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スイス軍、大戦後初の大規模動員とは 新型コロナ

スイス軍
新型コロナウイルスのため招集されたスイス軍の兵士たち Keystone / Urs Flueeler

「あなたはスイスの新型コロナウイルスとの戦いに招集されました」。健康な成人男子に徴兵義務が課せられているスイスで、政府は第二次大戦後以降初となる軍の大規模動員を発令した。冒頭の文章は、招集を受けた人が受信したテキストメッセージだ。

スイス連邦政府は16日、各州の後方支援に最大8千人の隊員を派遣すると発表した。

この規模の動員は第2次世界大戦以降初めて。ヴィオラ・アムヘルト国防相は同日の会見で「ウイルスとの戦いには一刻の猶予も許さない」と語った。

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医療、物流、安全

スイス軍が後方支援に入るのは医療、物流、安全の3分野。今年6月末まで派遣する。

医療部門では患者のケア、モニタリングのほか医療物資の輸送、病院の一般業務(ベッドの消毒、料理、洗濯、清掃)などに人員を投入する。

一時的な医療インフラの設置・輸送支援も行う。州警察の大使館護衛、国境警備隊の空港・陸路検問所の業務にも人員を派遣する。

感染が深刻なイタリア国境のティチーノ州には兵士50人が派遣された。バーゼル・ラント準州、ヌーシャテル、トゥールガウ、グラウビュンデンなどの州には計200人が投入されている。今後3〜4日で、支援が必要な州に約800人を動員できる体制を確保する。

16日、医療部隊の4大隊、5中隊が動員された。

しかしスイスのCHメディアグループは17日、これらの部隊にもコロナウイルスの影響が出ていると報じた。ティチーノ州アイロロに派遣された部隊のうち、2中隊は現地到着と同時に隔離措置となった。3人がウイルスに感染したためという。このほかに20人に症状が出たという。

国防省のダニエル・ライスト広報官は、2中隊は派遣ができない状態だが、残り1部隊は影響を受けておらず、配備が可能だと述べた。

編集部注:これらの情報は17日の英語記事配信時点のものです。

トレーニング

スイスの兵役は通常、初年度は軍の訓練校に通い、その後は一定の年齢になるまで毎年、数週間ずつ再訓練を行う。今回優先的に動員されるのはこの再訓練を受けている人と、通常よりも長く兵役訓練を行う人だ。特定の地域では、追加の部隊が招集されるところもある。

今後の軍の派遣を適切に行うため、連邦政府は国防省に対し、軍の形態をとらないが熟練度の高い部隊を文民当局の需要に応じ、派遣できるよう許可した。今後の派遣に備え、特定の部隊を前もって一時的に動員し、訓練を行うケースなどが考えられる。数日間のトレーニングを受けた後は日常生活に戻り、州の招集に備える。

8千人の人員のうち3千人が医療支援にあたる。1割が医師、看護師として働く。ライスト氏によると、これらの人たちが3日間、他の人員に必要な専門知識を伝え、勤務先の病院や医療施設に戻る。

アムヘルト国防相は会見で「今後数週間は大きな試練になる」と語ったが「私たちは乗り越えられる。(国民皆兵を支える)民間人による極めて重要なインフラが機能している。その手法にコミットしていく」と強調した。

スイスは世界で最も新型コロナウイルスの影響が深刻な10カ国に入っている。スイス全土で感染が確認され、18日時点で3千人以上が陽性、死亡者は20人を超えた。死亡者の大半は基礎疾患のある高齢者だ。

医療制度への圧力も高まる。スイスには82の集中治療室があり、対応可能なベッド数は計950〜1千床。このうち約850床には人工呼吸器が装備されている。スイス軍にはさらに200個の人工呼吸器がある。

政府は16日、感染症法の「異常な状況」(第7条)を適用し、4月19日まで全土で私的・公的イベントを禁止し、バー、レストラン、スポーツ、文化スペースの営業停止を命じた。食料品店、パン屋、薬局、郵便局など生活必需サービスを提供する施設は営業できる。学校は来月19日まで休校となる。

そのほかの最新情報はこちらの記事で確認できる。

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(英語からの翻訳・宇田薫)

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