州に納めた ・カジノの企業利益にも他の企業と同じように税金が掛かる Keystone
Lottokugeln wirbeln während einer Ziehung der Lottozahlen in einer Glaskugel durcheinander
・スイスロス(Swisslos)とロッタリー・ロマンド(Loterie Romande)の両社は、宝くじやスポーツ賭博を複数の州で経営する許可を持つ。純益は文化事業、社会福祉、スポーツ振興や環境保護など、慈善や共益の目的で使うよう義務づけられている ・スイスロスとロッタリー・ロマンドの2016年の総純益は約6憶3千万フラン。宝くじの経営企業はその他にも、ギャンブル依存症防止のために毎年州に手数料を払う義務がある。2016年の総額は約450億フランだった Keystone

 新賭博法は連邦議会で過半数を大きく上回り可決された。反対したのは自由緑の党(GLP)、国民党(SVP)の過半数、緑の党、急進民主党(FDP)の少数派だけだった。

若者の蜂起

 連邦政府および議会は「デジタル時代に対応するために」この新法の導入を掲げたが、皮肉なことに「デジタルネイティブ」(インターネットやパソコンのある生活環境の中で育った世代)が難色を示している。

 連邦議会に議席を持つ4大政党(国民党、急進民主党、自由緑の党、緑の党)の青年部は新賭博法に反対してレファレンダムを起こし、国民投票に必要な署名5万件を集めた。

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このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは国民が憲法改正案を提案したり、連邦議会で承認された法律を国民投票で否決したりできる。

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 それだけではない。連邦議会に議席を持つ全政党の青年部は、新賭博法に反対するためにスクラムを組む様相だ。既に社会民主党(SP)と市民民主党(BDP)の青年部は「賭博法反対」のために手を結んだ。

 さらに、急進民主党の青年部は、国民投票に向けたキャンペーンで巧みな布石を打った。急進民主党の代議員会で母体を説得し、新法に反対するよう方針を変更させたのだ。つまり、連邦議会で新法に賛成していた党員を反対派に取り込むことに成功した。

ネット検閲と保護主義に抵抗

 反対派は、とりわけ外国のカジノ企業を締め出すことに異を唱える。信頼できる企業サイトにアクセスできなくなれば、ユーザーが闇市場に流れる危険性があると反対派は強調し「政府によるインターネットの検閲行為」、「ネット上の孤立」と非難する。

 反対派はまた、サイトブロッキングは自由経済と情報の自由に反すると主張。特定サイトの接続を遮断できるようになれば「危険な前例」を作ってしまい、やがてはポーカーなどのギャンブルに限らず、音楽、映画、ネット上の情報源などにも検閲の手が伸びかねないと警鐘を鳴らす。

アクセス制限は広く行われている

 ギャンブルは、どこでも自由に手に入る消費財とは違う。シモネッタ・ソマルーガ司法相は、賭博法の国民投票に向けたキャンペーンで、ギャンブルは現時点でも国の許可が必要だと発言している。

 ソマルーガ司法相は、サイトブロッキングは既に他国でも広く行われ、欧州だけでも隣国フランスやイタリアなど既に17カ国で実施されていると強調する。

 また、政府の許可を受けていないギャンブルサイトのプロバイダーは、収入の一部を老齢・遺族年金や障害者年金に納めることもなければ、公益に貢献することもない。こういった企業はギャンブル依存症や詐欺、マネーロンダリングの防止策も取っていないと指摘した。

ギャンブル依存症の対策強化

 対して新賭博法は、ギャンブル依存症の対策強化になるという。現在はカジノだけに課せられているこの義務が、新法では州とそこに所在を置く宝くじ企業にも適用されるようになる。また、依存症防止の専門家が少なくとも一人は監督当局に配属されるようになる。

 しかし反対派はこの点に関しても、法的な対処が不十分と主張。国の専門委員会の設立を求め、また対策費用をカバーするため州が特別な税金を納めるべきだとしている。宝くじの当選金が100万フランまで非課税になる点も非難されている。

ロビー団体の介入で問題が複雑化

 ギャンブル法の賛成派と反対派が論争に火花を散らすのは、何も新法の内容についてだけではない。例えば、賛成派は反対派を、ネット上でギャンブルサイトを運営する外国の企業から融資を受けたと非難している。

 実際、反対派の委員会外部リンクは国際的な2企業から経済的な支援を受けていたことから、緑の党青年部は経済的に独立した別の委員会外部リンクを設立した。

 一方、反対派は賛成派を、宝くじやスポーツ賭博を提供するカジノや賭博協会に操られ、国民投票に向けたキャンペーン活動に必要な資金を受け取ったと非難している。

 今回の国民投票に勝つためのプレッシャーは大きい。政府と連邦議会の過半数、及び州政府を含む賛成派は、幅広く色々な分野から支持を得ている。特にスポーツ、文化、社会機構の各種協会からの支持は大きい。更に賛成派外部リンクは、スイスの政治に関わるほぼ全ての政党を網羅した政治家から成る大規模な推進委員会の協力も得ている。

 来月10日の国民投票で黒と出るか白と出るか。賛成派・反対派の熾烈な闘いは続く。

(独語からの翻訳・シュミット一恵)

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