スイスでは28日、新型コロナウイルス感染の第5波が押し寄せる中、ワクチン接種・陰性を示す「 COVID証明書」の提示義務と看護職員の確保・支援に関する国民投票が行われた。両案とも有権者6割以上の賛成で可決された。連邦裁判官を抽選で選ぶイニシアチブ(国民発議)は否決された。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
▼投票結果
COVID-19法改正は可決
今年3月に議会が定めた新型コロナウイルス感染症の政策「COVID-19法」の改正は、有権者62%が賛成し、可決された。争点となっていた「 COVID証明書」を活用する法的根拠となる。投票率は65.7%だった。「COVID証明書」とは、新型コロナウイルス感染症から回復したこと、またはワクチン接種済みであることを1年間証明する文書。PCR検査で陰性の場合は72時間、抗原簡易検査で陰性の場合は48時間有効だ。
スイス国内では、特定の状況下で「COVID証明書」の提示が義務化されている。例えば、レストランの屋内部分に入る時、1000人以上の大規模イベントに参加する時、30人以上のスポーツや文化活動に参加する時などに必要だ。 新型コロナウイルス感染症が大流行する中、 COVID証明書はスイスで社会生活を送る上でほぼ必須のものとなっている。
スイスでワクチン接種は義務付けられていない。現時点で、新型コロナウイルスのワクチンを2回接種した人は人口のたった65%で、1日あたりの新規感染者数は約8千人だ。
「COVID-19法の改正」反対派は、COVID証明書を持たない人が社会生活から疎外され、予防接種が間接的に強制されていると主張し、問題視していた。また、 データ保護の問題を懸念する声も上がっていた。
今年、スイスで COVID-19法に関する国民投票が実施されるのは2回目。6月にも投票を行い、コロナで経営難に陥った企業への財政支援などを盛り込んだ改正前のCOVID-法を可決していた。
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看護師イニシアチブも可決
十分な数の看護師を育成し、労働条件を向上させるよう求めるイニシアチブ「強固な看護ケアのために」(通称「看護師イニシアチブ」)は、61%の支持を得た。投票率は、65.3%だった。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)では、看護職員の人材不足、過酷な勤務環境、低賃金といった厳しい看護師の労働条件に目が向けられた。人材不足は20年ほど前から指摘されていたが、パンデミックがイニシアチブ可決への追い風となった。
スイス看護師協会のイヴォンヌ・リビ会長は投票結果を受け、「有権者が医療分野において労働条件改善の必要性を認識したことを嬉しく思う。議会と政府に対し、具体的な措置を迅速に提示するよう要請する」と独語圏のスイス公共放送(SRF)で述べた。
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司法イニシアチブは否決
抽選で連邦裁判官を選出するよう司法制度を改革する案「司法イニシアチブ」は、68.1%の反対で否決された。投票率は64.7%で、スイスの26州すべてで反対という結果が出た。
スイスでは現在、裁判官は連邦議会で選出されるが、政党の勢力に応じて連邦政府の判事職が割り当てられている。このため司法が政治からの独立性を欠き、権力分立が不十分であるとし、同イニシアチブが提起されていた。
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