欧州連合(EU)を離脱した英国とEUとの今後の外交関係をめぐる交渉が妥結した。欧州司法裁判所(ECJ)を紛争解決手段から外すなど、重要な部分で英国の主張が通った。EUとの枠組み交渉が滞っているスイスでは、状況打開に向け期待の声が上がる。
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英EU間の交渉は、英国のEU離脱(ブレグジット)の移行期間が終わる今年末を目前にようやくまとまった。新しい自由貿易協定(FTA)は2021年1月1日に暫定的に発効する。両国間の輸出入品が関税の対象となり混乱が生じる事態は避けられた。
EUに加盟せずに自由貿易の利を得る―― それはジョンソン英首相が国民にアピールできる最大の戦利品となった。もう一つ、欧州司法裁判所(ECJ)を仲裁役に据えるというEUの主張を退けることにも成功した。代わりに仲裁役を務めるのは、英・EU双方が輩出する人員で構成する合同委員会だ。EU法が自動的に適用されることも回避した。
英国はスイスよりも交渉上手?
EU非加盟のスイスはこの数年、EUとの制度的枠組み条約の交渉に苦戦している。ブレグジット交渉と同じような課題を抱えており、二つの交渉は互いに影響を及ぼし合ってきた。
スイス国内では、ブレグジット交渉が妥結したことで、スイス・EU間の交渉にも弾みが付くと期待する声が挙がる。リベラル派・急進民主党のハンス・ペーター・ポートマン下院議員外部リンクはドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で、連邦政府が年明け1月のEUとの協議で対英合意と同じ内容を要求し、「英国が勝ち取った水準を下回らない」よう望むと語った。
スイス国民党のロジェ・ケッペル議員は自身のツイッターにこう投稿外部リンクした。「ボリス・ジョンソンはうまくやった。懸命に交渉し、卑屈にならず、合意を勝ち取った。よそ者の立法機関も司法機関もない合意に」
起業家団体「オートノミー・スイス」はプレスリリース外部リンクで、ブレグジット合意でスイス・EU間交渉にも余裕が生まれるとの見解を示した。最も重要な部分で英国がその利益関心を押し通したためだ。「全体的に、ブレグジット交渉でみられた主権政治の問題の大部分は、オートノミー・スイスがスイス・EU間交渉に求めているのと同じように取り決められた」とし、「ブレグジット交渉の妥結は、(スイスと)EUとの交渉に可能性があることを示唆する」と位置付けた。
リンゴとナシを比べる
一方、英国とスイスは異なるとの見方もある。バーゼル大学のクリスタ・トブラー外部リンク教授(ヨーロッパ法)は複数のメディアで、ブレグジット合意はスイス・EU間枠組み条約と同等のものではないと話した。
同氏は大衆紙ブリックで「またもリンゴとナシが比較されている」という慣用句を使い、本来比較できないものを比べていると指摘した。英・EU間関係は、スイス・EU間ほど密接ではない。スイスはある意味、拡張されたEUの域内市場の一部であり、EU法が適用されている。このためEUは、EUに対してはECJが介入しないことを受け入れないとみる。
外交シンクタンク「Foraus」のセニ・ナジー副理事長もフランス語圏の日刊紙ル・タンで同じ慣用句を引用。スイスは全ての貿易障壁を取り除くよう求めている。ブレグジット合意は両者が不利を被る内容で、最終的な結果はまだ分からない。
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