国際サッカー連盟(FIFA)の汚職捜査をめぐり、連邦議会は20日、スイス連邦検事総長のミヒャエル・ラウバー氏の公聴会を開くことを決めた。議会司法委員会の決定次第では、初の高官の弾劾となる可能性が出てきた。
このコンテンツが公開されたのは、
議会司法委員会は13日、ラウバ―氏に職務上の規則違反がなかったか、また落ち度がなかったかを調べるために公聴会を開くことを全会一致で決めた。議員らが弾劾訴追を求めていた。
20日に行われる公聴会が、弾劾手続きの第一歩となり、史上初の連邦検事総長の弾劾となる可能性がある。
ラウバー氏については、FIFA汚職事件の公判手続きに不手際があったとして引責辞任を求める声が挙がっている。FIFAの本部はチューリヒにある。
スイスではFIFAの一連の汚職事件のうち、2006年のワールドカップドイツ大会をめぐる約1千万フラン(約11億円)の不正な金銭授受に関する事件の公判が先月、判決を待たずに打ち切られた。ドイツサッカー連盟の幹部とFIFAのスイス人理事計4人が詐欺罪などに問われていたが、時効を迎えた。
スイスの刑法では、詐欺罪は第一審の判決が出ていない場合の時効を15年としている。不正な金銭授受があったのは2005年の4月27日。今年3月以降は新型コロナウイルスの影響で裁判が再三延期され、時効までに判決を出す見通しが立たなくなった。
事件の捜査は2015年11月に始まったが、検察が起訴に持ち込んだのは4年後の2019年8月。さらに第一審の初公判が開かれたのは時効1カ月半前の2020年3月だった。
ラウバー氏は検察側の事件処理は適切だったと主張している。
検察庁の独立監査局AB-BAは3月4日、ラウバー氏が繰り返し虚偽の報告を行い、FIFA汚職捜査中に検察庁の行動規範に違反したと述べた。 同氏はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長と非公式に会ったほか、捜査の情報源をかく乱し、AB-BAの調査を妨害したという。
監査局はラウバー氏の給与30万フランを1年間、8%減給する処分を下した。
連邦最高裁判所は今年4月、ラウバ―氏をFIFA汚職事件捜査から除外する刑事裁判所の決定を支持した。
ラウバ―氏は、自身の事件処理に違反行為はなかったと主張している。検事庁はロイター通信に、4人の被告の事件について「司法手続きが完了しなかったこと」は残念だと述べた。
ラウバー氏はまた、監査局の調査結果と給与カットを不服として連邦行政裁判所に訴えを起こした。検察庁は、監査局の決定は「決定的なものではなく、司法のチェックが必要」とした。
ラウバ―氏は公聴会が決まったことに対し、コメントは出していない。
検事総長の弾劾は簡単ではない。一定の規則に従う必要がある。
司法委員会のアンドレア・カローニ委員長は、こうした手続きは史上初となるため「正確に、不備がないよう、なおかつ我々の組織を守れるように」進めていく必要があると述べた。公聴会に向け、カロ―ニ氏は連邦司法省の担当者と法学教授を参考人として招致した。
委員会は公聴会後に、正式な弾劾手続きを取るかどうかを決める。その後の日程は不明だ。
委員会が弾劾手続きに合意した場合、国民議会、前州議会の上下院が合同議会を開いて投票で是非を決める。批評家たちは夏季議会での実施を見込むが、行政裁の判決を待つべきだという声もある。
FIFA汚職捜査をめぐるラウバー氏の行為については何カ月も議会で議論が続けられたが、その議会が昨年9月、同氏の三選を決めた。ただラウバー氏が続投するのか、それとも匙を投げて辞任するのかははっきりしない。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイス検事総長が弾劾手続きへ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会の司法委員会は20日、国際サッカー連盟(FIFA)の汚職捜査に過失があったとして、ミヒャエル・ラウバー連邦検事総長の弾劾手続き開始を賛成多数で可決した。連邦検事総長が弾劾手続きを受けるのは史上初めて。
もっと読む スイス検事総長が弾劾手続きへ
(英語からの翻訳編集・宇田薫)
続きを読む
おすすめの記事
スイス検事総長が弾劾手続きへ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会の司法委員会は20日、国際サッカー連盟(FIFA)の汚職捜査に過失があったとして、ミヒャエル・ラウバー連邦検事総長の弾劾手続き開始を賛成多数で可決した。連邦検事総長が弾劾手続きを受けるのは史上初めて。
もっと読む スイス検事総長が弾劾手続きへ
おすすめの記事
FIFAの不正疑惑訴訟、コロナで時効に
このコンテンツが公開されたのは、
2006年ドイツで開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯)をめぐる不正疑惑で、4人の元サッカー業界幹部に対する裁判は再び中止された。期日までに判決を出すことは不可能になった。
もっと読む FIFAの不正疑惑訴訟、コロナで時効に
おすすめの記事
スイスのプライベートバンク大手に制裁 資金洗浄違基準違反で
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦金融市場監督局(FINMA)は、2009~2018年にマネーロンダリング(資金洗浄)対策基準を遵守しなかったとして、大手プライベートバンクのジュリアス・ベアに対し、大規模な買収を一時的に禁止する制裁処分を下した。
もっと読む スイスのプライベートバンク大手に制裁 資金洗浄違基準違反で
おすすめの記事
「スイス人はみな外国人ですよね?」
このコンテンツが公開されたのは、
最新の優れたスイス映画が集結する第55回ソロトゥルン映画祭が今日開幕し、新ディレクターのアニータ・ウギさんがひのき舞台を踏む。ウギさんはswissinfo.chとのインタビューで、スイス映画やスイス人のアイデンティティーにあるお決まりのイメージを一蹴した。
もっと読む 「スイス人はみな外国人ですよね?」
おすすめの記事
U-17W杯優勝のスイス代表チーム、今は?
このコンテンツが公開されたのは、
2009年、サッカーのU-17ワールドカップ(W杯)でスイスが初出場・初優勝を果たしてから今日でちょうど10年。国内ファンとメディアは当時、このチームがいつかW杯の大舞台でも優勝トロフィーを手にしてくれるだろうと大きな夢を描いた。当時、17歳以下だった選手たちは現在どこでプレーしているのだろうか。
もっと読む U-17W杯優勝のスイス代表チーム、今は?
おすすめの記事
国際サッカー連盟FIFA、NGOになりたい?
このコンテンツが公開されたのは、
国際サッカー連盟(FIFA)が、スイスでの法的な地位を赤十字国際委員会(ICRC)や国連のような国際NGO(非政府組織)に「格上げ」しようとしている。
もっと読む 国際サッカー連盟FIFA、NGOになりたい?
おすすめの記事
スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)が、国際的な不正取引に関わったとして金融当局の勧告処分を受けた。ただ営業停止や罰金などの処分がなかったことに首をかしげる専門家もいる。
もっと読む スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
おすすめの記事
スイス出身のインファンティーノ氏がFIFA会長に再選
このコンテンツが公開されたのは、
国際サッカー連盟(FIFA)の会長選が5日、パリで行われ、スイス出身のジャンニ・インファンティーノ会長が再選を果たした。ほかの立候補者はなかった。任期は2023年まで。
もっと読む スイス出身のインファンティーノ氏がFIFA会長に再選
おすすめの記事
スイスの社会貢献度が高い企業・団体はどこ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人が選ぶ国内で最も社会貢献度が高い企業・団体ランキングで、今年の栄えある1位にスイス航空救助隊「レガ(Rega)」が輝いた。
もっと読む スイスの社会貢献度が高い企業・団体はどこ?
おすすめの記事
数字で振り返る2018年
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインフォが配信したほとんどすべての記事に、パーセンテージや年齢、金額など何らかの数字が含まれている。2018年に掲載された統計の中から、特に興味深い数字を振り返ってみよう。
もっと読む 数字で振り返る2018年
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。