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2019年のスイスを占う四つの問い

スイスは国際社会で影響力を発揮する一方、世界経済や世界情勢、欧州連合(EU)からも強い影響を受けている。そんなスイスでは今年、連邦議会選挙が行われる。世界の流れに歩みを合わせるか、それとも今の状態を維持するか―。四つの問いを中心に、2019年のスイスを国際的な観点から予想する。

今年のスイスを次の四つの問いから考えてみたい。

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スイスは伝統的に「交渉」と「中立」を外交政策の中心に据える。そのため紛争国間の仲介役を積極的に務め、対話を促進する。また世界中にネットワークがあり、ジュネーブは国際交渉の場になっている。しかし、スイスが標榜する多国間主義や対話は今ではそれほど効力を持たなくなった。世界の流れが変化し、保護主義や敵対心を煽る風潮が強まっているためだ。利己主義的な考え方は国のトップにも及ぶ。スイスもこうした流れから無関係ではいられないだろう。

移民対策の国際的な枠組み「国連移民協定」はスイスが共同で進めてきたが、これに対し連邦議会は激しく反発している。そのためスイスは今のところ協定への参加を見送っているが、今年は正式に不参加を決定する可能性がある。

連邦内閣は、22年の国連安全保障理事会の非常任理事国を決める選挙(任期23~24年)にスイスが立候補する方針であることを表明しているが、この計画も同様の運命をたどるかもしれない。右派の国民党が立候補の阻止を目指しているほか、連邦議会では右派や中道派から懐疑的な声が上がり、議論が緊迫している。

そのほか、スイスとEUとの関係を規定するための枠組み交渉も、解決の糸口が長年見えないでいる。枠組み協定の草案がついに策定され、EUは草案に対するスイスの賛否を6月に聞く方針だ。しかし、利己主義的な風潮が強まる昨今、EUとスイスが歩み寄りできるかどうかには疑問が残る。

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開かれた経済はスイスの誇りだ。国内を拠点とする多国籍企業はグローバルな活動を通し、スイスの名声を高めている。だが多国籍企業の存在はマイナスの影響も与える。世界的に事業展開する企業が人権侵害や製造国での環境破壊に関わることもあるからだ。

これはスイスに限った問題ではないが、スイスではこのテーマを巡る議論が極めて活発だ。なぜなら複数のNGOが、多国籍企業の責任を追及するイニチアチブを提案したからだ。これには世論の支持が大きく、政界や経済界に波紋を呼んでいる。今年は連邦議会が提案の大部分を取り込んだ対案を採択することも考えられる。

議論は今のところ連邦議会の委員会で止まっているが、今年初頭に再開される予定だ。連邦議会でのプロセスが終われば、最終判断は国民に委ねられる。議論が白熱するのは間違いなく、どのような判断が下りようとも、ビジネス拠点としてのスイスのイメージに重大な影響を与えるだろう。

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スイス企業は輸出に大きく依存し、収益の約5割が外国で生み出される。今年は世界的な景気減速が予想され、輸出依存度の高いスイスはその影響を逃れられないだろう。

経済連合エコノミースイスは、米中貿易摩擦、英国のEU離脱(ブレグジット)、新たな欧州債務危機への懸念がスイス企業にマイナスの影響を及ぼすと予想外部リンク。今年の成長予想を18年の2・7%を大きく下回る1.4%とみている。

スイス企業は、今年も世界経済をけん引するとされる米国への比重を高め、ユーロ圏問題からのダメージ緩和を図ろうとしている。米国への輸出割合は10年の10%から15%以上へと増加し、この傾向は当分続くとされる。

スイスにとって最も重要な貿易相手国のEUが危機的状況にあるなか、スイスフランは今後も高い水準を維持し、逃避資金の受け皿となるだろう。スイス経済が不況に強いことは過去に証明されており、波乱が起きてもまたうまく切り抜けられるだろう。

今年は右派国民党所属の連邦閣僚ギー・パルムラン氏がスイスの経済相を務める。リベラル派や不干渉主義者といった過去の経済相と基本的に同じ立場に立つ同氏は、ベトナム、インド、マレーシアとの自由貿易協定外部リンクの締結に関する交渉を進めていくだろう。

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スイスでは10月20日に連邦議会選挙が行われる。国民議会(下院)200議席、全州議会(上院)46議席は4年ごとに改選される。スイス放送協会(SRG SSR)による最新の選挙予測では、緑の党と急進民主党が得票数を伸ばす一方、国民党と中道寄り右派のキリスト教民主党が議席を減らすと予想される。

今回の選挙における主な争点は上院の勢力図だが、上院議員の多くは不出馬を表明。また、左派の社会民主党には退任予定の上院議員が多く、上院の勢力図が変わる可能性がある。

今度の選挙で政党資金の透明性に注目が再び集まるだろう。選挙キャンペーンでは推定5千万フラン(約56億円)が費やされるとされる。

下院選挙では国外在住のスイス人も出馬でき、州によっては上院への出馬も認められる。また下院選挙では在外投票が全ての州で可能だが、上院選挙の在外投票を認めない州もある。

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(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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