COP26 地球温暖化を止める最後の望みになるか
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、気温上昇による壊滅的で取り返しのつかない影響を回避する最後のチャンスだ――。多くの人はそう捉える。スコットランド・グラスゴーで31日~11月12日に開催されるCOP26の概要をまとめた。
英国のボリス・ジョンソン首相は、この国際会議が「人類にとっての転換点」だと述べた。この会議の重要性を反映した強い言葉だ。多くのNGOは、貧しい国はワクチン不足により参加できないNGO(非政府組織)もあるとして去年に引き続き再延期を求めた。だが、国連は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を理由に再び延期する気はなかった。
スイスは気候変動対策計画を再確認したが、COP26が成功するか否かは参加国全体の意思決定にかかっている。
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COPとは?
国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP)のこと。年に1度開催され、政府関係者が地球温暖化対策の解決策を議論・交渉する。第26回は、イタリアと共同で英国が議長国を務める。
参加者は?
国家・政府首脳ら約100人を含め、約200カ国から代表者が参加。その他にも、交渉担当者、気候変動専門家、ビジネスリーダー、市民グループ、NGO代表者、ジャーナリストなど数千人が世界中から集まる。
今年の会議が重要な理由は?
気候変動に関する国際条約、いわゆるパリ協定の採択から6年が経過したが、これまでの取り組みでは「産業革命以降の気温上昇を1.5度に抑える」という目標は達成できない。この数値を超えると、気候変動は人間や自然のシステムに長期的で不可逆的な影響を及ぼす可能性がある。近年の熱波、山火事、洪水などの自然災害を見れば、迅速かつグローバルな気候変動対策の必要性は明らかだ。
今年のグラスゴー会議は米国がパリ協定に復帰後、初となる。
議論の内容は?
ジョンソン英首相の言葉を借りれば「石炭、自動車、お金、木」。先進国が地球温暖化の影響を最も受けている国々に約束していた、気候変動対策を巡る資金支援が主要議題の1つになる。
2009年の会合では、途上国のCO₂排出量削減と気候変動への適応を目指すプロジェクトに先進国全体で年間1千億ドル(約12兆円)を支援するという国際公約ができた。だが目標達成への道のりは長い。
グラスゴー会議では炭素排出量取引制度やカーボン・オフセット、電気自動車の推進のほか、いかにして森林破壊と石炭採掘に終止符を打つかを議論する。
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スイスの優先事項は?
スイス連邦政府は声明で、パリ協定の実施に向け、統一された強力で拘束力のある規則に献身すると発表した。スイスは排出削減のダブルカウント(二重計上)を回避したい考えだ。ダブルカウントとは、例えばA国で削減した分をB国がカーボンオフセットを通じて自国に移転し、それぞれの国が削減を主張することで起こる。カーボンオフセットとは、自国では削減しきれなかった分のCO₂排出に対し、世界各地の環境保全プロジェクトなどに投資することで埋め合わせする(オフセット)制度だ。スイスは、太陽光発電所建設などのプロジェクトが環境や人権に悪影響を与えるのを防ぎたいと考えている。
スイスとペルーは昨年末、世界で初めてパリ協定に基づく国際的なカーボン・オフセット協定を締結した。
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交渉は成功するか?
そうとは限らない。何十年も前から科学者らが警告し、また世界中の気候変動デモで市民が即時行動を求めてもなお、実質的な進展なく終わるおそれがある。19年の会議と同じ轍を踏む形だ。中国やインドを含む最大排出国の一部は、最新の「気候変動対策に関する誓約」を期限の7月31日までに国連に提出しなかった。パリ協定の全締約国は、COP26に先立って誓約の提出を求められていた。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は「先進国の政治的・財政的なコミットメントがなければ」、COP26は失敗に終わる危険性が高いと発言した。
(英語からの翻訳・由比かおり)
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