ジュネーブ国際会合の取りやめ相次ぐ 新型コロナ拡大で
モーターショーや映画祭、見本市、会議……スイスでは新型コロナウイルスの拡大で様々なイベントが突然の中止を余儀なくされている。国際機関が密集するジュネーブでは、会合が次々と中止・延期に追い込まれている。
ジュネーブ内での感染者数は10日時点で50人超、死者は確認されておらず、比較的落ち着いている。だが多くの国際機関を抱え国際会議のメッカであるジュネーブへの影響は小さくない。
「パレ・デ・ナシオン」と呼ばれる国連欧州本部の建物内では、仕事がいつも通り進んでいるように見える。だが毎年この時期に見られるような喧噪(けんそう)はなく、ウイルスに対する不安感が漂っている。
施設見学の一般公開は休止中だ。その裏で、国連幹部は重要な活動や会議に支障が出ないように奔走している。危機管理体制を組み、職員や関連業者の調整・連絡や緊急時対応策にてんてこまいだ。
会議場には消毒液が設けられ、出席者が2メートル以内の距離で15分以上座らずに済むような席の配置が指示された。
国連は今のところ渡航を制限しておらず、渡航するかどうかは個人の判断に任せている。感染が広がっている地域からの会議出席者は、ジュネーブまでの渡航経路を尋ねられるが、出席できないわけではない。
だがスイス政府が1000人以上の集まる大規模イベントを禁止したのを受け、国連人権理事会のサイドイベント約200件は中止になった。国外からジュネーブにやってくるはずだったサイドイベントの参加予定者は約1000人超。人権理事会のロランド・ゴメス報道官は「必要な時の必要な措置」だと説明した。
「苛立ちを覚えるし、NGOにとってはあまり役に立たない」。ある人権活動家はswissinfo.chにこうこぼした。「この分野に関わる多くの人がジュネーブに集まって各国に呼び掛ける大切な機会だ。重要なことなのに、その機会を奪われた」
だがゴメス氏は決定を擁護する。「これはジュネーブに集まる参加者だけに関係することではなく、医療体制が弱い国からの参加者が帰国後に感染を広げてしまうリスクを抑える意味合いもある」
ジュネーブ・ヘルス・フォーラム外部リンクや情報社会フォーラム世界サミット外部リンク、AIサミット外部リンク、国際労働機関(ILO)の役員会議外部リンクジュネーブ軍縮会議、第43回人権理事会(2月24日~3月20日まで)も中止・延期になった。
最善を尽くす
国連欧州本部の広報レアル・レブラン氏は「できるだけ国連の主要活動を継続するように努めている」と話す。
「誰もがビデオ会議など別の手段を使ったり、スイス当局や世界保健機関(WHO)の勧告に沿って身の周りのリスクを確認したりしている」
レブラン氏は、国連は「現状を前提に人々の健康を守る」ために最善を尽くしているが、「人々をスクリーニングする設備は持っていない」と話した。
ジュネーブにある他の国際機関も、スイス当局やWHOと協力しながら同じような措置を取っている。
可能な限りビデオ会議を使うことや、オフィスワーカーには一定期間自宅勤務が推奨されている。
赤十字国際委員会(ICRC)は不要不急の渡航は4月15日まで全て延期にした。多くの研修やワークショップ、セミナーが延期となった。
世界貿易機関(WTO)のロベルト・アゼベド事務総長は3月11~20日に開催予定だった全ての会合を延期すると発表外部リンクした。秘書部門の職員が1人に新型コロナウイルスの陽性反応が見られたことを受けた対応だ。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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